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今更聞けない「働き方改革関連法」の中身について

2019.04.09

 いよいよ4月より「働き方改革関連法」が施工される。企業はその内容に沿って働き方を管理していく必要があるが、具体的にこれまでの法律や働き方と何がどう変わっていくのだろうか。

 ここでは、「働き方改革関連法」の中身と企業がどのような体制をとっていけばいいのかについてを解説していく。内容をコンパクトにまとめているので、まだ把握していない人にはぜひ見てほしい。

 2018年6月29日に「働き方改革関連法」が成立した。働き方改革は「一億総活躍社会を実現するための最大のチャレンジ」と位置付けられ、推進されてきた。少子高齢化による労働人口減少の問題や、長時間労働の常態化、非正規労働者に対する不合理な待遇差など、いたるところで問題が浮き彫りとなっていたのだ。

 その現状を打破し、働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会の実現を目標に、政府主導で「働き方改革」の推進が始まった。以下の章より、「働き方改革関連法」全体のポイントと概要を説明していく。

働き方改革関連法とは

 働き方改革法案は、残業や有給休暇など労働基準法や労働安全衛生法だけでなく、労働契約法改正など働き方や雇用に関する法改正のすべてを指し、その考え方の根底には、以下の3つの柱がある。

・働き方改革の総合的かつ継続的な推進
・長時間労働の是正多様で柔軟な働き方の実現など
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

例えば、この三つの柱だけでも労働時間の見直しや時間外労働の上限を規制、非正規雇用労働者の不合理な待遇差の改善、労働における待遇の説明の義務の強化などが盛り込まれている。 

働き方改革関連法の法改正について

 働き方改革関連法案の内容について具体的に触れていく。要件は全部で8つあり、全てに対応する必要がある。

1.残業時間の上限規制
 残業時間に関して上限規制が設けられた。原則、月45時間かつ年360時間以内と定められた。繁忙期でも単月でも100時間未満、年では720時間以内にしなければならない。原則の45時間を超えられる回数は6回までだ。仮に、超えた場合は罰則がある。
罰則に関しては、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となっている。

2.有給休暇取得の義務化
 年5日の有給休暇を必ず取得させなければならない。

3.産業医の機能性強化(労働時間把握)
 労働時間の管理まで含み、労働者の健康に関して産業医を使用して確保しなければならい。

4.割増賃金率の引き上げ
 月60時間の残業を超えた場合割増賃金の割増率は最低でも50%にしなければならない。

5.勤務間インターバル制度
 勤務終了から次の勤務までに、労働時間以上の休息を取らせなければならない。

6.同一労働・同一賃金の徹底
 非正規労働社と正規労働者の職務内容が同一である場合は、賃金格差があってはならず同一にする必要がある。

7.高度プロフェッショナル制度
 年収が1075万円以上の専門知識を持つ労働者に対して、本人の同意を得た場合、労働時間規制や割増賃金の対象外となる。

8.フレックスタイム制の拡充
 フレックスタイム制が3ヵ月など長期的に行えるようになる。

 働き方改革法案は、労働基準法や労働安全衛生法、パートタイム・有期雇用労働法、労働契約法など非常に幅広い法律がまとめて改正されたものだ。その上で、各企業は各条項に従って、法律に違反しない対応や労働時間の管理に努めなければならない。

働き方改革関連法と企業の取るべき対応について

 企業は大企業と中小企業に分けられるものの、働き方改革関連法案の内容を順守する必要がある。その中でもここでは、残業時間の上限規制、年5日の年次有給休暇、労働時間の管理、同一労働・同一賃金などについて焦点を当て、注意点と対応策を解説する。

■ 残業の上限規制
 特に、時間外労働の上限に関しては、罰則があるため特別条項などの特別な条件があったとしても守らなければならない用件が非常に沢山あると言えるだろう。

 例えば、残業が蔓延している状態で、正確な労働時間の把握と労働時間の短縮を行っていなければ、法律に抵触することになる。

 労働時間に関しては何が罰則にあたるのか、見直した上で必要があれば各業務のフローの刷新や見直しを行い、生産性の向上をはかなければならない。

 罰則に関しては、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となっている。

■ 有給休暇
 働き方改革関連法案における5日の年次有給休暇は、企業側が時期を指定する必要がある。本人の申し出以外の年次有給休暇を会社側が指定しなければならないため、スケジュールの管理を今まで以上に細かく行う必要があると言えるだろう。

 こちらの罰則に関しては、1人につき30万円以下の罰金が科せられる。そのため、企業としてより細かく一人一人の予定を把握しなければならない。

■ 労働時間の客観的な把握
 労働時間の客観的な把握に関しては、高度プロフェッショナル制度の適用者を除き、すべての労働者の労働時間を把握することが義務づけられている。加えて言えば、その労働時間の記録は3年間保存しなければならない。

 また、自己申告制でも構わないものの、適正な申告が必要となり、場合によっては調査が入る場合もある。ちなみに、タイムカードなどの記録だけでなくパソコンの使用時間などにおいても記録として保存しておく必要があることに注意が必要だ。

■ 同一労働・同一賃金
 職務内容に差があれば、明確な区別は必要ないものの、同一業務であれば、働き方改革法案の対象となる。そのため、企業によっては、非正規の労働者の賃金を上げるか、正社員の待遇を下げて非正規と同等にする必要があるだろう。

 また、待遇の説明に関しては、企業側が労働者に対して説明を行う義務がある。手当や基本給、賞与等に至っても同一の扱いをする必要があることに注意が必要だ。

まとめ

 働き方改革法案は、1つの法律だけを改正するものではなく、労働基準法や労働安全衛生法など労働に関する複合的な法案を改正するものだ。労働及び労働者の扱いに関して、企業としての体制を整えなければならないことに加え、全ての企業が対応する必要があり、対応しなければ罰則もある。この記事を参考にして、企業の新しい規則や体制を作っていこう。