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日本企業による海外子会社管理の現状と問題点

2021.03.26

2018年に行われた日本在外企業協会による、「日系企業における経営のグローバル化に関するアンケート調査」の結果を見てみましょう。このアンケートでは、海外子会社を持つ113社が回答したものです。

まず、海外従業員に占める日本人駐在員の比率は1.2%という結果になっていました。この数値は一見すると、日本人駐在員数が少ないように感じるかもしれませんが、あくまで現地の従業員数との比率であるということを忘れてはいけません。近年では海外子会社経営のローカライズ化の重要性が認識され始め、日本人駐在員数の比率は減少傾向にあります。

しかし、海外現地法人における日本人社長比率は38%で、依然として高くなっています。外国籍社長を起用することが難しい理由としては、「本社とのコミュニケーションが難しい」をあげる企業が 53%と最も多くなっていました。やはり、海外子会社の経営層を現地の従業員に任せることは、多くの企業で難しいと感じている問題のようです。しかしながら、日本人駐在員が海外子会社を管理すると、多くの問題が発生してしまいます。

一つ目の問題としては、やはりコストに関することです。最初に述べたとおり、日本人社員を派遣すると人件費がとても高くなり、日本勤務時よりも2倍以上かかってくるケースも多々あります。実際、ある赤字に陥っていた中国の日系企業では、日本人駐在員の半分を帰任させたら、すぐに黒字化したという例もあるほどです。また、ローカル企業とのコスト競争という視点で見てみれば、ローカル企業には出向者はいないため、多くの日本人駐在員がいたのでは、コスト競争に勝てるはずがありません。

そして2つ目の大きな問題が、日本人と現地従業員との文化、商習慣や言語の違いによって、トラブルが生じてしまうことです。派遣される日本人社員は、海外在住経験がない人が多く、その国の国民性や宗教等への理解が浅い状態で現地に赴任します。このような英会話を30時間だけ勉強した日本人駐在員が、現地の従業員と上手くコミュニケーションをとって管理する、これがいかに難しいかということは一目瞭然ですよ。また、日本人社員が現地のことを理解していなければ、ローカル企業への販売拡大を図るという点で、営業の現地化も難しく、最終商品へのニーズにも食い違いが生じてしまいます。

このような課題がありながらも、長年にわたり組織の上層部は日本人駐在員で占める組織体制になっており、そもそも変更する計画はないのです。

それでは、このような体制の中でも、成功する日系企業というのは何をやっているか、見てみましょう。海外子会社経営のローカライズ化をするためには、どのような施策を講じれば良いのでしょうか。

成功する海外の日系企業とは?

あなたの会社の「現地化」をチェックしてみましょう。

❑毎年の経営目標を決める会議は、日本人駐在員のみで行っている
❑人事制度は、日本人が本社の規則をもとに修正したものを利用している
❑現地社員向けの研修体系が整備されていない
❑毎年の給与の昇給率は現地からのリクエストを承認する方法である

この質問に1つでもチェックがつくようでしたら、海外子会社のマネジメントを見直す必要があります。

海外で成功している日系企業は大きく3つのことを実施しています。

これらの要因を踏まえ、海外子会社経営の現地ローカライズ化を押し進めるためには、「海外子会社の現状把握」「現地社員の育成」と「現地に合った人事制度」が不可欠となってきます。

まず1つ目は、海外子会社の現状把握を毎年しっかりと実施していること。どのような人事制度を運営し、どのような報酬、給与の市場調査、インセンティブやボーナスの決定をしているかを把握しているのです。アンケートでの調査や、現地での聞き取りなどをタイムリーに実施しています。

2つ目は、日本企業のみならず他国からも競合企業が進出し、優秀な人材の確保が難しくなっている中、組織を任すことができるマネジャー・リーダー層に教育を実施していることです。現状を見てみると、駐在員が目の前の業務で手一杯になり、現地社員の育成を計画的に行なえていないケースが極めて多いのです。そもそも駐在員の教育への意識が薄いという傾向も一つ原因としてあるかもしれません。ただ、人材の育成は海外拠点でも非常に重要なので、日本人駐在員のミッションとして現地社員の育成が挙げられるべきなのです。

そして3つ目は現地従業員の中でも、優秀な社員から辞めないよう、人事制度を改定していることが上げられます。

成長意欲の高い現地従業員を育成し、長く活躍いただくためには「現地に合った人事制度」も重要となってきます。日系企業の人事制度は、能力を評価する基準が抽象的で曖昧になりやすく、年功序列的な方法に陥りやすいデメリットを有しています。そのため、この人事制度をそのまま海外子会社に導入してしまうと、「年功序列で頑張りと報酬が連動していない」と、優秀な現地従業員の離職につながってしまうのです。成功している企業では、現地の事情にあった人事制度へ変更し、毎年グレードアップをしています。

以上3点お伝えしてきましたが、いざ何から始めればいいのか、そして現地社員を育成するための制度や、現地にあった人事制度を作っていくために何をしたらいいのか、が最初は難しいポイントだと思います。

過去25年間で2800社以上の日系企業と、24か国に渡る人事プロジェクトに従事してきた経験を元に、貴社のグローバル人事領域を伴走していきます。

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