上場企業の早期・希望退職募集、1~9月の対象人員は前年同期の約4倍 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年9月30日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』と東京商工リサーチの独自調査に基づき、希望・早期退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計。2024年1~9月に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業が46社となったことを報告した。
募集が判明した企業数は前年同期の約1.5倍
TSRによれば、2024年1~9月に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年同期30社)で、前年同期の約1.5倍に達したという。すでに2023年年間(1~12月)の41社を超えており、対象人員も8204人(同2066人)と前年同期の約4倍と大幅に増加。上場企業の「早期退職」の募集が加速している実態が明らかとなった。
TSRではこうした状況の背景に、金利上昇や為替の乱高下など、経営環境の不透明さが増していることがあると指摘。業績好調な企業は構造改革を急ぐ一方、業績不振の企業は事業撤退などに着手しているようだ。TSRは2024年の年間について、2021年以来となる1万人を超える可能性があると予測している。
出典元:上場企業の「早期退職」募集 46社 人数は前年同期の約4倍 複数回募集が増加、対象年齢は30歳以上など引き下げ傾向(株式会社東京商工リサーチ)
募集人数は黒字企業が約6割。募集対象者の低年齢化も
さらに詳細な分析結果を見ると、東証プライムが32社(構成比69.5%)と約7割を占めていることがわかる。また、黒字企業が27社(同58.7%)と約6割を占め、業績好調な企業が構造改革に伴い人員削減を急ぐケースが多いと推察される。複数回の募集を実施する企業も、前年の1社から3社に増加。9月までに3回の募集を発表した企業もあるようだ。
なお、2024年1-9月に「早期・希望退職」を募集した46社のうち、対象者の年齢が最も低かったのは30歳から。TSRは募集対象者の低年齢化も進んでいることに着目している。
業種別では、複合機事業を手掛けるリコーやカシオ計算機など電気機器が11社(前年同期4社)で最多と報告された。次いで、今年3回目の募集を実施する東北新社など情報・通信業が7社(同7社)、工場の停止に伴い募集を発表したワコールホールディングスなど繊維製品が4社(同2社)と続いている。
まとめ
早期・希望退職の募集社数が増加し、3年ぶりの1万人超えが予測されるほどとなっている。ネガティブなイメージを持たれやすい早期・希望退職制度だが、TSRの分析結果を見ると、半数以上が黒字企業での実施だ。組織の活性化や新たな展開に向けた資金捻出を目的に実施されるケースも多いことがわかる。
しかし、優秀な人材が離職してしまうリスクや短期的に大きなコストが発生するデメリットもあるため、慎重な検討が必要な制度と言える。人事担当者は、今後の選択肢の一つとして、メリット・デメリットへの理解を深めてみてはいかがだろうか。
また、早期・希望退職者数が増加している状況は、他社にとっては即戦力となり得る人材を獲得するチャンスが増加しているとも考えられる。採用担当者はこうした状況を踏まえた戦略を検討する機会としていただきたい。