人的資本の情報開示が採用活動にもたらす影響は? リクルート調査
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村吉弘)は「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査」を実施した。本調査は、企業情報の開示と組織の在り方に関して、働く個人と人事担当者に調査したもの。本調査の結果から、人的資本情報開示が求職者の選考参加意欲に与える影響について分析しており、ここでは、同社が挙げた「3つのポイント」について紹介する。
調査概要
「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」
【個人調査】
調査方法:インターネット調査
調査対象:就職活動中の学生、20代~60代の求職者を含む働く個人
有効回答数:1033
調査実施期間:2024年3月23日~3月25日
調査機関:株式会社マクロミル
【人事調査】
調査方法:インターネット調査
調査対象:採用、人材育成・研修、人事制度の構築や運用を主の業務とする人事担当者
有効回答数:1038
調査実施期間:2024年3月23日~3月25日
調査機関:株式会社マクロミル
出典元:「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾(株式会社リクルート)
分析結果から見えた3つのポイント 人的資本開示の有効性と現状
同社が公開したレポートを見ると、全体では、求職者の44.5%(「上がる」「やや上がる」の合計)が人的資本の情報開示により選考参加優先度が向上すると回答したことがわかる。項目別では「従業員エンゲージメント情報(48.0%)」「育成方針の情報(45.3%)」「給与に関する具体的な情報(69.3%)」「従業員の会社評価情報(48.8%)」などの開示により、約5~7割の求職者が「選考参加優先度が上がる」と回答したという。同社は本結果から、人的資本情報開示の有効性が示されたと解説している。
一方で、従業員のエンゲージメントに関する情報を把握していた求職者は22.4%で、企業側の求職者への開示状況も27.2%にとどまっていることが判明。同社は「企業による求職者への情報開示や説明には、まだまだ白地がある」と指摘する。
また、情報開示が採用活動に与える具体的な影響についても言及。個人のキャリアオーナーシップ醸成にも関わる「従業員のエンゲージメント」や「従業員の育成方針」に関する情報を開示している企業は、そうでない企業と比較して採用がうまくいっている傾向にあるという。同時にそうした企業は環境変化に応じて柔軟に人事制度を改定し、雇用慣行を適応させることができている傾向にあることも報告された。
まとめ
これらの結果を踏まえて、同社が挙げているポイントは下記の3つ。
ポイント①:求職者への人的資本の情報開示は、選考参加優先度を向上させる
ポイント②:求職者への人的資本の情報開示は、まだまだ白地がある
ポイント③:エンゲージメントや育成方針に関する情報開示の充実は、採用成功に対しポジティブに影響
人的資本情報の開示・説明が、資本市場だけでなく労働市場においても重要であることが明らかになった今回の調査。しかし現状としては、求職者側の把握状況も企業側の開示状況も進んでいるとは言い難いのが実態のようだ。今後どの程度の普及をみせるか、引き続き注視すべきだろう。
同社は調査レポートの中で、人的資本の情報開示にあたっては、社内外の労働環境の変化を受けて人事制度や雇用慣行を柔軟に適応させることが必要であることも解説している。今後に向けて、企業の担当者は意識して取り組んでみてはいかがだろうか。