デジタル人材育成を推進している企業は約7割に及ぶも参加経験ある社員は2割未満 グロービス調査
株式会社グロービス(東京都千代田区、代表取締役:堀義人)が提供する定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」は、社会人の学習実態や企業のデジタルリスキリングの現状などについて調査を実施。3つのテーマに分けてレポートを公開した。
調査実施の背景
同社は、急速なテクノロジーの進展、DX推進の必要性や人的資本の重要性の高まりなどを受け、多くの企業にとって従業員へのリスキリングが重要課題となっていると指摘。また、個々の社会人にとっても、変化する環境の中で自身の価値を高めていくため、新たなスキルや知識の獲得が求められているとの考えを示している。
そうした中で、社会で働く個人は学習に対してどのような意識を持っているのか、企業はその従業員の学習に対してどのように考えているのか、その実態を明らかにするため、GLOBIS 学び放題は調査を実施。昨年に続き2回目となる今回の調査では、特に「学習者と非学習者の比較分析、ベテラン非管理職社員(40・50代)、デジタル人材育成」に注目して実施している。
出典元:株式会社グロービス ※3レポートの詳細は同サービスサイトにて
調査概要
調査期間: 2024年4月26日~4月28日
調査対象・回答人数: 20歳~59歳の正社員 (営業職、事務職など) 1032人、従業員数100名以上の企業に所属する人事・育成担当者 412人
調査エリア:全国
調査方法:インターネットによるアンケート
社会人学習の実態と促進要因
同社によれば、今回の調査対象とした20代から50代の社会人のうち、63%が「学習は行っていない」と回答したという。さらに「学習の必要性を感じる」かとの質問に、28%は「学習を行っておらず、必要性も感じていない」と回答したことが報告された。
その「学習を行っておらず、必要性も感じていない人」(学習なし・必要性認識なし層)について詳しく調査しており、81%がキャリア目標を持っておらず、「学習を行っていないが、必要性は感じている人(学習なし・必要性認識あり層)」の28%に比べ、顕著に高いことが判明。また、学習なし・必要性認識なし層は、半数以上が仕事やキャリアの振り返りを行っていないことも報告されている。
企業のデジタルリスキリングに関する実態
続いて同社は、デジタル人材育成の実施について従業員数100人以上の企業に所属する人材育成・研修担当者に尋ねた結果、自社でデジタル人材育成に取り組んでいると答えたのは、68%であったことを報告。企業規模別に見ると、規模が大きいほど取り組んでいると答えた割合は高く、デジタル人材育成に積極的であることがうかがえるという。
一方、自社のデジタル人材育成の研修に自主的に参加したことがある社員は、全体の17%にとどまったことも報告されている。また、24%は自社でデジタル領域の研修があるかどうかわからないと回答したという。
ベテラン非管理職社員の実態
同社は、ベテラン非管理職社員の実態も調査。同層に「自身の仕事やキャリアのために学習が必要か」を尋ねたところ、学習の必要性を感じると答えたのは58%と、管理職(76%)や若手・中堅社員(78%)と比べて、約2割少ないことが明らかになったという。また、実際に学習を行っている人の割合も、管理職(50%)と若手・中堅社員(35%)よりも低い27%であったことが報告された。
さらに、ベテラン非管理職社員のうち「仕事上の課題がある」と感じている人の割合や、「将来的に目指すキャリアがある」と答えた人の割合も、他の層に比べて低いようだ。
仕事上の課題がある」と答えたベテラン非管理職社員から課題として多く挙げられたのは「論理的思考力」「Excelなどのビジネスツールを使った資料作成や分析」「同僚や上司とのコミュニケーション」であったという。一方、人事・育成担当者がベテラン社員に学んでほしいことについては「部下とのコミュニケーション、部下の育成・キャリアサポート」「チームマネジメント」が上位に並んだことも報告された。
まとめ
同社ではGLOBIS 学び放題編集長の越田愛佳のコメントとして、多くの人事担当者や経営者が、社員の自律的な学習促したいと考えていると推察。学びの必要性や学習内容を明確にし、継続的に学ぶ仕掛けを作る必要があると提言した。
本調査では人材育成に取り組む企業・担当者側と、学習する従業員側とで意識のギャップもみられている。まずは自社の状態を把握し、従業員と共通認識を持ったうえで人材育成に取り組める環境作りから始めてみてはいかがだろうか。