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“若手”時期に求められる土台構築と取り巻く環境変化─「力強い中堅社員」を育てるための「若手育成」の処方箋vol.1

私は「コミュニケーションエンジニア(以下CE)」という仕事をしており、お客様から寄せられる人・組織上の様々なご相談に対して、意欲とコミュニケーションの技術を駆使して問題解決を支援しています。
本連載のテーマは「若手社員の育成」です。これは私たちによく寄せられる相談の1つであり、現在その数は増加。以前からご相談をいただくテーマではありましたが、その内容が少し変わってきているように感じています。
そこで本連載では若手社員育成に問題意識を感じているバックオフィスの方々に向けて、その具体的な取り組みを紹介しながら、“力強い中堅社員に育ってもらうための処方箋”をいくつかご紹介していきたいと思います。
第1回は、「若手育成」を考える上での視点について。

「若手」とは誰を指すのか?

何気なく使っている「若手」という言葉ですが、皆様が「若手」と聞いて思い浮かべるのは誰でしょうか? 企業によって「若手」が指し示す対象は様々です。

以前お付き合いしていたメーカーの開発部門では、「入社してから30歳」くらいまでを若手と位置付けていました。高い専門性が求められる仕事柄、若いうちはまだ仕事の一部分を任されることが多く、30歳くらいでようやく一人前としてみなされ、テーマを与えられる方も少なくないそうです。またあるシステム開発会社では、入社から4年目くらいまで、とのことでした。これは開発の一部分や、小規模案件のプロジェクトマネジメントを任せられるくらいまでの年次だそうです。

私が以前勤めていた金融機関では、営業としての「若手」は2~3年目くらいを指していました。1年目は新人と呼ばれ、2~3年目はまだ半人前で数字目標も少ないのですが、4年目になると先輩と変わらない数字目標を持ち「中堅」と呼ばれます。ちなみに私たちCEは、30代半ばでもまだ「若手」と呼ばれます。配属から5~10年かけて、1からその技術を身につけていくからです。

これからコラムを進めていくにあたり、「若手」を定義しておかなければなりません。多少あいまいさが残る表現にはなりますが、ここでは、「現場配属後~一人前(難しい目標・テーマを任される)中堅の入り口手前までの間」と定義します。

ここで「若手の定義にあいまいさが残る」と表現した理由として、そのタイミングで「若手」が置かれる状況がガラリと変わることです。図1は、若手と言われる時期における仕事の量・質・幅の変化、周囲の関わりの変化を「イメージ図」にしたものです。

(図1)若手の時期における「仕事、周囲の関わりの変化」

現場配属後一定期間は、通常上司や先輩のサポート下で仕事を覚える時期です。仕事量もそれほど多くなく、周囲からのサポートも手厚いものです。しかしある時期を境に(一般的には2年目くらいに)、上司や先輩からの積極的サポートが減り、同時に仕事量は増えていきます。中堅手前になると仕事の量、質・幅の拡大が一気に押し寄せます。上司・先輩からサポートしてもらう段階は過ぎ、独り立ちしていきます。ちなみに周囲の関わりの点線部はコロナ前のイメージです。リモートワークの進展が職場・先輩のサポート支援をしづらくしていることは、ご承知の通りでしょう。同じ会社でも部門・部署・状況が変わればこのイメージが変わっていくため、若手が置かれている状況は様々です。

若手の時期に求められることは何か? 身につけるべきは?

企業や部署が違えば一人前になるために求められることは違うことは当然です。しかし、部門・部署を越えて、ときには企業をも越えて事業を推進していけるような力強い中堅社員に育つために、若手の時期をどう過ごしてもらうべきなのか? 何を身につけさせるべきなのか? 共通していえることがいくつかあると思っています。

皆さんは、自社の若手社員に対して「若手の時期だからこそ、現場でこんなふうに過ごしてほしいと期待することを1つ挙げてください」と問われたらどう回答されますか?

相談者様に聞くと、業績や成果以上に、「何事も前のめりに取り組んでほしい」「思い切って、失敗を恐れずに取り組んでほしい」といったことを口にされる方が圧倒的に多いのが実態です。私たちも同感です。「目の前の仕事に、足を止めず、前のめりに取り組むこと」こそが、若手の時期に必要なことです。そしてその経験を積み重ねる中で、身につけてもらいたいのが「知識・技術」「行動原則」「仕事・職場(仲間)・自分への価値実感」なのです(図2)。

(図2)

若手の時期は、力強い中堅に育つための確かな自力・土台を固める時期。この時期に、前のめりに取り組めばそれだけたくさんの壁にぶつかります。それをどう乗り越えるかを必死で考える中で、必要な知識、技術、壁の乗り越え方(行動原則)を身につけてほしい。そして歓喜の成功や悔しい失敗を繰り返す中で、職場の上司・同僚と協働していくことの意味、仕事の意味、自分への自信を積み重ねてほしい。

仕事の業績や成果ももちろん大事ですが、目の前の仕事に集中して取り組むことが、いざ中堅になって、高い目標や難しいテーマを任されたときに、困難にも目を背けず、自分の力を発揮するよりどころ・支えをつくる、と私たちは考えています。

若手育成を図る「基準」をもって現実を見つめる

若手社員の育成が「本当のところ、うまくいっているのかどうかわからない」という声をよく聞きます。その原因の一つは、若手の状態を判定する基準が明確になっていないことではないかと思います。今回、その仮説を提示しましたが、この基準に照らしたときに、自社の若手育成の現状を測りなおしていただくことが若手育成を進める第一歩になるのではないでしょうか。

ところで、そうやって若手育成を見つめた時に、「実は……」と真剣に悩みを打ちあけられるお客様が増えています。次回は、今、若手育成に何が起きているのか? その問題を引き起こしている原因は何なのか? を見つめてみたいと思います。