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最低賃金1500円の実現「不可能」とする企業が約半数 TSR調査

2024.12.17

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、最低賃金の引き上げに関するアンケートを実施。政府が最低賃金1500円(時給)の目標について2030年代半ばから2020年代に前倒ししたことについて、企業の実態や実現に向けて必要だとされることなどを明らかにした。

調査概要

調査期間:2024年12月2~9日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
有効回答:5277社
出典元:最低賃金1,500円 半数の企業が「不可能」 収益改善(価格転嫁)と税制支援が不可欠(株式会社東京商工リサーチ)
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義

最多は「不可能」も「すでに達成」との回答も

最多は「不可能」も「すでに達成」との回答も

本調査ではまずはじめに「Q1.政府は、最低賃金を2020年代に全国平均1500円に引き上げる目標を掲げています。貴社は、あと5年以内に時給1500円に引き上げることは可能ですか?(択一回答)」と質問。これに対して最も多い回答は「不可能」の48.4%(5277社中、2558社)であったことが報告された。一方で「すでに時給1500円以上を達成(15.2%)」「可能(36.3%)」の合計は51.5%と半数を超えたこともわかっている。

TSRはこの結果について、企業規模別に分析。「不可能」とする回答は、大企業では34.7%、中小企業では49.6%と大きな差がみられている。また、産業別の分析では金融・保険業や情報通信業では「すでに達成」が3割を超える一方で、小売業や製造業では「不可能」が6割を超えたという。

続いてTSRは「不可能」と回答した企業に対してどうすれば実現できるか尋ねており、その結果「賃上げ促進税制の拡充(49.8%)」との回答が最も多かったことが報告された。そのほか「生産性向上に向けた投資への助成、税制優遇(41.2%)」「低価格で受注する企業の市場からの退場促進(31.6%)」が上位に並ぶという。

まとめ

本調査結果を見ると、時給1500円への最低賃金引き上げについて、その難度は企業規模や産業によっても大きく異なることがわかる。特に小売業や製造業といった産業で「不可能」とする企業が多い背景には、価格転嫁が十分に進んでいないことも影響していそうだ。

TSRは本調査結果と併せて、2024年の「人件費高騰」倒産が、1-11月の累計(93件)ですでに年間最多の2023年(59件)を大幅に上回っていることも報告。物価高に伴う収益悪化や業績成長の鈍化で、賃上げを実施した企業も苦しい状況に陥っていると指摘する。
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2025年の賃上げでは企業規模による格差が生じる可能性も高く、企業からは政策的なバックアップを求める声も多い。1500円達成に向けて政府がどのような策を打ち出していくか、今後も注目したい。