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オンボーディングのプロセスと支援【知ってるつもり?職場の定番施策再入門 Vol.4】

2026.09.02
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「採用した社員がなかなか戦力化しない」「入社後早い時期に離職してしまう」。こうした悩みは、多くの職場で聞かれます。その解決策として注目されているのが「オンボーディング」です。オンボーディングは短期間のイベントではなく、新しく組織に加わった人が力を発揮できるようになるための中長期的な支援のプロセスです。改めて、その本質を考えてみましょう。

【過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、新たに組織へ加わった入社者が、仕事や職場に適応し、早期に活躍できるようになるよう支援する一連の取り組みを指します。

オンボーディングの目的は、単に仕事に必要な知識を覚えてもらうことだけではありません。組織への理解を深め、自分の役割を明確にし、周囲と協力しながら成果を出せる状態をつくることです。その結果として、仕事への自信やエンゲージメントが高まり、定着や活躍につながります。オンボーディングを中長期的な支援のプロセスとして捉え、入社者が時間の経過とともに直面する課題や心理状態が変化することを前提に、その変化に応じて内容も変えていくという姿勢が大切となります。

オンボーディングがうまくいかない理由

オンボーディングがうまく機能しない職場や組織には、共通したパターンがあります。それは、新たに組織へ加わった入社者がどの時期にどのような壁にぶつかるのか、それぞれの時期でどのような気持ちになりやすく、何に困ることが多いのかを、受け入れる側が十分に理解できていないことです。

上司や先輩・同僚は、どうしても自分自身の経験を基準に物事を考えてしまうため、新卒入社者については最近の若手社員の気持ちや考え方を理解することが難しく、また、キャリア入社者については、転職して新たな組織で働く人の気持ちや困りごとを想像することが難しいものです。だからこそ、入社者がその時々で直面しやすい課題や心理状態を理解し、それに応じた支援や関わりを行っていくことが重要となります。

オンボーディングの実践のポイント

入社者が仕事や組織に適応していくプロセスを理解する

オンボーディングを効果的に進めるためには、自社の入社者が「いつ」「どのような壁」に直面し、その時々でどのような支援やフォローを必要としているのかを、あらかじめ把握しておくことがポイントとなります。

本稿では、これまでの調査・研究で明らかになっている知見をもとに、新卒入社者、キャリア入社者が入社後にたどる、一般的な仕事や組織への適応プロセスについて紹介します。

1)新卒入社者の場合
新卒入社者が仕事や組織に適応していくプロセスは、図1のように大きく3つの段階に分けて考えることができます。このうち、特に重要なのが入社後約2年間にあたる最初の2つの段階です。

まず、「立ち上がり期(前期)」は、導入研修を終えて現場に配属されてからの約半年間の頃です。新卒入社者にとって、環境の変化が最も大きく、不安や緊張を感じやすい時期であり、業務を教えること以上に、「安心して質問・相談できる関係づくり」が重要となります。上司や先輩・同僚は、業務の指示を出すだけでなく、「困っていることはない?」「気になっていることはある?」と定期的に声をかけ、小さな不安やつまずきを早い段階で把握し、必要な支援につなげることが大切です。

またこの時期、新卒入社者は、マニュアルには書かれていない自組織における物事の判断基準やコミュニケーションの取り方に戸惑うことが少なくありません。そのため、「何をするか」だけでなく、「なぜそのやり方なのか」「どのような狙いがあるのか」といった背景や意図まで伝えることで仕事への理解が深まり、組織への適応も進みます。

次の「立ち上がり期(後期)」は、配属から約半年後から2年目の終わり頃までを指します。この段階では、上司は仕事を任せるだけでなく、「会社にとってどのような意味があるのか」「顧客に対してどのような価値を提供しているのか」といった目的や背景を繰り返し伝えることが大切です。日々の業務が組織全体の目標や顧客への価値提供とどのようにつながっているかを理解できるようになると、仕事への納得感や主体性が高まります。

また、経験から学ぶ習慣を身に付けられるような支援も重要です。仕事に一つの区切りがついたタイミングで、「うまくいった(いかなかった)要因は何だったか」「この経験を通じてどのような力が身に付いたか」「次の目標として何に挑戦したいか」といった振り返りの機会を設けます。

仕事の過程で生じた自分自身の成長に目を向けさせることで、経験を単なる経験のままで終わらせず、「目標を立てる→実践する→振り返る(成長を実感)→次の目標を立てる」というサイクルを本人が自分で回していくための支援を行うことがポイントとなります。


<図1>
新卒入社者の一般的なオンボーディング・プロセス(仕事・組織への適応)

2)キャリア入社者の場合
キャリア入社者が新しい仕事や組織に適応していくプロセスも、図2のように大きく3つの段階に分けることができます。なかでも重要なのは、入社後約2年間にあたる最初の2つの段階です。第1段階は、入社後半年から1年頃の「職務への適応と成功体験を積む時期」、第2段階は、入社後1~2年頃の「適応中期の壁を乗り越え、リーダー的な役割を担う時期」です。

第1段階で最も重要なのは、できるだけ早い時期に仕事で成功体験を積めるよう支援することです。キャリア入社者にとって、新しい職場に適応することは決して容易ではありません。一定の成果をあげて周囲から信頼や評価を得るまでは、自分の居場所を見出しにくく、不安を感じやすい状況に置かれます。だからこそ、この時期には、上司が本人の強みやこれまでの経験を生かせる仕事を早い段階で任せ、成功を実感できる機会を意識的につくることが重要です。

「さすがですね」「お願いしてよかった」といった周囲からの評価を得られる経験は、「職場の一員として受け入れられた」「信頼される存在になれた」という実感につながります。こうした実感は、新しい職場への適応を促進し、その後の活躍の土台となります。

一方で、多くの企業で見落とされているのが第2段階の「適応中期の壁」です。この時期になるとキャリア入社者はリーダーやサブリーダーなど一段上の役割を担うようになることが多いです。本人にとっては最も適応に苦労しやすい時期なのですが、周囲は「もう職場に馴染んだから大丈夫だろう」と考えてしまいがちで、本人が感じている負担との間にギャップが生じることが少なくありません。

上司としては、仕事の成果だけに目を向けるのではなく、定期的な面談などを通じて「今、どのようなことで悩んでいるのか」「どのような支援があれば力を発揮しやすくなるのか」といった点について本人と会話をすることが求められます。また、社内の暗黙のルールや意思決定の進め方を伝えたり、仕事を進めるうえで重要となるキーパーソンとの接点をつくったりするなど、新たな役割を円滑に果たせるよう支援することも大切です。この「適応中期の壁」を乗り越えられるかどうかが、キャリア入社者が組織の中核人材として活躍できるかを左右する重要なポイントとなります。

<図2>
キャリア入社者の一般的なオンボーディング・プロセス(仕事・組織への適応)

まとめ

オンボーディングは、単なる「新しい人を迎える施策」ではありません。「新しい人が組織の中で活躍できるようになるまで伴走する支援のプロセス」です。オンボーディングを人材が組織の中で活躍し続けるための基盤づくりとして位置づけることが、これからの人材マネジメントにおいてますます重要になっていくでしょう。