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7つのコースを概説!キャリアアップ助成金の受給条件を知ろう

2019.08.29

助成金とは、国や自治体が一定の条件を満たす事業者へ金銭を支給する制度のことを言います。なかでもキャリアアップ助成金は、数ある助成金の中でも特に条件が良く、非正規雇用者の待遇改善に関心を持つ企業にとって調べる価値のある制度でしょう。この記事では、キャリアアップ助成金を受給するための条件についてコースごとに解説します。

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、契約社員やパートタイマーといった非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む事業主を支援する助成金のことを言います。
非正規社員の正社員への転換、賃金の改善、健康診断の導入といった取り組みが評価されると受給することが可能であり、労働者の意欲・能力の向上、事業の生産性向上、優秀な人材の確保に役立つとされています。

キャリアアップ助成金を受給できる全コース共通の条件

キャリアアップ助成金には複数のコースが存在しますが、どのコースに申し込むにあたっても以下の条件を満たしている必要があります。

・雇用保険適用事業所の事業主であること。
・雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること。
・雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること。
・該当するコースの措置に係る対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備している事業主であること。
・キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること。

上記の5点に加えてコースごとの条件を満たしたうえで審査に通れば助成金を受給することができます。
キャリアアップ助成金の審査をクリアするポイントは、キャリアアップ計画を作成し、管理者を任命して期間内に計画を達成することです。キャリアアップ計画は、厚生労働省のホームページから書式をダウンロードして作成することができるので、まず書式をダウンロードすることから始めましょう。

7つのコースの受給条件と受給額

キャリアアップ助成金には7つのコースが用意されています。そこで、以下の段落では7つのコースの受給条件と金額を要約して紹介します。

正社員化コース

正社員化コースは有期契約労働を正規雇用労働者に転換した場合に受給することができます。有期契約労働者とは1年や6ヶ月単位等の期間で労働契約を結んでいる人のことを言い、いわゆる契約社員やパートタイマー、アルバイトなどがこれに当てはまります。

ちなみに受け取れる助成金の金額は雇用形態によって異なります。有期契約から正規雇用に転換した場合、助成金の基本金額は1人あたり57万円です。しかし、雇用期間の定めのない労働契約のことを無期契約と言い、有期契約から無期契約への転換、無期契約から正規雇用への転換の場合に受給できる金額は有期契約から正規雇用に転換した場合の半額の28万5000円となります。

賃金規定等改定コース

有期契約労働者は正社員と比べて給料が低いです。そこで有期契約労働者の基本給の賃金規定を改定して賃金を2%以上増額した場合、賃金規定等改定コースに申し込むことが可能となります。

また、受給額は賃金規定改定の対象者の人数によって変動します。対象者が1~3人の場合は1事業所あたり9万5000円、4~6人の場合は19万円、7~10人の場合は28万5000円、そして11人以上の場合は1人あたり2万8500円が支給されるようになっており、賃金規定を改定する対象者が多ければ多いほど受給額も増える仕組みです。ただ、この例は中小企業で働いている全ての有期雇用労働者の賃金規定を改定した場合の例であり、一部の対象者しか賃金規定を改定しなかった場合は受け取れる金額が半額になるので注意が必要です。

健康診断制度コース

労働者の権利として健康診断を受ける権利がありますが、これは正社員・無期雇用者にしか適用されないことも少なくありません。そこで厚生労働省はパートタイマーなどの有期雇用者に対しても健康診断を行うことを推奨しています。

健康診断制度コースは有期労働者を対象とする法定外の健康診断制度を設け、4人以上に実施した場合に受給できる制度です。ちなみに事業者は労働安全衛生法に基づき、雇入の際や1年以内に1回ずつ健康診断を行うことを義務付けられています。そこで法定外の健康診断とはこの義務以外に独自に設けた健康診断制度のことを指します。

 また、法定外の健康診断を実施した場合に受け取れる基本受給金額は1事業者に対して38万円となっています。

賃金規定等共通化コース

有期契約労働者と正規雇用労働者の賃金規定に差を設け、正規雇用労働者の方が賃金の面で良い待遇を受けている企業は多いです。そこで賃金規定等共通化コースでは、有期契約労働者と正規雇用労働者の賃金規定を共通化し、適用した場合に助成金を受給することができます。

受給できる助成金の基本金額は57万円ですが、最大20人まで共通化した対象労働者が1人増えるごとに基本金額が2万円増えます。また、これ以外にも条件に応じて受給できる金額が増えるので、賃金規定等共通化コースでは最大120万円を受け取ることが可能です。

諸手当制度共通化コース

賃金規定だけでなく、有期契約労働者と正規雇用労働者の間には諸手当の面でも差があることが多いです。諸手当とは賞与・役職手当・食事手当・深夜/休日手当などが該当し、有期契約者と正規雇用労働者の諸手当を共通化して適用することで諸手当制度共通化コースの助成金を受給することができます。

受給できる助成金の金額は1事業所あたり38万円です。そして最大20人まで共通化した対象労働者が1人増えるごとに基本金額1万5000円が加算されます。また、複数の諸手当を共通化した場合、最大10手当まで諸手当1つにつき16万円が加算されることから、この制度では最大276万円を受給することができます。

選択的適用拡大導入時処遇改善コース

元々社会保険に加入するための条件は労働時間が週30時間以上であることでした。しかし、平成28年に社会保険の加入条件に関するルールが改正され、従来の条件に加え、1週間あたりの労働時間が20時間以上であれば学生以外で月収が8万8000円かつ社員数が501人以上の規模の企業で1年以上働く見込みがある人も厚生年金や社会保険に加入できるようになりました。

そこで選択的適用拡大導入時処遇改善コースではこの労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置により、有期契約労働者を被保険者とし、基本給を増額した場合に受給することができます。

 受給できる金額に関しては基本給の増額割合によって変動します。増額した金額が3~5%の場合は1人あたり2万9000円、5~7%の場合は4万7000円、7~10%の場合は6万6000円、10~14%の場合は9万4000円、そして14%以上の場合は13万2000円となっており、1事業所あたり最大45人までなので最大747万円を受け取ることが可能です。

短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者労働時間コースではその名の通り短時間労働者の労働時間を延長した場合に受給することができます。ただ、この場合は受給条件が2つに分かれます。

1つ目の条件は短時間労働者の週所定労働時間を5時間延長し、社会保険を適用した場合であり、1人あたり22万5000円を受給することが可能です。

 2つ目の条件は労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長して社会保険を適用するだけでなく賃金改正コースもしくは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施した場合であり、こちらのケースで受給できる金額は延長した労働時間に応じて変動します。例えば2時間延長した場合の基本金額は一人あたり9万円を受給することが可能です。

 ただ、短時間労働者労働時間延長コースは最大45人まで適用されますが、1つ目の条件を満たすケースと2つ目の条件を満たすケース合わせて45人までというルールなので注意しましょう。