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なぜ採用しても人が集まらない?採用市場から見る人手不足の正体【「人手不足時代の新・採用戦略」──外国人材活用のリアルな手引き Vol.1】

2026.06.19
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「求人を出しても応募が来ない」「採用コストばかり膨らむ」——そんな悩みを抱えていませんか? かつて日本では、求人広告を出せば応募が集まる時代が長く続きました。一時的に人手不足が生じることはあっても、景気の波とともに調整されるのが常でした。しかし今の状況はまったく異なります。景気の良し悪しに関わらず恒常的に人手不足が続く——その背景にあるのは、人口減少という不可逆的な構造変化です。求人を出しても人が集まらない理由、そしてこれからの採用に何が求められるのか。本記事では、採用市場で何が起きているのか、その「人手不足の正体」をわかりやすく解説します。

採用しても人が集まらない企業が増えている理由

かつての人手不足は、景気変動によって生じる一時的なものでした。景気が過熱すれば求人が増え、落ち着けば調整される——それが長らくの常識でした。しかし今は違います。景気の動向に関係なく、生産年齢人口の減少という構造変化によって「売り手市場」が固定化しているのです。背景には、労働市場全体の需給バランスの変化、採用コストの高騰、そして企業規模による格差拡大など、複数の要因が複雑に絡み合っています。ここでは、その実態を3つの視点から整理します。

・応募ゼロは自社だけの問題ではない
帝国データバンクが2025年1月に実施した調査によると、正社員の不足を感じている企業は53.4%にのぼり、コロナ禍以降で最も深刻な水準に達しています。非正社員でも30.6%が不足を訴えており、業種・規模を問わず採用に苦戦する企業が増えているのが現状です。「うちだけかな」と感じている方も多いかもしれませんが、応募ゼロという状況は、自社の魅力不足だけが原因ではありません。日本全体の労働市場の構造変化と密接に結びついているのです。

・有効求人倍率1.25倍が示す売り手市場
厚生労働省の発表によれば、2024年平均の有効求人倍率は1.25倍。求職者1人に対して1.25件の求人がある状態が続いています。数値が1を上回るということは、求人数が求職者数を超えている状態です。つまり、企業が人を選ぶのではなく、求職者が企業を選ぶ「売り手市場」が定着しているのです。人口減少や産業構造の変化といったマクロ要因に加え、こうした需給バランスの偏りが採用現場に直接影響している点を押さえておく必要があります。

・採用単価高騰と中小企業の二重苦
応募が来ないだけでなく、一人を採用するコストも年々膨らんでいます。求職者が複数の企業を比較する時代となり、求人媒体の掲載強化やスカウト送信、紹介手数料といった支出が一社あたりで重なるためです。人手不足を原因とした倒産は2024年に342件と2年連続で過去最多を更新。加えて「初任給30万円時代」と言われるなか、知名度・賃金・福利厚生の3面で大企業に劣る中小企業は、応募の入口から選ばれにくくなっています。応募数の減少とコスト増が同時に進行することが、採用難をより根深い問題にしているのです。

採用市場はどう変化してきたのか

採用市場は、この20〜30年で大きく変容しました。かつての採用は「日本人・若年層を中心に、求人広告を出せば応募が来る」という前提で成立していました。高卒・大卒の一括採用が主流で、ハローワークや紙媒体の求人誌に掲載するだけで一定数が集まる時代が長く続いたのです。しかし今、その前提はことごとく崩れています。「昔と同じ採用が通用しない」背景には、3つの大きな変化があります。

・生産年齢人口の長期的減少トレンド
働き手そのものが減り続けているという事実は避けて通れません。総務省によれば、15〜64歳の生産年齢人口は2020年の7341万人から2025年には7085万人へと約256万人縮小する見込みです。2026年には65歳以上の高齢者が人口の約3割を占めると指摘されており、働き手が減る一方で支えられる側が増えていく構図が続きます。つまり、いくら採用手法を磨いても、母集団となる労働力そのものが縮んでいくため、従来型の求人だけでは人を集めにくい時代に入っているのです。


・業界・地域で深刻度が異なる人材偏在
人手不足と一口に言っても、その深刻度は業界・地域によって大きく異なります。建設業では就業者が1997年比で約30%減少し、55歳以上が36%を占める一方で29歳以下は12%のみと、技能継承の担い手が枯渇しつつあります。介護分野は2025年時点で約32万人不足、物流では2030年に必要輸送力の3分の1が確保できなくなる見込みです。さらに若年層は東京圏など大都市に集中しており、地方・中小企業は「人材の絶対数の減少」と「都市への流出」という二重の壁に直面しています。業種ごとに「なぜ足りないのか」の構造が異なるため、自社が置かれている状況を正確に把握したうえで対策を考えることが欠かせません。

