広告掲載について オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

外国人採用で失敗しないために押さえるべきポイント【「人手不足時代の新・採用戦略」──外国人材活用のリアルな手引き Vol.4】

2026.09.24
  • ツイート
  • はてなブックマーク
  • クリップしました

    マイページで確認できます

外国人採用の失敗パターンは、実はおおむね共通しています。うまくいかなかった企業の多くは、特別に不運だったわけでも、外国人材そのものに問題があったわけでもありません。つまずく場所は、だいたい決まっています。裏を返せば、事前に知っておけば避けられるということです。本稿では、起こりがちな5つの失敗パターンと、その根本にある原因、そして採用前に打てる対策までを整理します。

【過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回

外国人採用で起こりがちな5つの失敗パターン

まず、実際の相談の現場でよく見聞きする失敗を5つ挙げます。どれも特殊な例ではなく、「自社にも起こり得ること」として読んでみてください。先に申し上げると、いずれも大がかりな対策が必要なものではなく、採用前のちょっとした準備で避けられるものです。

① 労働条件や業務内容の認識違い
基本給や残業代、賞与の説明があいまいなまま入社に至り、「聞いていた話と違う」という不信感から退職につながるパターンです。ズレが生じるのはお金の話だけではありません。どんな仕事をどこまで任せるのかの説明が曖昧だと、本人が思い描いていた仕事と実際の業務が食い違い、早期離職の引き金になります。手当や控除の仕組み、社宅・家賃補助といった住まいに関わる条件、任せる業務の範囲まで、入社前にすり合わせておくことが必要です。母国と日本では給与の慣行が異なることも多く、「額面と手取りの差」への理解のズレも、想像以上に大きな不満の種になります。

② 「日本語ができる=すぐなじめる」という思い込み
日本語能力試験のN1・N2を持っているのに現場でうまくいかない——実はよくある話です。ただし、本人の能力の問題ではありません。資格が示すのは読解や聴解の力であって、報告・連絡・相談や「言わなくても察する」といった日本独特の職場慣習への慣れまでは測れず、適応の早さには個人差があります。また、母国で日本語を学んできた人材は、文法を理解していても「生きた日本語」の経験が少なく、話すスピードや省略の多い口語に最初は戸惑いがちです。もっともこれは実践のなかで早々に解消していくものですし、受け入れ側も「短い文で伝える」「理解したか一言確認する」といったちょっとした心がけで大きく補えます。特別な研修や体制がなくても、今日から始められることです。

③ 「人手不足の穴埋め」としてだけの採用
目先の欠員を埋めることだけを目的に採用すると、本人への期待や育成の視点が抜け落ち、帰属意識が育たないまま短期離職に至ります。1人が辞めては、また欠員補充の採用を繰り返す——という悪循環に陥るのがこのパターンです。

④ 相談先がなく孤立させてしまう
仕事や生活への不満・不安は、ネガティブな内容であるほど職場の上司には相談しにくいものです。打ち明けられる相手が社内におらず、不調が誰にも見えないまま、ある日突然の退職につながります。これも本人の問題ではなく、相談の経路を採用前に設計していなかったことが原因です。

⑤ 受け入れを1人の担当者に丸投げしてしまう
「英語ができるから」「面倒見がいいから」と、特定の社員に業務指導から生活相談までを一任するパターンです。担当者の負担が限界を超えて、外国人材本人より先に疲弊してしまう。あるいは、その社員の異動や退職とともに受け入れ体制ごと崩壊してしまう。外国人材の側から見ても、「その人にしか聞けない」状態は、相性が合わないときや言いにくいことがあるときの逃げ場を失わせます。

失敗の多くは「準備不足」から起きる

5つのパターンは、一見バラバラの不運に見えます。しかし根本をたどると、3つの「設計不足」に行き着きます。

1つ目は、目的の設計不足です。何のために採用するのかが「欠員」で止まっていると、人選の基準も、任せる仕事も、処遇もすべてがぶれます(③)。2つ目は、すり合わせの設計不足です。採用の過程で何を確認し、何を伝えるか、入社後にどう歩み寄るかが場当たりだと、条件面の認識違いや「日本語ができれば大丈夫」という思い込みによるすれ違いが起こります(①②)。3つ目は、体制の設計不足です。入社後に誰が何を支えるのかを採用前に描いていないと、孤立や担当者への丸投げが生まれます(④⑤)。

言い換えれば、失敗の原因は外国人材の側ではなく、採用する側の「設計」にあります。そしてこれは、朗報でもあります。設計の問題は、採用前に手を打てるからです。

1. 採用前に見落としがちなポイント
5つのパターンを裏返すと、そのまま採用前のチェック観点になります。

【表1】採用前に確認したい5つの観点

すべてに完璧な答えを持っている必要はありません。大切なのは、検討の段階でこの5つを一度立ち止まって考えたかどうかです。「考えたことがなかった」観点が見つかったなら、今のうちに気づけた分、失敗の芽を1つ減らせたということです。

失敗を避けるための事前対策

最後に、5つの観点への具体的な打ち手を整理します。いずれも、特別な投資や専任者を必要とするものではありません。

第一に、採用基準の明確化です。「N1だから大丈夫」ではなく、担当してもらう業務にどの水準のコミュニケーションが必要かを定義し、日本語力・スキル・人柄の優先順位を決めておきます。そのうえで、日本の職場慣習には慣れていない場合もあると想定しておけば、語学資格への過度な期待も、現場の落胆も防げます。面接で完全に見極めることは難しいものの、日本語の級だけでなく、これまでの就労経験や、相手の立場に立って物事を考えられるかといった姿勢面に目を向けることも、ミスマッチを減らす手がかりになります。あわせて、あいまいな表現を避けて短い文で伝える、理解したかを一言確認する——いわゆる「やさしい日本語」の心がけがあれば、言葉のギャップの多くは埋められます。

第二に、条件と業務内容のすり合わせです。給与や手当、控除といった条件面の細かな説明は、外国人採用に慣れた紹介会社や支援機関が担うのが一般的です。だからこそ、条件を書面で丁寧に説明し、本人が理解したかの確認までしてくれる会社を選ぶことが、企業側にできる確かな予防策になります。一方で、任せる業務の内容や範囲は、自社にしか説明できません。どんな仕事をどこまで任せるのかを、面接の場で具体的に伝えられるよう準備しておきましょう。この2つがそろって、入社後の信頼関係の土台ができます。

第三に、受け入れの分担体制をあらかじめ決めておくことです。1人の万能な担当者に頼るのではなく、業務面は現場の先輩、キャリア面は上司、在留資格の管理・更新や行政への届出といった手続き・生活面は総務・人事——という3方向の分担にします。担当の属人化を防げるうえ、本人にとっても「何を誰に相談すればいいか」が明確になります。加えて、社外に中立的な相談先を用意しておけば、社内には言いにくい本音の受け皿になります。

【図2】受け入れ体制の分担モデル(筆者作成)

そして、最初から大人数を受け入れるのではなく、少人数から始めることです。ただし、1人だけの採用は本人が社内で孤立しやすいという難点もあります。同時期に2〜3人など、本人同士が支え合える人数で始め、そこで見えた課題を仕組みに反映しながら体制を整えていく——という進め方が現実的です。

ここまでの対策で、失敗の芽の多くは採用前に摘むことができます。ただし、採用はゴールではなくスタートです。入社した人材に長く活躍してもらえるかどうかは、入社後の職場づくりにかかっています。次回は、外国人材が3年・5年と定着していく企業が実践している、職場づくりのポイントを解説します。