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遅刻・寝坊・突然の退職も! 新人に起きがちな行動とその理由と成長につなげる「伸ばし方」【中小企業の組織づくり~いまこそ階層別育成の時代 Vol.3】

皆さんの組織にはどのような役職の方がいらっしゃるでしょうか。部長、課長はあるとして、課長、係長、主任といった役職はない、あるいは部長も課長もない、というケースも最近はあるでしょう。スタートアップ企業だと、階層が3階層程度……ということも珍しくありません。そもそもピラミット構造ではなく、フラット化しているという企業もあり、それが肯とされるような気運があります。ところが、いざ組織運営をしてみるとフラットな組織の運営難度は非常に高く、あらためて階層別組織の良さが見直されているように感じています。そこで本連載では、中小企業の組織づくりをテーマに、階層別育成の考え方について解説していきます。ぜひ、自社の組織づくりに生かしていただければ幸いです。
第3回は、今の新人に期待される役割と実践へのつなげ方のヒントをお伝えできればと思います。

目次

(1)ケースについて考える ケース①
(2)ケースについて考える ケース②
(3)関わり方のヒント

ケースについて考える ケース①

前回以下のケースをご提示しました。「うちにもこんな新人がいるな……」「うちの新人とは少し違うな……」など様々にお感じになりながらお読みいただいたのではないでしょうか。改めてそれぞれのケースについて考えてみたいと思います。

ケース①
直属上司Aさんに新人Bさんに対する印象を聞きました。
新人Bさんは入社してしばらくは元気な様子でしたが、入社して3カ月たった今、①なんだか顔色がさえず、挨拶の声も小さいと感じます。先日資料づくりを依頼したけれどなかなか仕上がってこず、②「あの資料どうなったの?」と尋ねると「すみません……」と言うばかりで、結局納期に間に合わず、私が作ることになってしまいました。③雑談にものってこないし、④遅刻や寝坊も増えたようです。

ケース内でお伝えしたかった点に下線をつけてみました。

下線① 相手をよく見ているか
「顔色」という表現を使っています。かつて「部下の顔色をよく見るのがマネージャーの仕事だ」などと言われていました。体調や精神状態などよく観察することがマネジメントにとって大切だという意味合いかと思いますが、昨今ではリモートワークも進み、顔色含め、新人が何をやっているのか、様子がさっぱりわからない、という方も多いのではないかと思います。マネジメントの難度が格段に上がったともいえるでしょう。新人の皆さん一人ひとりの状態をサーベイで確認するサービスなどもあります。相手を知ろうとすること、観察することをあきらめないことが、大切なのではないでしょうか。

下線② 相手に伝わるコミュニケーションか
上司の「あの資料どうなったの?」という問いかけについて「すみません……」という反応です。回答としてはちぐはぐで上司の問いかけに反応はしているものの、知りたいことには答えていない、という状況です。ここで気になるのは「問いかけ」方についてです。「どうなった?」という発問は冷静に考えるとかなりあいまいな問いで、問われた時新人側は何に応えていいのか戸惑い飲み込んでしまったとも考えられます。
また、さらにさかのぼって仕事の指示をした際に「何を」「いつまでに」「どの程度」といったことを上司と新人の間できちんと合意できていたのかということも気になります。そろそろ資料があがってきていいのに……と上司はやきもきしているけれど、部下側は期限を聞いていないので、まだ時間に猶予があると思っている、でも突然どうなったときかれたから、多分急いだほうがよかったんだろうけれど……などと逡巡してしまう、といったことは考えられないでしょうか。
「わかっているはず」「伝わっているはず」という感覚に頼らずに、相手にとってわかりやすいコミュニケーションが取れているかは今一度点検してみる必要があるかもしれません。

下線③ 心理的安全性はあるか
下線②の状態を別の側面から見てみると、仕事でわからないことがあったけれど、質問ができず、滞ってしまっていた、なので「すみません」としか言えなかったと想像することもできます。雑談にも乗ってこないのは上司が怖いのか、話したくないのか……、いずれにせよあまり関係性がよくないことも想像できます。
上司Aさんと新人Bさんは普段どのぐらいのコミュニケーション量があるのでしょうか。また、会話の内容も、仕事についてだけなのか、仕事以外の話もしているのか、ざっくばらんに話せているのか、質も気になるところです。ケースの例でいうと3カ月もの間、新人はぎこちない、落ち着かない様子で過ごしていたのかもしれません。
普段から気さくに話せていれば、相談も持ちかけやすいはずです。昨今は、プライベートの話をどこまでするのか、踏み込みすぎてもハラスメントになりかねない……など難しい側面もありますが、できるだけ早い段階で新人が安心できる関係性を作っておきたいものです。

下線④ 遅刻や寝坊はわかりやすいサイン
遅刻、寝坊、欠勤などは状態を確認する目安にもなります。ケースでは「休みや寝坊が増えたようだ……」と印象でしか語っておらず、様子をしっかりつかめていないのでは、とも思わせます。
休みあけの始業が遅い、特定の曜日に休む……など特定のパターンがあるかもしれません。タイムカードなど時間がわかるものがあれば、さかのぼって確認してみると、何か手がかりがつかめるかもしれません。

