パラレルワーカーが考える 「企業が知っておくべき『複業』の概念」 ~パラレルワーカーはどんな働き方をしているのか~
皆様の周りに、「パラレルワーカー」は何人いますか?
この連載では「副業/複業」の概念についてお話ししていますし、コロナ禍を含む近年の様々な社会情勢により、複業(副業)をしたいと思った人は約半年で8%増加している(パーソルプロセス&テクノロジー株式会社調べ)との結果も出ています。
しかし、実際にはパラレルワーカーや複業人材とは縁遠い、という方もまだ多いかと思います。具体的に知らないことには、前回お話したような「副業人材を雇用してみる」というのも考えにくいのではないでしょうか。
今回は、副業人材を少し身近に感じていただくため、私がパラレルワーカーとしてどのように働いているかはもちろん、私の身の回りの複業人材についてもお話しできればと思います。
普通の「会社員」がなぜ「複業」を考えたのか
現在私は、フルリモートで正社員をしながら、複数社から継続・単発問わずで業務を委託されたり、自身でビジネスの種をまいたり、というパラレルワーカーです。しかしこの働き方になったのは2年前と最近です。社会人になった当初は、3000人程度の規模感の企業で、朝8時に出勤し真夜中に寝るためだけに自宅へ帰る、というごく普通の「働きすぎサラリーマン」を3年半していました。その一方で「仕事だけの人生は嫌だな」と思い、休日や少ない余暇にはボランティアとしてイベントやフェスの立上げ、好きな事でコミュニティの運営をしていました。その当時、仕事は仕事と割り切り、プライベートの取り組みの方が楽しかったです。そのため、プライベートで培ったスキルを会社で活かせないかと機会をうかがっており、これまで実施されていなかった既存顧客がもつ「働き方改革の対応」などの潜在課題をテーマにした各種分科会の立ち上げを行いました。ただ日に日に仕事と趣味のギャップを感じるようになり、この頃から「いつか趣味で楽しんでいることをビジネスに」という考えを持っていました。
入社時に決めていた「自分ならではのバリューを出すということ」という会社卒業のゴールを分科会の立上げでカタチにでき、次は事業を起こすことを経験したいと思い、当時社員数が数名、という規模のAI開発会社に転職。AI活用に向けた提案やキャリアコンサルタント、新規事業の立上げをしていました。
大きな転機になったのは、大阪にいる父の末期ガン宣告です。一緒に過ごせる「残り時間」が突きつけられたことにより、好きな時に好きな場所で好きな人と過ごす生活が出来ないことに違和感を感じました。一方で色々調べてみたものの、、その時点のキャリアで転職し、家族と居る時間を増やし、自分の望む働き方で今までと同じ年収を得ることは非常に難しいということもわかりました。「自分にもっと市場価値があったら。。」自分のキャリアは自分しか面倒みないよということ。1社だけに所属して依存して働くことの怖さも感じ、「複業」という選択肢が出てきたのです。
やりたいことを仕事にしながら、1社に「依存」しない働き方へ
そんな時に出会ったのが、現在フルリモートで働いている株式会社ニットでした。当初は1社目でのカスタマーリレーションなどの経験を買われ、カスタマーサクセスとして対クライアントの業務を中心に担当していました。そこから、趣味や複業でおこなっていたコミュニティやイベント運営のノウハウをニットが評価してくれて、クライアント向けのイベントを担当し、組織内コミュニティの活性化にも着手。現時点での集大成が昨年12月に開かれたイベント「コロナでも繋がりを!丸一日かけた<大型オンライン忘年会」で、クライアント様や働く人々のコミュニティと共に制作した生放送・録画を1日に16コンテンツを放送するというものでした。
また、フルリモートになったからこそできるようになったこともあります。それが、多拠点生活です。現在、月額4.4万円で全国120拠点住み放題のサービス「ADDress」を活用し、今までで31カ所の拠点で生活しました。中でも、「ADDress」で長野県小布施町に滞在していた際のご縁から、長野県庁が企画する移住・起業支援プログラム「おためしナガノ」に株式会社ニットとして参画する等、行った地域で新たな仕事や繋がりが生まれています。
