任せて育てる!部下に「権限委譲」するコツ②【令和の管理職に求められる“マネジメントスキル” Vol.6】
この連載では、リーダーシップやコミュニケーション力向上の研修を提供する当社が、「令和の管理職」に求められるマネジメントスキルを解説しています。最終回では、第5回に引き続き、「適切な権限委譲(仕事を任せる力)」をテーマに、理想的な部下への権限委譲の進め方と、その過程で部下に行うフォローアップのポイントなどを紹介します。
部下がうれしい、誇らしい!と感じる「権限委譲」の進め方
第5回では、昨今の社会環境や労働市場の変化を背景に、企業の管理職が「適切な権限委譲(仕事を任せる力)」の重要性について解説しました。また、チームの生産性を高め、部下のスキルも飛躍的に向上できる理想の権限委譲とは、部下が仕事を任されて「うれしい」「誇らしい」と感じる状態「代理(deputizing)」において生み出されるという点についてもお話ししました。
このような状態は、単純に任せたい仕事を丸投げしたり、最初から最初まで細かく仕事を教えたりする方法では生み出すことはできません。権限委譲を通じて部下に「うれしい」「誇らしい」と感じてもらうためには、2つの大きなポイントを押さえて権限委譲を進めていくことが重要です。
ポイント① 綿密な計画を組み、部下の「うれしい」を生む
部下が仕事を任されて「うれしい」と感じるためには、任された仕事が自分自身で遂行できる範囲であることや、「いつか挑戦してみたい」と思っていた仕事であること、そして、その仕事を自分に任される理由を明確に理解できていることが肝になります。そのため管理職は、権限委譲でこのような状態を作るために、綿密な計画を立てることが不可欠です。
〈適切な人物選定を行う〉
計画の段階では、まず「だれに仕事を任せるか」を検討します。最初に、部下をA、B、Cの3つのレベルに分類し、任せたい仕事に対し高い成果を期待できる部下をA、努力次第で成果を出せる部下をB、努力しても成果を出すのが難しい部下をCとし、その評価を「/」の左側に記入します。次に、その部下がどの程度フォローを必要とするかをA、B、Cで分類します。フォロー不要で成果を出せる場合はA、フォローがあれば成果を出せる場合はB、フォローをしても成果が期待できない場合はCと、その評価を「/」の右側に記入します。
権限委譲は、「A/A」「A/B」「B/A」「B/B」と分類された部下に焦点を当てます。「C/C」の部下に権限委譲を行った場合、部下の自己肯定感やモチベーションが低下してしまうリスクがあります。
仕事を任せる部下を選定したら、任せる仕事とその意図を明確に言語化します。顧客管理や新規開拓、マーケティング戦略立案などカテゴリー別に業務をリスト化し、それぞれに必要な知識や経験、スキル、部下に渡す裁量や意思決定の範囲も明確にします。
加えてこの段階で、部下が今後どのようなキャリアアップを望み、どんなスキルを磨いて成長したいのか、また部下の強みと任せる仕事をマッチさせておくことが大切です。第2回・第3回・第4回で紹介した対話力や強みの活かし方を踏まえた、日頃のマネジメントで得た部下への理解を活かしましょう。
〈部下との相互理解+期待をかける〉
権限委譲を行う部下が決まったら、権限委譲への理解を相互に深めるミーティングを行います。権限委譲の計画に沿って、管理職から部下に、なぜ今この業務を任せたいのか、任せられた部下が得られる経験やスキルを丁寧に伝え、ステップアップの機会であるとことを理解してもらいます。この時、第2回で紹介した「マジックフォーミュラ」の話し方を使って、自分の過去経験やエピソードを交えながら、部下に期待していること(動いてほしいこと)を伝えてもよいでしょう。
そして同時に、フォローアップの流れを部下と一緒に設定します。裁量の範囲を明確に共有し、定期的な進捗報告のタイミングも決めておきます。こうした事前の相互理解によって、部下が自分への期待と安心感の実感からうれしいという感情が生まれ、権限委譲へのモチベーションが高まりやすくなります。
ポイント② 適切なフォローアップで、部下の「誇り」を生む
部下を巻き込み、綿密に計画が立てられたら、権限委譲を実行していきます。計画の段階で検討した定期的なミーティングや進捗報告などのフォローアップを通じて、進行状況の確認や問題点を解決していきますが、このフォローアップが部下の「誇り」を育む重要な手段となります。
〈フォローアップで部下の責任感を生む〉
部下に権限委譲に対する「誇り」を持ってもらうには、裁量のある仕事を任せるだけでなく、責任感を強く感じてもらうことが重要です。部下が責任感を持ち、主体的に意思決定を行える状態はモチベーションに直結します。
部下に「責任感」を持ってもらうためには、経営者の関わり方がポイントとなります。基本的には初めに合意した計画の進捗確認やフォロー以上には介入せず、業務がうまく進まず、部下にモチベーションが下がっているときにだけ介入して引き上げることが有効です。
部下に対し、「あれはできている?」「これは大丈夫だった?」と、部下から求められていない状況で、細かい部分まで介入すると、部下は任せられている感覚を得られず「責任感」が生まれません。
「モチベーションが下がっているとき」が分かりにくい場合は、ポイント①のフォローアップ計画の段階で、部下と一緒にモチベーション低下につながり得るシチュエーションを事前に洗い出しておくとよいでしょう。あらかじめ兆しや原因を共有しておくことで、早期の気づきや適切なフォローがしやすくなり、部下も安心して業務に取り組めるようになります。
〈裁量を曖昧にせず、「決めるのはあなたです」と伝える〉
フォローアップの段階では、部下から意思決定を求められる場面も多くあります。アドバイスをすること自体は良いのですが、任せた以上、最終的な意思決定は部下に委ねることが大切です。「最後に決めるのはあなたです」と伝えるコミュニケーションを心がけましょう。権限委譲がうまくいかない例として、権限を渡したにもかかわらず、問題が発生すると経営者や上司が業務を引き取ってしまうケースがあります。この状態では部下は「これは自分の仕事ではなく上司の仕事だ」と感じ、責任感を持つことができません。
さいごに
本連載では、令和の管理職に求められる3つのマネジメントスキルについて解説してきました。管理職が対話力(第2回)、強みを活かすチームビルディング力(第3回・第4回)、権限委譲(第5回・第6回)を適切に身に付けることができれば、企業の成長促進はもちろん、人材育成や社員のエンゲージメント向上にもつながります。
管理職のマネジメントスキルの向上は、個々の管理職の働きやすさを高めるだけでなく、企業を継続的に成長させるための重要な人事課題の一つです。本連載で紹介したノウハウが、管理職の皆さま、そして人事施策に少しでもお役立ていただければ幸いです。








