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トランプ関税が日本経済に与える影響 TDBマクロ経済予測モデルで試算

2025.04.18

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、米国による相互関税の適用が2025年度の日本経済に与える影響についてTDBマクロ経済予測モデルを用いて試算。実質GDP成長率を0.5ポイント下押しし、倒産件数が3.3%上振れする可能性があるとの予測を発表した。なお、TDBマクロ経済予測モデルは、経営判断に必要となる将来の経済動向について、より実体に近いものとして把握することを目的としたもの。

相互関税10%が90日で終わり91日目から当初の関税率になったら

相互関税10%が90日で終わり91日目から当初の関税率になったら

TDBは相互関税の影響について、3つのシナリオごとに予測を発表している。まず1つ目のシナリオは『90日間相互関税10%が続き、91日目からすべての対象国で当初の関税率に戻るケース』だ。

この場合、2025年度の実質GDP成長率は、相互関税の発動により従来予測から0.5ポイント低下し、前年度比+0.7%になるとの予測が発表された。

なかでも輸出の伸び率は、従来予測の前年度比2.7%増から同1.0%増へと、1.7ポイント低下すると見込まれている。TDBは特に、2024年に日本の対米輸出額のうち7兆2575億円(構成比34.1%)を占めていた自動車・同部分品が、4月3日から個別品目関税として25%の追加関税がかけられている影響は大きいとみている。さらに、輸出の伸び率が低下することで企業の設備投資も下押しされ、民間企業設備投資の伸び率は、従来予測の同1.8%増から同1.4%増へと0.4ポイント低下すると予測された。

また、民間法人企業所得(会計上の経常利益に相当)は、コロナ禍の2020年度を底に増加基調にあったが、5年ぶりに減少へと転じる可能性があるとの予測も発表された。TDBによれば、従来予測の同1.8%増から同0.1%減へと1.9ポイント低下すると予測されている。

こうした状況は、労働者の所得にも影響を及ぼし、民間最終消費支出は同1.0%増から同0.7%増へと0.3ポイント低下する見込みだという。個人消費はGDPの5割超を占めており、その影響は大きい。

倒産件数は2025年度には1万574件(前年度比+5.0%)と、従来予測より339件増加するとの予測が発表された。失業率は2.6%と0.1ポイント上昇すると見込まれる。

出典元:トランプ関税が日本経済に与える影響(株式会社帝国データバンク)

91日目からも相互関税10%が継続したら

2つ目のシナリオは『相互関税10%が継続するケース』だ。この場合、2025年度の実質GDP成長率は従来予測から0.3ポイント低下し、前年度比+0.9%になると予測されている。2025年度のうち9カ月にわたり相互関税がシナリオ1より低くなるため、成長率はシナリオ1より0.2ポイント分、落ち込み幅が緩和するとみられている。

そのほかの項目について、従来予測と1つ目のシナリオと比較した結果は下記の通り。

◾️輸出の伸び率  <従来予測比>1.3pt減 <シナリオ1比較>0.4pt増
◾️民間企業設備投資の伸び率  <従来予測比>0.2pt減 <シナリオ1比較>0.2pt増
◾️民間法人企業所得  <従来予測比>1.7pt減 <シナリオ1比較>0.2pt増
◾️民間最終消費支出  <従来予測比>0.2pt減 <シナリオ1比較>0.1pt増
◾️倒産件数  <従来予測比>254件増 <シナリオ1比較>85件減
◾️失業率   <従来予測比>0.1pt増 <シナリオ1比較>増減なし

相互関税24%が続けばGDP成長率は従来予測から0.5pt減?

TDBが3つ目のシナリオとしたのは『4月3日発表の相互関税24%(日本)が継続するケース』だ。この場合には、2025年度の実質GDP成長率は従来予測から0.5ポイント低下し、前年度比+0.7%になると予測されている。輸出の伸び率は従来予測より1.9ポイント低下し同0.8%増に、民間企業設備投資の伸び率は従来予測より0.4ポイント低下し同1.4%増となる見込みだという。

さらに、民間法人企業所得は従来予測より2.0ポイント低下し、民間最終消費支出は従来予測より0.3ポイント低下。倒産件数が1万687件(前年同比+6.1%)と従来予測より452件増加し、失業率は2.6%と0.1ポイント上昇すると予測される。

このシナリオについてTDBは、4月3日に発表された当初の相互関税が実行された場合の予測であると解説。実際にはその後の数日で様々な政策修正が行われており、シナリオ3はあくまでも参考として示された。

まとめ

トランプ政権による相互関税が日本経済にもたらす影響の大きさが、予測数値として示された。直接的に海外取引を行っている企業だけでなく、国内取引が中心の企業であっても様々な形で影響が及ぶ可能性が高い。

TDBは企業から先行きを懸念する声が多く聞かれている一方で、今後の対応により状況が落ち着くと見込んでいる声もあると報告。政府の経済対策や市場の動向を注視しながら、対策を練ることが重要だと解説した。

4月17日には日米関税交渉が行われ、そこに参加したトランプ大統領が日本との早期合意に意欲を示したとの報道もあった。今後の協議の行方にも注目したい。