採用市場を広げる選択肢としての外国人採用とは【「人手不足時代の新・採用戦略」──外国人材活用のリアルな手引き Vol.3】
「求人を出しても応募が来ない」——前回まで見てきたとおり、その原因は個社の努力不足ではなく、国内の採用市場そのものの構造変化にあります。そして、国内人材の「取り合い」から抜け出すために必要なのは、採用市場そのものを広げる視点だとお伝えしました。本稿では、その具体的な選択肢である外国人採用について、メリット・デメリットと向き不向きを冷静に整理します。推奨ありきではなく、自社で導入すべきかどうかを判断するための材料としてお読みください。
なぜ外国人採用が注目されているのか
国内の生産年齢人口が減り続けるなか、企業はこれまで女性やシニアの活用によって働き手を補ってきました。しかし、女性やシニアの就業率はすでに高い水準にあり、国内だけで労働力を上積みできる余地は年々小さくなっています。女性(15〜64歳)の就業率は75.3%と過去最高を更新し、65〜69歳もすでに2人に1人が働いている状態です。65歳以上の就業率は主要国と比べても高い水準にあり、女性・シニアの活用は「これから」ではなく「すでにやり尽くしつつある」段階に来ています。国内市場の延長線上で次の選択肢を探せば、外国人材に行き着くのは、むしろ自然な流れといえるでしょう。
・女性の就業率は、70.6%でOECD諸国のうち13位となっている(2020年)。 OECD諸国の女性就業率の平均は59.0%。
・我が国の65歳以上の高齢者の就業率は、OECD諸国の中でも韓国・アイスランドに次いで高い水準。
実際、数字はその変化をはっきりと示しています。厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1037人と過去最高を更新しました。前年から26万8450人(11.7%)の増加で、10年前と比べると約2.8倍。一時的なブームではなく、日本の労働市場に起きている構造的な変化であることがわかります。
「外国人採用は大企業の話」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実態は逆です。外国人を雇用する事業所は全国に約37万カ所ありますが、その63.1%は従業員30人未満の小規模事業所です。人手不足の影響を最も強く受けている中小企業こそが、すでに外国人採用の主役になっているのです。
国の制度整備も進んでいます。2019年に創設された特定技能制度は対象分野の拡大が続き、技能実習制度は人材育成と長期就労を前提とした「育成就労」制度への移行が決まっています。こうした流れのなかで、外国人材が一時的な働き手としてではなく、腰を据えて長く働けるようにするための制度が段階的に整えられてきています。制度の詳細は本連載の最終回で解説しますが、外国人採用がもはや特別な選択肢ではなくなりつつあることは、まず押さえておきたいポイントです。
外国人採用のメリットとデメリット
では、外国人採用は自社にとって本当に「使える」選択肢なのでしょうか。良い面と注意点の両方を、まず一覧で整理します。
メリットの1つ目は、人材確保の安定性です。採用の母集団が国内の取り合いの外に広がるため応募が集まりやすく、複数名の同時採用や、入社時期から逆算した計画的な採用がしやすくなります。「求人を出しても反応がない」という状態からの、現実的な脱出口になり得ます。
2つ目は、若手を採用できることです。来日して働く外国人材は20代を中心とした若い世代が多く、国内ではもっとも取り合いが激しい年齢層に、別の市場からアプローチできます。
3つ目は、就労意欲の高さです。多くの外国人材は、キャリアアップや収入という明確な目的を持って来日しています。加えて、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」といった就労を目的とする在留資格では、働くことそのものが日本に在留するための前提となります。腰を据えて働き続けることが本人の生活基盤の安定に直結するため、仕事への真剣さが生産性の高さに結びつきやすいのです。
一方で、デメリットも直視する必要があります。1つ目は、言語・文化面のコミュニケーションコストです。日本語のレベルには個人差が大きく、業務指示や安全教育には工夫が求められます。2つ目は、在留資格による制約です。資格ごとに従事できる業務や在留期間が定められており、採用実務は日本人採用より複雑になります。3つ目は、受け入れ体制の負荷です。在留資格の管理や更新、行政への届出・報告といった日本人採用にはない事務コストが発生するほか、在留資格や本人の状況によっては住居の確保など生活面のサポートが必要になる場合もあり、「採って終わり」にはできません。
これらのデメリットは、ゼロにすることはできません。しかし、事前の準備によって小さくすることはできます。この点は次回、詳しく取り上げます。
■どんな企業に向いているのか
メリット・デメリットを踏まえたうえで、外国人採用が向いているのはどのような企業でしょうか。3つの条件を挙げます。
① 構造的な人手不足をすでに抱えている企業
求人を出しても応募がほとんど来ない状態が続いているなら、国内市場の取り合いのなかで消耗し続けるより、市場そのものを広げるほうが合理的です。本連載の第1回・第2回で見てきた状況のただなかにいる企業こそ、検討する価値があります。
② 社内の構造を変えたいと考えている企業
年齢構成の偏りを是正したい、属人化した業務を言語化・マニュアル化したい、教え方や評価の仕組みを見直したい——。外国人に業務を教えるには業務の言語化が不可欠ですが、その準備は日本人の新人育成にもそのまま活きます。外国人採用を単なる欠員補充ではなく「組織を変える投資」と捉えられる企業は、得られるものが大きいはずです。
③ 変化をいとわないマネジメント姿勢がある企業
前回、「社内に前例がない」「新しい手法への不安がある」という理由で従来の採用手法から抜け出せない企業心理に触れました。言語や文化の違いをトラブルの種ではなく組織が学ぶ機会と捉え、完璧な準備が整うのを待つのではなく、走りながら体制を整えていく柔軟さがあるか。この姿勢の差が、結果を分けます。
逆に、外国人材を「安い労働力」と捉えている場合や、目先の欠員を埋めることだけが目的の場合は、ミスマッチが起きやすくなります。
導入判断で押さえるべきポイント
最後に、導入を判断する際に押さえておきたいポイントを整理します。
まず、「やるか・やらないか」の前に、「何のために採用するのか」を明確にすることです。目先の欠員補充なのか、中長期の人員構成づくりなのか。目的が曖昧なまま始めると、採用手法の選択も受け入れ準備も、すべてがぶれてしまいます。
次に、採用後から逆算して計画することです。入社後には、在留資格に関わる手続きや行政への届出、場合によっては住居の手配など、日本人採用にはない準備が発生します。採用が決まってから慌てて考えるのではなく、検討段階で洗い出しておくことが、失敗を防ぐ第一歩です。最初から大人数を受け入れるのではなく、まず1人から小さく始めて、学びながら体制を整えていく進め方も現実的です。
強調しておきたいのは、外国人採用は人手不足の万能薬ではないということです。採用しただけで問題が解決するわけではなく、準備不足のまま進めれば、日本人採用と同じ——あるいはそれ以上の——ミスマッチが起こります。ただし、外国人採用の失敗パターンはおおむね共通しており、事前に知っておけば避けられるものがほとんどです。次回は、導入企業が見落としがちなポイントと、失敗しないための事前準備について、具体的に解説します。










