~介護と仕事の両立支援~ 「介護施設入居」という選択肢 多忙なビジネスマンが親の介護施設を効率的に探す方法
以前『介護離職回避に有効な選択肢。親の介護負担がほぼゼロに!施設サービスの基礎 』のコラムの中で、親の施設入居のタイミングは、要介護度のレベルではなく、家族の負担が限界を迎える前だということをお伝えしました。介護施設を探すことになった時、親にとってベストな施設を探したいという気持ちは皆さんが持っていると思います。しかし、仕事をしながらこれをやるのは骨が折れるもの。
日本は超高齢社会に突入し、そのニーズに応えるかたちで介護施設は増加の一途を辿ります。試しに「お住まいの住所 老人ホーム」でネット検索してみてください。自宅周辺だけでも相当数の施設がヒットすると思います。その中から親に合う施設はどのように探すべきでしょうか?
今回は、多忙なビジネスパーソンが介護施設を効率的に探す方法 についてお伝えします。探す方法はいくつかありますので、それぞれポイントをみていきましょう。
ネットを活用して効率的に探す
結論からお伝えすると、ネットを活用する方法が最も手軽で効率的です。スマホやパソコンからいつでも探すことができ、資料請求や見学の申込みもできます。
私の在籍する会社では『LIFULL介護(ライフルかいご)』という月間300万人以上が利用する老人ホームの検索サイトを運営しています。サービスを開始してから10年以上が経ちました。類似した検索サイトも沢山ありますので、使いやすいサイトを探してみると良いでしょう。
どの検索サイトも探す手順は同じです。
① エリアと予算を決め検索すると、条件に合う施設が一覧表示される
② ヒットした物件の詳細な金額とサービス内容を確認する
③ 入居候補を絞りこみ、最低2~3ヶ所を見学・比較して入居先を決める
<老人ホームのオンライン見学>
コロナ禍で老人ホームのオンライン見学が急速に広まりました。
一般的に、現地見学の所要時間は60~90分程度かかります。オンラインであれば30~60分程度で終えることもできるので、スキマ時間に見学も可能です。事前に「60分程度で終えたい」と施設側に伝えておくと良いでしょう。
また、移動コストを抑え、離れて暮らす家族も一緒に説明を聞いたり、館内を見たりできるメリットがあります。
例えばオンラインで5~6ヶ所を見学し、最終候補の2~3ヶ所を現地見学してみると良いでしょう。見学に費用はかかりません。気軽に活用することをおすすめします。
ケアマネジャーは老人ホームに詳しくない?
上記グラフからわかるように、老人ホームへ入居する人の多くは、ほぼ毎日何らかの介護を必要としています。介護サービスを利用していれば、サービス内容をプランニングする担当のケアマネジャー(以下、ケアマネ)がいらっしゃるでしょう。いざとなったらおすすめの老人ホームはないか聞きたくなりますよね。
もちろんケアマネにも近隣施設の情報は入ります。特に老人ホーム密集エリアでは、入居者獲得のため営業マンがケアマネのもとに足しげく訪問します。
「うちの施設の特徴は~」とセールストークを繰り広げますが、沢山ある施設の特徴まで覚えられません。それに、あくまでケアマネは在宅介護のプロ。老人ホーム選びのプロではありません。
<ケアマネは老人ホーム見学をする時間がない>
彼らは通常業務でさえ多忙なため、よほど熱心な人でない限り施設見学をすることは稀です。また、最近は離れて暮らす子どもが親を呼び寄せる傾向もあります。県外はもちろん、活動エリア外の老人ホーム情報など知るよしもありません。
私の経験上、ケアマネに施設の相談をすると老人ホーム紹介会社(後述)の利用をすすめられます。紹介会社から老人ホームの情報提供を受けたら「親の住まいとして相応しいか」、その客観的な意見をケアマネに求めてみても良いでしょう。
老人ホーム紹介会社を利用する
老人ホーム紹介会社とは、民間の老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)などの高齢者向け住宅を専門に取り扱う仲介業者のことです。首都圏を中心に全国的に増加しています。「老人ホーム 紹介」でネット検索すると、沢山のサービス事業者がヒットするでしょう。
紹介会社には入居相談員と呼ばれるスタッフがいます。電話や対面、最近はオンラインでも入居相談が可能です。「希望するエリア」「予算」「入居者の身体状態」「入居のきっかけ」などをヒヤリングし、その条件に合う施設を提案してくれます。
見学日程の調整や、車を出して見学に同行するサービスも行っています。相談は無料なので利用を検討してみると良いでしょう。
