「人材関連サービス業」で倒産が過去10年の最多超え92件に TSR調査

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年度(4-2月)の「職業紹介業・労働者派遣業」倒産の状況について集計・分析を実施。深刻な人手不足で、転職や人材関連市場が活況を呈している一方で「人材関連サービス業」で倒産が増加しているとの調査結果を報告した。
「人材関連サービス業」の倒産が前年同期比10.8%増

TSRの報告によると、コロナ禍には冷え切っていた人材関連市場だが、コロナ関連の支援策が下支えとなり、2021年度の人材関連サービス業の倒産は38件にとどまっていたという。しかし、コロナ禍が落ち着き求人市場が活発化すると、人材関連サービス業が人材不足に陥るという状況となり、2021年度を底に倒産が増勢。2024年度の「職業紹介業・労働者派遣業」の倒産企業は、4月-2月合計が92件(前年同期比10.8%増)となり、過去10年で年度最多の2023年度の91件をすでに超えている。そのうち21件は、転職エージェントや人材紹介会社など、求職者と求人事業者を仲介して雇用機会を提供する「職業紹介業」で、過去最多となったことが報告された。
TSRはこうした背景に、深刻な人手不足と過当競争があると解説する。競合が激しい人材業界では、クライアントのニーズに応える多様な人材確保が難しいという。潤沢な資金で積極的に広告を出稿し人材確保を実現している大手企業に比べ、出稿しても効果が薄い中小企業では、広告宣伝費が資金繰りを圧迫する状況も増えているようだ。
人手不足で企業が求める人材を提供できない状況が、顧客開拓を妨げているケースもあるようだ。また、派遣業界においては社会保険の適用拡大や有給5日消化が負担に。さらに、スキマバイトの勢力拡大や、直接雇用の動きが強まっている影響もあるという。
各種分析データ
TSRは2024年度(4-2月)の「職業紹介業・労働者派遣業」倒産について、下記の通り分析結果を報告している。
◾️ 原因別 :「販売不振」の62件が最多で、全体の約7割(構成比67.3%)を占める。
◾️ 形態別 :「破産」の87件が9割超(同94.5%)で最多に。
◾️ 負債額別 :「1千万円以上5千万円未満」が53件(構成比57.6%)と約6割を占める。
◾️ 従業員数別 :約7割を占めた「5人未満(65件)」が最多で、次いで「5人以上10人未満(12件)」「10人以上20人未満(7件)」「20人以上50人未満(4件)」「50人以上300人未満(4件)」と、規模を問わず発生。
◾️ 地区別 :最多は関東の43件で、近畿20件、中部19件、九州8件と続いており、人材関連サービス業の倒産は大都市圏に集中。
まとめ
空前の売り手市場は人材関連サービス業の淘汰を促す事態を引き起こしており、2024年度の倒産は100件超えも視野に入る。採用方法や働き方の多様化に加え賃金高騰など、採用現場は転換期にあるとTSRは指摘した。
そうした中で既にここ10年の過去最多を超えた人材関連サービス業の倒産は、どこまで増加するのだろうか。人手不足と過当競争、福利厚生の負担など、人材関連サービス業を取り巻く環境は今後も厳しい状況が続くと予想される。引き続き動向に注目したい。