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これからの「採用」はどう変わるのか?⑤ ~中途入社者の定着・活躍のために、企業は何をすべきなのか?

 急激な少子高齢化、労働人口の減少、デジタル社会への転換、AIの進化など、社会構造は大きく変化しています。その中で、我々が働く環境も変化を遂げつつあり、個人の「働く意識」が問われ始めています。
 そんな中、中途入社者の定着・活躍に悩む企業が増えています。企業は中途入社者に対してどう働きかけ、どんなコミュニケーションを取ればいいのか、解説したいと思います。

中途入社者が採れない、定着しない…という重い課題がのしかかる

 前回はH・B・Lというフレーム使いつつ、採用時のコミュニケーションに重要な3つのポイントについてお話ししました。
今回はそれを受けて、中途入社者がどうすればうまく定着し、活躍してくれるようになるのか、ご説明したいと思います。

 リクルートワークス研究所「中途採用実績調査(2017年度)」の、「中途採用における企業の人材確保状況」を見ると、2013年下半期は「確保できた」が66.1%、「確保できなかった」が33.6%でしたが、その後年々「確保できた」の割合が下がり、2017年下期にはとうとう「確保できた」が49.5%、「確保できなかった」が49.9%と、「確保できなかった」という回答が上回りました。つまり、2社に1社は「計画通りの採用人数が確保できなくなっている」ということになります。

 一方で、「採用できない」だけでなく「中途入社者がすぐに辞めてしまう」という課題を抱える企業も増えています。

 リクルートキャリアの「企業の人事担当者向けアンケート調査(2018年)」によると、「過去3年と比較して入社半年以内に離職した社員数」という問いに対して「増えた」と答えた企業が21.3%に上ることがわかりました。もちろん「変わらない」「減った」という企業もありますが、増えたという回答が2割もあるのは見逃せません。

 2社に1社が人材を採れない時代、そしてせっかく迎え入れてもすぐに辞めてしまう時代…これらの課題が今、企業に重くのしかかっています。

入社後の「とまどい」が、中途入社者の定着を阻害する

 なぜ、苦労してようやく採用し、入社してもらったのに、すぐ辞めてしまうのか。その理由を、中途入社者の生声から探っていきましょう。

 リクルートキャリアの「リクルーエージェント転職決定者アンケート集計結果(2017年)」内の、「転職者の転職先でのとまどいランキング」によると、「前職との仕事の進め方ややり方の違い」「社内用語や業界用語等、専門知識がわからない」「職場ならではの慣習や規範になじめない」などの意見が上位となりました。
 これらは求人広告や面接の場ではなかなか測り切れないもの。特に慣習や規範といったインフォーマルなルールは事前につかみづらく、入社後にとまどう人が多いようです。

 これらの意見を受けて、企業側もさまざまな工夫を凝らしています。実際に行われている中途入社者向け支援策として、歓迎会など非公式イベント、導入研修、定期的な上司との面談、入社数カ月後の集合研修などが上がっています(リクルートキャリア「中途入社後活躍調査 第1弾」より)。

 入社した人をいかに「入口」の段階でマネジメントして、うまくオンボーディング(新しく組織に迎えたメンバーが早期に活躍できるように、サポートすること)できるようにするかが、定着の大きなカギになっています。

人事と上司が「腹を割る」ことで、中途入社者は「腹をくくれる」

 では、入社後の定着・活躍には何が効くのか?
リクルートキャリアの調査(*1)によると、中途入社者のパフォーマンス向上に最も好影響なのは「定期的な人事との面談」であり、なかでも「人事による現実的な仕事・会社情報の事前開示」が効果的とされています。

 これは、仕事や会社の現状や課題を、人事が包み隠さずありのままを伝えるということ。マイナス面を含めすべてを入社前にオープンにするのは逆効果では?と思われるかもしれませんが、調査では「そういう仕事であり、環境である」ことを入社前にすり合わせておくことが、仕事理解・企業理解につながり、パフォーマンスに効くことがわかっています。

 離職意向度を最も下げるのは、「定期的な上司との面談」です。1日に1回の軽めの雑談、さらに1カ月に1回1時間程度の仕事の意義を含めた面談を上司が行っているかどうかが、離職意向を大きく左右することがわかっています。
 「職場での雑談」を軽んじる人は少なくありませんが、軽い雑談は中途入社者に「一人の人間として、自分に向き合ってくれている。自分を仲間として認め尊重してくれている」という印象を与え、存在意義を実感するきっかけになるのです。

 なお、上司との会話は、中途入社者のパフォーマンスにも大きな影響を及ぼします。「中途入社後活躍調査」では、「短時間でも仕事や会社の意義に関する会話をしている」が高いパフォーマンスにつながるという結果が出ています。

 つまり、人事と現場の上司が一体になって中途入社者と会話し続けることが、定着・活躍に効果的である、ということ。入社後に感じがちな「とまどい」を解消し、早期に「仲間としての良好な関係」を築くためには、人事と上司が率先して「腹を割って話せる関係」を作ることが大切なのです。

 こちらが腹を割らないと、相手は腹を括れません。「この会社でとことん頑張ってみよう」と腹をくくってもらうためにも、いいことも悪いこともさらけ出し、なんでも言い合える関係性が重要であると、これらの調査から教えてもらうことができます。

*1: 株式会社リクルートキャリア「中途入社後活躍調査第1弾~3弾」(2018年~2019年)