長野県小布施町に滞在していた時のスケジュール。業務を行う組織ごとに色分けしています。
青:ニット / 黄色:おためしナガノ / 緑:YADOKARI / ピンク:HITOKOMA /
紫:ADDress / 青紫:プライベート / 灰色:移動・休暇
現在は、メインの仕事として株式会社ニットでコミュニティマネージャーや研修講師、YADOKARI株式会社でチーフコミュニティビルダーとしてまちづくり支援や企画プロデュース。そして自身が運営する好きをシェアするコミュニティ「HITOKOMA」についてビジネス化の道を探りながら、各滞在先で出会った皆様から様々なお仕事をいただいている状態です。本業・副業といった境目を設けず、どの仕事も「誰かのターニングポイントとなること」を大切にし、自分の好きや得意で貢献できないかを意識して仕事をしています。もちろん人とは違う働き方をしているので、実績が出ていないと認められません。
「3分3年30年」というたとえがあります。 「信用」というのは、重要さに気づくのに3年かかるが、失うのは3分。そして、続くのが30年を意味します。そして自由であるには責任が伴うこと。これらを意識して時間で働くのではなく、価値を出す事に重きを置いて日々仕事をしています。
色々なところで出会ったパラレルワーカーたち
現在私の周りには様々なパラレルワーカー・複業人材がいます。例えば株式会社ニットが運営しているサービス「HELP YOU」のメンバーたち。
日本全国のみならず、世界33カ国で約400人がフルリモートで働いていますが、働き方もそれぞれです。
・女性社長の秘書+乙女ゲームのシナリオライターなど5種類以上掛け持ちし月100万円以上の収入
・正社員で広報、営業を掛け持ちしながら大学の非常勤講師
・クライアント対応のディレクターとして年間4000万円売り上げながら地方紙新聞記者
・占い師、漫画家、イラストレーター、デザイナー兼務
・家業の経理をしながらデザイナー
・農業&ハンターをしながら事業開発
これはほんの一例なのですが、全員に共通しているのは、自分の好きや興味・関心に向き合って仕事にしていること。最初は仕事にならないと思っていたものでも、継続して取り組み価値を出し続けることで、ある日仕事へと昇華していきます。そういった人材が多く、1人でも多くの方が「未来を自分で選択できる」キッカケになればと、オウンドメディア「くらしと仕事」でコンテンツ化を進めているところです。
そして「HELP YOU」と一口にいってもその中でご契約企業はさらに細分化しているため、10社以上から全く別業界の業務を受けているメンバーもめずらしくありません。このようなユニークな人材たちがさまざまな組み合わせのチームになり、互いに刺激し合いながら、得意なことを仕事にしてスキルを伸ばしています。
業務や人材を「混ぜる」ことの相乗効果
ちなみに最近、私は自身の仕事同士を意識して「混ぜる」ようにしています。Aの仕事で得た知見をBの仕事に活かし、Cの場所でつながったご縁でAも協働・協業できるように持っていく、というような形です。面白そうな人・ものと出会った時にとりあえず自分で関わってみる、繋がってみることで、これまで想像もしてなかった面白いアイディアも生まれてきますし、提案できる幅も広がります。業務や組織同士を切り分けすぎずあえて境目を無くしていくことで、私を接着剤(ハブ)として複数の団体が繋がり互いにWin-Winの状態を実現することができます。これこそが、私自身が介入することでの固有価値になると思います。
前回の記事で「副業人材の採用」についてお勧めしましたが、大きなメリットは今まで組織にいなかったタイプの人間が関わることにより新たな視点が得られることです。様々な組織に所属し、ユニークなキャリアを持つ人の視点は、フルタイムで出社し新卒から勤めあげている正社員とは全く異なります。長年の蓄積もありますから、必ずしも新しい視点が正しい、とは言いませんが、新たな気付きにはなるはずです。
次回は、これからパラレルキャリアを目指す人やその周囲についてお話しできればと思います。お楽しみに!