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副業解禁の現代、企業と従業員はどの様に取り組むべきか

 働き方関連法案の施行により、各企業で生産性の向上が叫ばれています。しかし、ITツールの導入で業務時間を減らすことは実現できたとしても、空いた時間をどのように有効活用するかはあまり議論されていません。

 残業がなくなった社員に求めることは、新しい取り組みやスキルアップのために、空いた時間を使って欲しいというのが本音ではないでしょうか。そのための取り組みの一つが副業であると考えています。

 今回は、最近注目が高まっている”副業”のメリットやデメリットの話を中心に、企業と従業員の関わり方についてお話したいと思います。

なぜ今副業を検討すべきか

 どの会社でも業務改善や生産性向上に取り組んでいるかと思います。RPAの導入で事務作業を半分の時間できるようになったという話もよく聞きます。私の知り合いもRPAの導入で随分仕事が楽になったと言っていました。

 しかし、「空いた時間に何をしたらいいかわからなくなった」とボヤいてもいました。

 業務の効率化については活発に議論されているものの、空いた時間を有効に活用する方法については、あまり議論されていないのではないでしょうか。せっかくITツールを導入して業務を効率化しても、肝心の空いた時間を無駄にしていたのでは本末転倒であると言えます。空いた時間を社員のスキルアップに当てるなど、有効活用することができれば、会社にとっても社員にとっても非常にメリットになります。

 私の周りでは、残業ができなくなって収入が減ったので副業を始めたという方も何人かいます。実際、株式会社 Catch the webの副業に対するアンケート結果では、9割の人が副業に興味があると回答しています。

 
 従業員の満足度向上の観点からもきちんと副業のメリットとデメリットについて検討する必要があるのではないでしょうか。
 

副業をすることの意外なメリットとは

副業をすることの意外なメリットとは

 2018年10月にパーソル総合研究所(東京都港区)が企業の人事担当者に対して副業についての実態や意識を調査したところ意外な結果が出ました。

 会社が把握している副業者が5人以上いる企業の人事159人のアンケートで、「優秀な人材の定着」について効果があったと回答したのが50.9%、効果の実感なしの回答15.1%を大きく上回っています。他にも社員スキルの向上、モチベーション向上など13項目全てにおいて効果ありが50~60%、効果なしが10~20%と大きく上回る結果になっています。

 実際、私も副業でできた人脈を仕事に役立てています。例えば広告のタイトルを考える時も知り合いのSEOの専門家にランチしながら相談に乗ってもらったり、動画制作を依頼できる会社を選定するとき、副業つながりで実績と信頼のある会社を紹介してもらったりしました。

 特にひとつの会社だけで働いていると、狭い世界しか見えなくなりますが、いろんな業界の人と関わることで、今自分にどんなスキルが必要なのか、何が強みなのかを客観的に見えるようになります。

 副業は、広い視野を持って仕事ができるようになるために非常に効果的だと考えています。

副業のデメリットは長時間労働の助長

副業のデメリットは長時間労働の助長

 株式会社リクルートキャリアが2018年に実施した「兼業・副業に対する企業の意識調査」によれば、副業を禁止する理由として、「社員の長時間労働・過重労働を助長する」が44.8%、「情報漏洩のリスクがあるため」が34.8%、「競業となるリスクがあるため」が33.0%となっています。

 実際、私自身もトリプルワークを始めた頃は、体力・精神的に厳しいと感じることが多くありました。うまくバランスをとることができず、体調を崩すくことも多くありました。

 単に企業が副業を推奨すれば社員のモチベーションが上がり、会社にメリットをもたらすという訳ではありません。

 このデメリットを解消するために何ができるかを考える必要があります。

副業のデメリットを解消するには

 副業のデメリットを解消するために企業側できることは何があるでしょうか。

私は次の二つが必要だと考えています。

1.社員の副業について把握する
 副業にどのくらいの時間を使っているのか、何の副業をしているのか、どのように仕事をしているのか(外回りの営業、在宅でリモートワークなど)を把握することです。副業の内容をきちんと把握することで、懸念点である「情報漏洩のリスク」「競業となるリスク」「過重労働のリスク」を無くせるはずです。社員側も会社からの理解が得られることで、副業を通して安心して自分のスキルを高めることができます。

2.副業のサポートをする
 何の副業をするのか、どのように副業をすればいいのかアドバイスするということです。直属の上司がアドバイスできれば理想です。

 目的は社員に副業を通してスキルを高めてもらい、本業に役立ててもらうことです。会社側から見て、身につけて欲しいスキルは何か、本人が身につけたいスキルは何か、それらを相談して何の副業を決めるかがいいと考えています。

 しかし、この話を人事の元同僚にした時「せっかく残業時間を減らしたのに、管理業務が増えるじゃないか!」と言われました。

 これは、”生産性向上=仕事を減らすこと”という認識があるためだと思います。
生産性とは、

生産性=アウトプット/インプット

であるはずです。
アウトプットを高めるには、社員一人ひとりの成長が必要です。アウトプットに着目せず、働く時間ばかりに注目してしまうことには問題があると考えています。多少の管理工数はかかりますが、長期的に見れば必ずプラスになるはずです。

 しかし、会社側のサポートがしっかりしていたとしても、社員自身がセルフマネジメントできないと意味がありません。

 先に述べたように、私も体調を崩すことが多くなってしまった時期がありました。その時は、次のことを見直しました。

・1日の時間を何に使っているか
・無駄な作業をやっていないか
・効率化できることはないか

見直してみると、英語やプログラミングの勉強など、将来使うかどうかわからないことに時間を使っていること、趣味の時間が多いことに気がつきました。

 私は思い切ってこれらの時間をバッサリと削除しました。また、定期的な情報収拾はGoogleアラートの機能を使って、必要なキーワードの記事を電車の中で読むようにし、効率化を図りました。

 ここから学んだことは、自分のなりたい姿を明確に決め、その逆算で行動を決めるべきということです。副業を始めるということは、趣味や家族との時間を減らすということです。何に時間を使うか明確に決めることと、ある程度プライベートの時間を削る覚悟が必要です。

 自分のキャリアプランを明確にし、そのプランに沿うような副業を選択するべきだと考えます。

従業員の半数が副業ワーカー/株式会社ソウルウェアの事例

 私が働いているソウルウェアでは、約半数の社員が副業をしています。それでも副業による問題は生じていません。

 うまく回っている理由は、皆自立していてセルフマネジメントができているからだと思っています。また、リモートワークで仕事ができる環境が、副業をやりやすくしていると思います。

 自社開発した勤怠管理システム「kincone」や請求書などの事務処理を円滑にする「ReptoneU」などのツールを使い、働きやすい環境を実現しています。

 私は副業を自分のスキルアップの一環と捉えるようにしています。会社側も副業は、社員教育の一環と捉えるといいのではないでしょうか。

 社員側は、今の業務にも将来のキャリアプランにも役立つ副業を考え、会社側は、副業を管理、サポートする仕組みを作ることがwin-winの関係を築くことになると思います。