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介護離職回避に有効な選択肢。親の介護負担がほぼゼロに!施設サービスの基礎

2021.01.29

 前回は、「在宅介護か施設入居か。介護離職を防ぐために知っておくべき介護サービスの基礎」と題して、親の介護がはじまったときに選択肢となる在宅介護と施設介護の大まかな違い。そして、介護保険サービスの種類と在宅介護の限界について解説しました。今回は基礎編第二弾として介護施設についてのポイントをまとめます。

 かつて「親の介護は子どもの務め」といわれ、介護をすべて任せる施設入居に対して否定的な時代がありました。しかし、家族形態も変わり親と別居することが当たり前となった現代では、施設入居が選択肢の一つとなりました。さらに、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や、認知症高齢者が認知症の配偶者を介護する「認認介護」世帯が増加していることなども背景にあります。

 人事部や管理職の方が施設の知識を持つことで、親の介護がはじまった部下の方が、少しでも安心して仕事と介護の両立に前向きに取り組めるようにアドバイスをしていただきたいと思います。

親の介護施設入居はいつ考えるべきか

 「介護施設のお世話になるのは、親が寝たきりになってから。」みなさんもこんなイメージをおもちではないでしょうか。高齢でも元気なうちは自宅で生活できると思いますよね。

 そこで、少々意外な調査結果をお伝えします。下記は私が在籍する㈱LIFULL seniorでおこなったアンケート調査(※)の一部です。施設入居した家族がいる2,000人の介護者に向けて行った調査で、入居時の要介護度を調べたところ、要支援1~要介護2までが54.5%と、半数以上を占めることが分かりました。

 介護度別にもっとも多かったのが要介護1で17.6%。次いで要介護2が16.3%という結果となりました。一般的に「重度」と呼ばれ寝たきりの方も多い要介護3~5よりも、要支援1~要介護2の割合が多かったのです。

 この結果から見えてくることの一つは「介護度が低い=介護負担が少ないというわけではない」ということ。特に認知症をおもちの場合、「外出先から帰ってこられない」「事故に合った」というケースもあり、身体は元気でも常時見守りが必要な場合があります。

 施設入居のタイミングは親が寝たきりになったときではありません。家族の負担が限界を迎える前に検討すべきことなのです。

※プレスリリース:「介護施設入居に関する実態調査」

介護負担がほぼゼロに!デメリットは金銭負担の増加

 施設サービスは、自宅から介護施設に住み替えてスタッフのサポートを受けながら日々の生活を送ります。食事・入浴・排せつを基本とする必要な介助がすべて受けられるので、親の介護負担をほぼゼロにできることが大きなメリットといえるでしょう。下記は在宅サービスと施設サービスの負担の違いを表したものです。

 施設入居で親の介護やそれに伴う家事負担がなくなります。精神的・肉体的な余裕が生まれることで復職も叶い、仕事にも集中できることでしょう。

 また、施設によってサービス内容はさまざまですが、バランスのとれた食事、入居者同士の交流、機能訓練やリハビリなど身体機能の維持・回復に向けた取り組みなどが提供されています。入居してから「親の性格が穏やかになった」「病状が安定した」という声もあり、入居者本人のQOL(生活の質)向上も期待できます。

 デメリットはやはり経済的な負担でしょう。どの施設に入居しても、自宅介護と比べて経済的な負担は確実に増えます。それでも、離職して収入が激減することと比べれば、介護費用が多少増えても仕事は続けるほうが良いと私は考えます。なぜなら年齢的に住宅ローンの返済やこどもの教育費などが必要なタイミング。さらにそのタイミングで離職すると退職金や将来受け取れる年金額の減少にもつながります。

 介護離職は部下のその後の人生にも影響を与えます。部下から退職の相談があった場合はそういった現実的な話を冷静にすることも人事部や上司の役目といえるでしょう。

 では実際にどのような介護施設があるのか次の項で解説していきます。

公的施設か民間施設か、介護施設にも種類がある

※月額費用はどれも「介護保険の負担割合が1割」の場合を想定したものです。
※月額費用はどれも「介護保険の負担割合が1割」の場合を想定したものです。

 介護施設には大きく二つ、公的施設と民間施設に分類されます。
どちらも入居して介護サービスを受けながら生活するという点は共通していますが、価格差やサービス内容に違いがあります。