・求職者主導へ変わった選考のルール
かつての採用活動は、企業が応募者を選別する場でした。しかし今では、口コミサイトやSNSで給与・残業・職場の雰囲気まで応募前に把握できる時代となり、求職者が複数の内定を比較して自分に合った企業を見極める側に立っています。企業側の「見せ方」だけでは通用しなくなり、実態の伴った情報発信と迅速な対応が欠かせません。また一次面接から内定まで数日で決める企業が増え、悠長に検討していると他社に先を越されます。選考プロセスのスピードと質、どちらも問われる時代になっています。「昔の採用のやり方」が通用しなくなった理由はここにあります。

「人手不足」と「採用難」は何が違うのか

「人手不足」と「採用難」——この2つの言葉を同じ意味で使っていませんか? 実は両者は性質がまったく異なり、混同したまま対策を打つと、採用予算をいくらかけても成果につながりにくくなります。人手不足の原因を正しく見極めるには、まずこの違いを理解しておくことが欠かせません。それぞれの本質と打ち手の方向性を整理しておきましょう。

・人手不足は社会全体の供給問題
「応募が来ない」と頭を抱える前に、まず押さえておきたい前提があります。人手不足の本質は、個別企業の努力不足ではありません。日本の生産年齢人口が1995年をピークに減り続け、社会全体の労働力供給そのものが細っているという現実があります。働き手という「パイ」自体が年々小さくなっているため、どの企業も同じ限られた人材を奪い合う構図に置かれているのです。2035年には約384万人の人手不足が発生すると推計されており、一企業の採用テクニックで解決できる範囲を超えた、社会構造に根ざした問題として捉える必要があります。

・採用難は自社固有のミスマッチ
一方、同じ売り手市場でも応募が集まる企業と集まらない企業が存在します。採用難は自社の条件設定・情報発信・選考プロセスのどこかに起きているズレに起因する、個別企業ごとの課題です。例えば、求人票の仕事内容が抽象的で1日の働き方が見えない、給与レンジが幅広すぎてモデル年収が伝わらない、面接日程の調整に時間がかかり応募者が他社へ流れてしまう——こうした改善余地のある要因が多く含まれています。人手不足という社会要因と切り離し、自社のミスマッチの所在を冷静に洗い出すことが、採用難を抜け出す第一歩になります。

・2つを切り分けることが打ち手の出発点
「人手不足」には採用ターゲットの拡大(シニア・女性・外国人材など)や業務の自動化、アウトソーシングといった、母集団の枠を広げる打ち手が有効です。「採用難」には求人票の表現見直し、選考スピードの改善、面接の質向上など、自社の内側を磨く施策が効きます。両者を混同して「採用広告をとにかく増やす」だけでは、コストが膨らむばかりで成果につながりません。自社の課題がどちらに寄っているかを冷静に見極め、優先順位をつけて取り組むことが、採用改善の実践的な出発点です。

今後も続く人手不足をどう捉えるべきか

人手不足の原因は、もはや一時的な景気変動では説明しきれません。少子高齢化と生産年齢人口の縮小は今後も続き、2035年には約384万人規模の人手不足が見込まれています。ここで重要なのは、この問題が今後さらに深刻化していくという現実を正確に把握したうえで、「採用のあり方そのものを見直す」という姿勢に切り替えることです。

・短期施策では解決しない構造問題
求人広告の出稿を増やす、紹介会社を増やす、採用単価を引き上げる——こうした短期施策だけでは人手不足の根本には届きません。なぜなら、応募者そのものが社会全体で減り続けているからです。内閣府の推計によれば、生産年齢人口は2070年に2024年比で約38%減少する見通しであり、労働力の母数が縮小していく流れは止まりません。採用費を積み増す前に、業務設計や定着支援、人材源の多様化を含めた構造的な見直しに踏み込む必要があります。「誰に・どう働いてもらうか」を再設計する視点こそが、人手不足を長期的にやわらげる土台になります。

・採用のあり方そのものを問い直すとき
「日本人・若年層を採用する」という従来の前提そのものを問い直す時機が来ています。シニア・女性・外国人材など、これまで採用ターゲットとしてこなかった層へ視野を広げることは、もはや特別な取り組みではなく、採用活動の基本方針になりつつあります。「量で解決する」発想は限界を迎えており、求人広告を増やすだけでは応募数の改善は見込みにくい状況です。誰を・どのように採用し・いかに定着させるか、採用のあり方そのものを根本から見直すことが、これからの企業に求められています。人手不足が「自社だけの問題ではない」という認識を出発点に、採用戦略を再設計していきましょう。次回以降の記事では、その具体的な方向性と手法を掘り下げていきます。