「円安関連倒産」2024年度上半期43件で前年同期の1.5倍 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年度上半期の「円安関連倒産」について集計。前年同期比で約1.5倍増加の43件となったことを発表した。
円安関連倒産が大幅に増加。負債総額は減少
TSRによると、2024年度上半期(4~9月)の「円安」関連倒産は43件で、前年同期の1.5倍増(前年同期比53.5%増)と大幅な増加。年度上半期では4年連続で前年同期を上回ったとしている。一方、負債総額は241億5200万円(同87.3%減)と大型倒産の減少に伴う減少がみられ、年度上半期としては4年ぶりに前年同期を下回っている。
TSRは産業別の分析結果についても報告。「卸売業(前年同期12件)」の20件が最多で、次いで「製造業(同8件)」「小売業(同5件)」「運輸業(同ゼロ)」が各7件の順だったという。TSRによれば、円安で原材料や資材、燃料・エネルギー価格が上昇するなか、価格転嫁が遅れた企業の行き詰まりが目立ったという。
レポート内でTSRは、背景となる上半期の外国為替レートの推移を振り返っている。2024年3月末の外国為替レートは1ドル=151円34銭。7月には1ドル=161円94銭まで円安が進み、その後、政府・日銀の為替介入、政策金利の0.25%程度の引き上げ決定などを受けて円高に。9月16日には1ドル=139円台まで円が急騰し、9月30日は1ドル=142円前後で推移している。
TSRは円高による物価の下落にはタイムラグがあることを指摘。物価の安定には時間を要することから、経営体力が弱い小規模企業ほど、価格転嫁や資金調達の難しさを背景に円安の影響が長引く可能性があるとの見解を示した。
出典元:2024年度上半期の「円安」関連倒産 43件 前年同期の1.5倍に急増(株式会社東京商工リサーチ)
まとめ
TSRが2024年6月に実施した調査(※1)では、円安が経営にマイナスの影響を与えるという企業が半数を超えていた。また、企業が希望する為替レートの中央値は1ドル=125円で、現状とは大幅な乖離が見られている。
本レポートにおいてTSRが指摘するように、中小企業にとって厳しい状況は今後も続くことが予想される。特に価格転嫁を進められない企業では、原材料やエネルギー価格の高騰、賃上げ等に対応できず、経営への影響も大きくなる。
9月には価格交渉促進月間として中小企業庁がさまざまな取り組みを行ってきた。現在はフォローアップ調査として、中小企業を対象に価格交渉・価格転嫁の実施状況を把握するアンケート調査も実施されている(※2)。どの程度の価格転嫁が進んだか、こちらの調査結果にも注目したい。
※1 出典元:「円安」、企業の半数が経営に「マイナス」 希望レートは「1ドル=125円」、現状と30円以上の差(株式会社東京商工リサーチ)
※2 参考:価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果(中小企業庁)