不適切会計に関する調査 自社の決算書「信頼性が高い」9割未満 TSR調査
東京商工リサーチ(以下:TSR)は、自社の決算処理についてアンケートを実施。財務諸表は金融機関の融資判断だけでなく、商取引や従業員の信頼に直結する重要な書類だ。しかし、今回の調査で「粉飾決算」と「不適切会計」が混在する実態が明らかに。提出された内容を鵜呑みにできない現状があるようだ。
調査概要
調査期間:2025年7月30日~8月6日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
有効回答:6,813社
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
出典元:自社の決算書は「信頼性が高い」9割に届かず 会計士任せ、人手不足や規則の頻繁な変更も一因(東京商工リサーチ)
自社の決算処理「信頼性が高い」と言い切れる人は9割未満
本調査ではまずはじめに「貴社の決算処理は信頼性が高いと言い切ることはできますか?(択一回答)」と質問。その結果、最も多い回答は「信頼性が高いと言い切れる(87.9%)」だった。そのほか「信頼性が高いと言い切れない(2.1%)」「どちらともいえない(7.4%)」「回答を控える(2.5%)」との回答が寄せられており、規模別で回答に大きな差はみられなかった。
TSRは「言い切れない」もしくは「どちらともいいえない」と回答した企業の業種別(業種中分類、回答母数10以上)分析の結果も公表しており「その他の教育、学習支援業(10社中、2社)」「インターネット附随サービス業(15社中、3社)」がともに20.0%となったことがわかった。
信頼性が高いと言い切れない理由「会計士や税理士任せ」が最多
続いてTSRは「『言い切れない』『どちらともいえない』と回答された方に伺います。その理由は何ですか?(複数回答)」と質問。その結果「決算処理が会計士や税理士任せになっている(50.0%)」との回答が最も多く寄せられた。規模別では「大企業:22.4%(49社中、11社)」に対し「中小企業:52.4%(545社中、286社)」が30ポイントほど多い割合を示している。
そのほかの理由として「経理、財務部門の人手不足(28.1%)」を挙げる人も多かった。規模別では「大企業:42.8%(21社)」「中小企業:26.7%(146社)」と20ポイント近く差が付いている。
また、第一次産業や不動産業など、業法や監督官庁の縛りが比較的厳格な産業では「頻繁に税法や会計基準が変わるため」との回答も多く挙げられた。
まとめ
本調査では自社の決算処理に対して「信頼性が高い」と言い切れる人が9割未満となった。特に無形サービスを主な扱い品とする業種でが「言い切れない」「どちらとも言えない」との回答が多かったことや、その理由には企業規模や産業によって違いがみられている。
不適切会計が発覚すれば、民事責任や刑事罰、追徴課税が発生する可能性もあり、さらに社会からの信頼性も失う可能性が高い。自社の決算処理に対する信頼性に不安がある企業においては、改めて会計ガバナンスの再構築を進める必要があるだろう。
TSRは本調査において、意図的に数値を改ざんする「粉飾」と、意図せずに会計処理を誤る「誤謬」を区別せずに実施。どちらも「不適切会計」には含まれるが、明らかな粉飾を不適切会計と言い続ける企業には批判の声も多いとTSRは指摘。ガバナンス再構築において、注意が必要だと提言している。