まとめ
このケースの上司をみていると、新人の様子を遠巻きに見ていて、具体的な事実をあまりつかめていない様子がうかがえます。
ふだんからの心がけとして先ずは、距離を縮めて、信頼関係を構築するところがスタートかもしれません。またこのタイミングになると、新人はおいそれと心を開いてくれそうにもありません。先輩社員や同期社員など周囲から情報収集を得て、先ずは状況を把握することが必要と思います。

ケースについて考える ケース②

ケース②
直属上司Cさんに新人Dさんに対する印象をききました。
新人Dさんはここのところ、態度が少し反抗的に感じ気になっています。①同期入社の新人にも会社への不平・不満をもらしているようです。先日資料づくりを依頼したけれどなかなか仕上がってこず、「あの資料どうなったの?」と尋ねると②「この仕事って自分がやる意味ってありますか?」と質問を投げかけられてしまいました。今の新人が考えることに応えるのは難しいな……と感じていました。半年経ったころ、Dさんは③何の前ぶれもなく突然辞めてしまいました。

下線① 情報の収集と不平・不満への対応
ケース①に比べ、上司Cさんは社内に情報ネットワークを持ち、部下の行動の様子はつかめているようです。そこまではよしとして、不平・不満の内容が気になります。解消できることであれば解消した方がいいですし、解消できないことであっても解釈を変えて捉えることはできるので、そこを促すのも1つかもしれません。何か誤解があるなら説いた方がいいでしょう。
不平や不満を上司に直接言ってもらえたら、それこそ関係性ができていて、尚のこと可です。このケースでは直接は聞けていないので、何か別の話題の際にでもヒントになるようなことを伝えてみるのも良いかもしれません。

下線② 意味・価値問題
今の新人の多くは「取り組むことに意味や価値がある」ことを重視しています。一方、多くの上司の方が該当するであろう世代は、「やれといったらやれ!」と言われて育ってきていますから、先ずは動く、意味・価値など考えたことなどなかった、という方も多いのではないでしょうか。この点については自分たちと新人は感覚が異なるのだということを肝に銘じ、仕事を割り当てるときは、単に指示をするだけでなく、その仕事の意味・意義をあわせて伝える、期待を伝えるといったことを強く意識する必要があるかと思います。

下線➂ 前触れはなかったのか
「何の前触れもなく」とありますが、本当に前触れはなかったのでしょうか。ケース①でも書きましたが、寝坊、遅刻、欠勤は増えていなかったでしょうか。また下線①も不平・不満をもっているのですから、予兆の1つでもあります。

関わり方のヒント

弊社トランジションモデルでは成長のために、周囲が関わって「抑える行動」、「伸ばす行動」、また、うまく成長が進んでいないときの様子を「トランジションを乗り越えられないと」、成長がうまくいっているときに見える行動を「出口のサイン」として整理しています。

これを目安に新人の皆さんに関わってみてはいかがでしょうか。

抑える行動
☐事実や意図を確認せず、わかったつもりで行動する
☐必要なことは教えてくれるもの、与えられるものという待ちの姿勢でいる
☐相手の期待を考えず、自分の満足や納得、好き嫌いを基準にして行動する
☐すべてメールで解決しようとする
☐周囲に頼らずに一人で進めようとする/自分が「できる人材」であることを証明しようとする

伸ばす行動
☐事実と意見を分けて伝える
☐自分から周囲にフィードバックを求め、素直に取り込んだり、学ぼうとする
☐自分の言動が相手にどう伝わるかを意識する
☐関係者(相手)の立場にたって考える
☐顧客への提供価値を考える
☐結果を出す、責任を果たすことにこだわる(成果意識)

トランジションを乗り越えられないと…
●周囲となじめず職場で発言できなくなる
●聞きたいことがあっても怖いと思って黙る
●指示内容を誤解したまま進めて間違った結果に終わる
●周囲に相談できずに仕事が納期に間に合わない
●指示されても、自分が納得できないことはやらない
●できないことがあると他者や環境のせいにする
●目標に到達できなくても自分の責任ではないと思っている
●同期と固まって愚痴ばかり言う
●何度も同じ過ちを繰り返す

トランジションの出口のサイン
☐仕事の流れや意味を理解できる
☐職場のメンバーの名前を覚えて話せる
☐素直に自分の思ったことを発言できる
☐お客様のためにということに、気恥ずかしさを覚えなくなる
☐相手から質問されていることの意味がわかる
☐やらされ感が減り、自分の考えをもって相談できる
☐先輩の動向に目がいく。学べるものを学ぼうとする

【出典:リクルートマネジメントソリューションズ『トランジションデザインブック2.0』】

次回は中堅・中堅リーダーについてご一緒に考えてみたいと思います。