選考参加意欲への影響「誠実さ」が最大のポイントに リクルートMS調査
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:山﨑淳、以下リクルートMS)は、就職活動を経験し内定が出た797名の大学生・大学院生に対し「日本の新卒採用選考プロセスにおける採用CX(Candidate Experience)調査」を実施。「各選考プロセスに対する反応」や「各選考プロセスが選考参加意欲に与える影響」など、調査結果から見える実態についてレポートにまとめ、公表した。
採用CX向上のヒントを探る
採用CXとは、直訳すると候補者による採用選考プロセスでの体験を指し、広義にはそれを通じて候補者が抱く選考プロセスや企業への印象のことも含むという。
この概念は、企業が候補者に好意的な印象を与えているかを測る観点として使われ、近年日本でも採用CXへの関心が高まっているという。一方で、応募前から内定後に至る選考プロセス全体に影響するため、その評価観点や測定方法は多岐にわたっているのが現状だと同社は指摘。また昨今日本では、候補者が選考に参加しやすくなるよう設計された採用ツールが増えてきているものの、採用CX向上という観点で捉えた場合、果たして参加しやすさだけを追求することは適切なのか、といった疑問もでてきているという。
そこで同社は本調査において、参加しやすさを含む評価観点を6つ用意し、新卒採用選考プロセスと、選考への参加意欲・姿勢との関係を調査。具体的には、新卒採用場面の各選考プロセスにおける候補者の体験が候補者からの評価にどのようにつながるのか、各選考プロセスへの候補者の評価が選考への参加意欲や姿勢にどのように影響するのか、という点について調査している。
調査概要
調査方法:Web調査会社を用いたインターネット調査(2024年8月)
調査対象:以下全てを経験したことのある大学生もしくは大学院生
・自由応募による就職活動
・内定獲得
・個人面接、適性検査(能力・性格とも)の選考プロセス
サンプル数:797名
出典元:企業が候補者に与える印象とは。採用CX向上のヒントをひも解く「日本の新卒採用選考プロセスにおける採用CX調査」の結果を発表(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)
選考参加意欲への影響が最大の「誠実さ」個人面接において最も伝わりやすい
本調査によると、選考参加意欲への影響が最も大きい候補者の評価観点は「誠実さ」であることがわかった。各選考プロセスへの候補者の評価観点が「満たされている」と感じた場合と「損なわれた」と感じた場合、選考参加意欲がどのように変化するかを選択してもらったところ、満たされた場合/損なわれた場合のいずれにおいても「誠実さ(企業が学生にしっかり向き合ってくれている)」が6観点の中でトップとなったという。
また、「公平性」「実力発揮感」「誠実さ」の観点がどのような選考プロセスで評価されているかを確認した結果として、3つの観点については全ての選考プロセスにおいて平均値が3を上回っており、特定の選考プロセスにおける評価が非常に低い、というような傾向は見られなかったことが報告されている。各選考プロセスを比較すると、個人面接は3つの観点に全てにおいて評価が高い傾向にあるようだ。
これまでの調査結果から「誠実さ」が損なわれることが選考参加意欲の低下につながると示唆されたが、意欲低下にとどまらず選考辞退に至るケースがあることも判明したという。個人面接後に選考辞退を経験した候補者のうち48.5%が「面接官の態度から、学生にしっかり向き合ってくれていないと感じた」ことを辞退理由に含めていたことが報告されている。
AI面接には「誠実さ」感じにくい 候補者の評価は低い傾向に
続いて同社は、近年増加しているAI面接に着目し、現状の候補者からの評価結果を確認している。なお、調査対象全体のうちAI面接経験者は28.4%。
本調査によれば、個人面接・グループ面接・AI面接の評価結果を比較したところ、AI面接は個人面接やグループ面接と比べて全体的に評価平均が低い傾向が見られたという。また、人による面接と比較した際のAI面接に対する候補者の評価を尋ねた結果「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」については「人による面接よりも感じにくい」と回答した割合が40%を超え、選択肢中で最頻となったことが報告された。
一方で、AI面接を経験したことのある候補者のほうが、AI面接に対する評価は高まりやすい傾向にあることも判明しており、同社は実際にAI面接を受けることで評価が変化する可能性があるとの見解を示している。
適性検査で重視されているのは?「参加しにくさ」が選考辞退理由に
続いて本調査では、新卒採用選考場面で頻繁に利用される適性検査に対して候補者が重視する観点を確認。最も高い割合を示したのは「誠実さ」で、次いで「実力発揮感」と「公平性」が上位に挙げられる結果となったことが報告された。
同社はこの結果を受けて 「近年、短時間で受検できる適性検査なども増えつつあるが「参加しやすさ」や「妥当感」は他の評価観点ほど重視されていないことから短時間で受検できる検査が必ずしも候補者からの評価向上に直結しないことが示唆される」とコメント。
一方で、適性検査実施前に選考を辞退した候補者の辞退理由には「参加しやすさ」に関連する項目が他の指標に比べて多く含まれたという。「事前準備が手間かどうか」という観点から評価されることも踏まえ、候補者の負担を軽減する工夫は必要だと同社は提言している。
まとめ
採用CXの向上は、志望度や内定承諾率の向上のほか、入社後のミスマッチ防止にも効果が期待されており、選考結果にかかわらず「この企業の選考を受けてよかった」と候補者が感じられるような体験を提供することがポイントだ。
本調査では候補者にとって「誠実さ」の観点が最も重要であるとの結果が報告された。候補者に対して誠実さが伝わる採用プロセスとなっているか、改めて見直す機会としていただきたい。