 近年、介護施設は多様化し、上記以外にも「ケアハウス」「シニア向け分譲マンション」など、種別をぜんぶ合わせると10種類以上にもなります。ただし全て覚える必要はありません。次の項から代表的な6つの種別について解説します。

安価が魅力。公的施設の特徴と費用

■特養(特別養護老人ホーム)
 社会福祉法人などが運営し、スタッフによる介護やレクリエーションなどのサービスを受けながら日々の生活を送る。自宅生活が困難になった高齢者を対象とし、入居条件は原則「要介護3~5」。カーテンなどで仕切られた多床室(相部屋)と個室では費用が異なる。都市部では満床の施設も多い。
初期費用:なし 月額費用:8~15万円

■老健(介護老人保健施設)
 医療法人などが運営する公的施設。退院直後などすぐに自宅へ戻れない要介護高齢者がリハビリをして在宅復帰を目指す。そのため入居期間は3か月程度と短く、原則として長期入居はできない。特養に申し込み、順番がくるまで老健で待機入居している高齢者もいる。
初期費用:なし 月額費用:8~15万円

■介護医療院(介護療養型医療施設)
 医療法人が運営。病院の敷地内などに隣接され、治療を終えても自宅療養できない高齢者がそのまま移り住むケースが多い。注射や点滴など慢性的な医療的ケアが必要な方が入居している。要介護1から入居可能だが、平均介護度は4前後と重く、寝たきりの方が多い。
初期費用:なし 月額費用:8~15万円

サービス内容は多種多様。民間施設の特徴と費用

■有料老人ホーム
 民間の介護施設としては最も数が多く選択肢が豊富。生活に必要なすべてのケアが受けられ、サービス、食事内容、共用設備など多種多様。ただし入居金や月額などは公的施設に比べ高額。比較的お元気な状態である「要支援」から入居できるところも多く、なかには自立した高齢者向けの施設もある。
初期費用:0~数億円 月額費用:10~40万円

■サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
 安否確認と生活相談サービスが付いたシニア向けの賃貸物件。身体は元気だが独居は不安という人から要介護者まで入居可能。介護サービスは別契約となり、外部業者を利用することで生活を継続できる。施設によって入居条件が微妙に異なり、認知症の症状が進行したら退去を余儀なくされるところもある。
初期費用:敷金2~3か月分 月額費用:10~30万円

■グループホーム
 認知症と診断された高齢者が入居する介護施設で、民家を改装した小規模な物件が多い。9名以下の「ユニット」と呼ばれる単位で、家庭的な雰囲気のなか共同生活を送る。認知症ケアの一環として調理や洗濯といった家事を分担することもある。入居条件は「要支援2~」「同一地域に住民票がある方」など。
初期費用:0~50万円 月額費用:10~20万円

施設の話をする際は部下の心情に寄り添う姿勢が大切

 いかがでしたでしょうか。ここまで、公的施設と民間施設の特徴について解説しました。上司としては、当人の離職を回避させたい思いもあり、施設入居の話を進めるでしょう。ただし、その際は安易に勧めるのではなく、部下の心情に寄り添う姿勢が大切です。
 その理由は二つ、①経済的な負担の増加 ②部下とその家族への配慮です。

 ①は、施設入居するとほぼ間違いなく経済的負担が増えます。多くは親の年金収入で賄いますが、不足分は家族が援助するケースもあり、施設をすすめても「そんなに簡単に言わないでくれよ」と思う部下もいます。
 そのため、「最近は低価格で入居できる民間の介護施設もあるみたいだよ。ネットで探すこともできるし、安価な特養の順番待ちの間に民間施設を利用する人もいるみたいだね。」といった情報提供の仕方が望ましいでしょう。

 ②は、純粋に親の面倒を最期まで自分で見たいという部下もいるからです。さらに親自身も住み慣れた自宅からまったく異なる環境へ移るというのは大きな決断、当然拒む方もいらっしゃいます。現代の高齢者は持ち家比率が高く、「亡くなるときは自宅で」と心に決めている人も多いはず。我々が思うほど、住み替えは決して簡単な話ではないのです。

 まずは部下が介護についてどのように考えているかを聞いたうえで、短期間施設入居ができる「ショートステイ」や介護施設の「お試し入居(体験入居)」をすすめてみるのもいいでしょう。
 ショートステイの利用中、部下は介護から解放され安心して休息でき、親も意外と住み心地がよく「ここなら入ってもいいかな」と気に入ることもあります。上司の一言が、そうしたきっかけ作りになれるといいですね。