<入居相談員は経験値の高い人がベスト>
入居相談員は老人ホームを見学する機会の多い職業です。勉強のため既存施設を見学したり、新規オープンの内覧会に出席したりする機会も沢山あります。数年の相談員経験があれば必然的に施設の内情や評判にも詳しくなります。
しかし、相談員の中には入社数ヶ月という短い経験しかない人もいます。もしも紹介会社を利用するとしたら、中堅~ベテランの相談員を指名すると良いでしょう。
役所は特定の施設を紹介できない
「役所に相談すれば、親に合う介護施設を教えてもらえるかも」そう思う人もいるかもしれません。
実際、公的施設である特養(特別養護老人ホーム)の入居申し込みは、多くの役所で受け付けています。また、介護施設にはさまざまな種別があるので、例えば「介護付き有料老人ホームとグループホームは何が違うの?」といった疑問には答えてくれます。
しかし、それ以上の情報は期待しない方が良いでしょう。役所の性質上、特定の介護施設を「ここがオススメ」と紹介することはできません。情報提供でよくある方法が、その市区町村にある「施設一覧を手渡される」というものです。
そこには施設名・住所・電話番号が記載されており「いろいろあるので問い合わせてみてください」と言われます。しかし、施設の特徴や料金すら分からない一覧を手渡され、闇雲に問い合わせることは現実的ではありません。また、その程度の情報であれば、役所の公式サイトからでも閲覧できます。
友人・知人の口コミはアテにならない① ~事実と主観に分ける~
同世代の友人・知人の中には、一足先に親の老人ホーム入居を経験した人もいるでしょう。入居に至る過程でいくつか老人ホームを見学し「ここのホームはおすすめ」「こっちはぜんぜんダメ」といった体験談を聞くことがあると思います。
しかしその話を真に受けてはいけません。ここで大切なのは、聞いた話を事実と主観(感想)に分けて捉えることです。
例えば友人からこんな話を聞いたとします。
「私の母が入った〇〇ホームは新築でキレイだし、職員さんもみんな親切なの。食事も美味しいし、駅前だから家族も通いやすいのよ」
いかがでしょう。良い老人ホームを見つけて入居できたことに満足した印象を受けますね。しかし、これを事実と主観に分けると次のようになります。
【事実】
・新築であること
・駅から近いこと
【主観(感想)】
・職員が親切だった
・食事が美味しい
職員の対応をどのように感じるかは人それぞれです。それに食事の好みだって皆違いますよね。逆に「見学したとき、職員はすれ違っても挨拶がなくて感じ悪かったのよ。食事もマズくて残しちゃった」とマイナス評価を聞いた場合も同じです。
もしかしたら、すれ違った職員は終末期の入居者対応で慌てていたのかもしれません。食事も、偶然その日のメニューに友人の苦手な食材があって残しただけかもしれないのです。
老人ホームはその瞬間の良し悪しだけで判断できないのです。他人の主観を鵜呑みにせず、事実のみを参考にしましょう。
友人・知人の口コミはアテにならない② ~介護レベルの違い~
公的な介護施設を除き、民間の老人ホームの大半が「要支援1~要介護5まで」という入居条件になっています。
この7段階ある介護レベルすべての入居者が満足できるホームはあるのでしょうか。
例えば、友人がこんなことを言ったとします。
「うちの母は要介護4で、ほとんど寝たきりの状態で老人ホームに入ったの。入ってみたらとっても良い所なの。食事介助も丁寧だし、きっとあなたのお母さんも気に入ると思うわ」
さて、前述の「事実と主観」で考えると、主観ばかりでほとんどアテになりませんね。さらに重要なのが介護レベルです。あなたの親の介護レベルが友人の親と同等であれば、聞いて損はないと思います。
しかし、比較的お元気な「要支援1~要介護1」だとしたら、寝たきりの友人の親の話はほとんど参考になりません。「重介護者が満足する施設=軽介護者も満足する」と一概にいえないのが、施設選びの難しいところなのです。
身体状態によって必要とする介護内容も違えば、参加できるレクリエーションも違います。
生活する上で何を重要視するか。あくまで自分の親の目線で優先度を考え、それが叶う施設を探すと良いでしょう。
介護施設を探すには、複数の方法があるということをご理解いただけたでしょうか。
一つの方法にこだわらず、「検索サイトを使いつつ、ケアマネさんにも聞いてみる」など、デジタルとアナログ情報の掛け合わせもよいと思います。
何れの場合も候補となる施設を見つけたら見学し、納得したうえで入居契約を結びましょう。