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BCP策定のハードルは、 スキル・人手・時間に TDB調査

2024.06.26

帝国データバンク(以下:TDB)は、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について、全国の企業に調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年5月調査とともに行ったものである。調査結果の概要をお伝えする。

リスク発生に備えた準備の重要性が高まる中、その実態は?

発生からからまもなく半年となる能登半島地震では、最大震度7を記録。直接的な被災による影響にとどまらず、交通・生活インフラの寸断などが企業の生産・消費活動に幅広く悪影響を与え、今なお復旧活動が続いている。

TDBはこうした自然災害に加え、昨今ではサイバー攻撃の危険性も高まっているほか、感染症、地政学的リスクなどさまざまな経営上のリスクが高まり、企業には危機管理、つまりリスク発生に備えた準備が強く求められていると指摘。

その上で、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について、全国の企業に調査を実施。その実態を明らかにした。

調査概要

調査期間:2024年5月20日~31日
調査対象:全国2万7104社
有効回答企業数:1万1410社(回答率42.1%)
出典元:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)(帝国データバンク)

BCP策定済企業が過去最高 策定意向を示す企業は4年ぶりに5割に

BCP策定済企業が過去最高 策定意向を示す企業は4年ぶりに5割に

TDBは、自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況について尋ねた結果「策定している」企業の割合(以下:BCP策定率)が19.8%となったことを報告。前回調査(2023年5月)から1.4ポイント増加し、過去最高となったという。

さらに、BCP策定の意向を示す企業(「現在、策定中(7.3%、前年比0.2ポイント減)」と「策定を検討している(22.9%、同0.2ポイント増)」を合計)は50.0%(同1.4ポイント増)と、4年ぶりに5割に達したことも明らかにしている。

規模別にみたBCP策定率では「大企業(37.1%、前年比1.6ポイント増)」「中小企業(16.5%、同1.2ポイント増)」と、それぞれ上昇している。しかしTDBは「大企業」は2016年からは9.6ポイント上昇した一方で「中小企業」の策定状況の伸びは低調となっていると指摘した。

想定するリスク「自然災害」がトップ 実施・検討の最多は「従業員の安否確認手段の整備」

想定するリスク「自然災害」がトップ 実施・検討の最多は「従業員の安否確認手段の整備」

TDBは続いて、BCPについて策定意向を示す企業に対して、事業の継続が困難になると想定するリスクについて質問。その結果「自然災害(71.1%)」「情報セキュリティ上のリスク(44.4%)」「感染症(39.9%)」「インフラの寸断(39.6%)」「設備の故障(39.1%)」が上位に並んだという。

また、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容としては「従業員の安否確認手段の整備(68.9%)」「情報システムのバックアップ(57.9%)」「緊急時の指揮・命令系統の構築(42.6%)」が上位に並んでいる。

企業からは「大規模な震災などが生じた際に交通インフラや、生活インフラに多大な影響を及ぼす可能性があるため、早期復旧に向けた初動体制が組めるよう定期的にBCP訓練を実施(建設、東京都)」といった声が寄せられたという。

策定のハードルは「スキル・人手・時間」

策定のハードルは「スキル・人手・時間」

TDBによれば、BCPを「策定していない」とする理由には「策定に必要なスキル・ノウハウがない(41.6%)」「策定する人材を確保できない(34.3%)」「策定する時間を確保できない(28.4%)」が上位に挙げられたという。

一方で「中小企業」では「必要性を感じない(21.0%)」が「大企業」より5ポイント以上高い結果となり、さらに従業員数「5人以下」の企業では、30.3%が「必要性を感じない」と捉えているという。

まとめ

BCPの策定に関する意識の高まりが感じられる調査結果となった。一方で、企業規模が小さくなるほど「必要性を感じない」と考える企業が多くなる傾向も明らかになっている。認知度の向上や必要性の認識を高めていく取り組みも、まだまだ必要と言えるだろう。

また、策定しない理由として「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」がないことを挙げる企業も多く、策定支援への取り組みの重要度も高そうだ。

TDBは「BCPを考えることは優先順位の低くなりがちな取り組みかもしれないが、自社には関係ない、必要ないとはせず、自分事(自社事)として捉え、同業他社や行政などと連携し備えていくことが非常に重要だ」と提言している。

中小企業庁では「中小企業BCP策定運用指針」を公開しており、指針に沿って作業することでBCPを策定することができる。併せて参考にしていただきたい。

参考:中小企業BCP策定運用指針〜緊急事態を生き抜くために〜(中小企業庁)