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雇用保険の加入条件とは?基本の3要件や正社員・パートごとの詳細を解説

2019.10.09

雇用保険は加入条件として、働く期間や1週間の所定労働時間などが定められており、要件を満たす場合は事業者が加入の手続きをする必要があります。正社員は原則加入が必須ですが、パートで労働時間が変動的な場合は、ケースごとに加入条件に照らしながら確認しなければなりません。そこで本記事では、雇用保険の基本的な加入条件を紹介し、さらに、正社員やパートごとに詳細や注意点などを解説します。

雇用保険の基本的な3つの加入条件とは?

雇用保険には3つの基本的な加入条件があります。正規・非正規雇用を問わず、3つの条件を満たしていれば雇用保険への加入の対象となるため、どのような条件があるのかは押さえておく必要があるでしょう。まず1つ目の条件は、勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがあることです。これは、更新がない31日未満の有期雇用契約など、31日間以上雇用しないのが明確に定められていない限りは、自動的に「見込みがある」とみなされます。2つ目の条件は、所定労働時間として、1週間あたり20時間以上働いていることです。ただし、20時間を超えた週があったとしても、残業が多いといった一過性のケースは条件を満たしたことになりません。あくまで所定労働時間で恒常的に20時間以上労働していれば対象となります。

3つ目の条件は学生ではないことです。高校生や大学生などのほか、通信教育、夜間、定時制の学生も保険加入の対象外となります。なお、学生が就職し、卒業後にその企業で働くことが明らかである場合に限り、加入対象とみなすことができます。企業は、業種や規模を問わず労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要です。したがって、制度上は条件を満たしていれば必ず加入できることになっています。

正社員の雇用保険への加入条件

雇用保険適用事業所で働く正規雇用の従業員は、全て雇用保険に加入する義務があります。従来は65歳未満という年齢的な条件がありましたが、2017年1月に制度が改正されて年齢制限がなくなりました。よって、年齢にかかわらず、全従業員が加入対象です。一般社員の場合、雇用契約書の有無が問われないため、試用期間中であっても報酬が支払われる限りは加入対象となります。なお、個人経営で常時労働者を雇用していない林業や、個人経営で労働者が5人未満の水産業などは、一定の条件を満たした場合、労災保険法に定める「暫定任意適用事業」とみなされます。このような事業では、労働保険への加入は任意となるため、雇用保険も加入するか否かは労使間で取り決めることになります。

労働者は自分が雇用保険制度へ加入しているかどうか、ハローワークに問い合わせることも可能です。なお、保険料は労働者と事業主の双方が負担することとなっています。それぞれが負担する保険料率は、雇用元の事業の種類によって異なります。また、年度ごとに保険料率が更新され変更になる場合もあるので、年度初めにチェックが必要です。

パート労働者の雇用保険への加入条件や検討すべき事項

次に、パート労働者が雇用保険に加入する条件や、加入を考えている際に検討すべき事項について紹介します。パート労働者は正社員とは少し異なり、個々の状況や雇用条件などを確認しながら、雇用保険への加入を判断する必要があります。労働者の不利益にならないよう、ポイントを押さえておきましょう。

パート労働者の加入条件

パートタイム労働者も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続が必要になります。加入対象となる条件は先述した通り、31日間以上引き続き雇用されることが見込まれて、かつ、1週間の所定労働時間が週20時間以上を超えるケースです。契約上の雇用期間が31日以上である場合はもちろん、雇用期間が特に定められていない場合も加入対象になります。また、雇用契約に更新の規定が無い場合でも、31日以上雇用された実績がある場合はその時点から雇用保険が適用されます。契約上の雇用期間が31日未満であっても、引き続き雇用されれば加入対象になるため、注意が必要です。

1週間の所定労働時間とは、年末年始、夏季休暇、祝祭日など特別休日を含まない週で判断します。なお、パートは、業種、業態などでさまざまな勤務形態があるため、雇用保険の加入対象であるか個人ではなかなか判断しにくい部分もあります。勤務状況がイレギュラーな事情で変わってしまった場合など、雇用保険の資格がどのような扱いになるのか、わからなくなったり不安になったりすることもあるでしょう。もし自分が加入条件に該当するかどうかはっきり知りたい場合は、ハローワークに問い合わせると確実な回答が得られます。

パート労働者が加入する際に検討すべき事項

従業員のパート労働者が雇用保険に加入するかどうか検討する際には、メリットとデメリットを理解して案内することが大切です。労働者が雇用保険に加入するメリットは、失業保険や高年齢雇用継続給付金などの保険金が受け取れる点にあります。仕事を失うと、それまで得ていた収入がなくなるため、生活を維持していく上で非常に困難な状況になります。また、60歳を超えて雇用条件などが変わり、以前のような収入が得られなくなったときにも、生活に影響が出ます。このような場合、雇用保険に加入していれば、保険金・給付金を利用して、生活を支えることができます。もしもの状況に備える意味でも、非常に大きなメリットであると言えるでしょう。

デメリットとしては、給与から雇用保険料として源泉徴収されることです。農林水産・清酒製造・建設以外の事業に従事する労働者は、0.3%が保険料率となります。割合としては大きくはありませんが、一定の金額が毎月天引きされるため、押さえておくべきポイントです。なお、加入の手続きは労働者本人ではなく、事業者が行います。手続き方法としては、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出することが主で、場合によってはほかの必要書類も求められることもあります。

加入条件に関して働き方で注意すべき点

労働時間や条件など、働き方が変わる場合には加入がどうなるのかを知っていることが大切です。普段は週20時間以上働いていて雇用保険に加入しており、勤務時間が一時的に20時間を下回るような場合は加入条件を満たしているとみなされます。イレギュラーな状況によって、ただちに雇用保険の資格が喪失するわけではないので、その点は安心して良いでしょう。ただし、一時的ではなく週20時間未満という期間が続いた場合は、加入条件を満たさなくなる可能性があるので注意が必要です。目安は3ヶ月程度とされています。3ヶ月ほど経過しても週20時間以上の勤務時間に届かない場合は、資格喪失の手続きを行わなければなりません。また、通常は週20時間未満で雇用保険に加入していなかった労働者が、週20時間を超えるようになった場合も同様に、3ヶ月程度を目安に判断していきましょう。

なお、雇用保険に加入するために週20時間以上働く場合、収入が増えて年間の給与が130万円を超える可能性があります。その場合、社会保険の被扶養者から除外されてしまうことになります。パート労働者の中には、配偶者の扶養範囲内での勤務を希望する人も少なくありません。雇用保険への加入と扶養範囲内であることのどちらを優先するのか、労働者にしっかり確認する必要があるでしょう。

雇用保険は加入条件を確認しながら適切に運用しよう

雇用保険は、正社員は原則加入となり、パート労働者でも、契約期間・所定労働時間・学生でないという、基本的な3つの加入条件を満たせば加入対象に入ります。雇用保険は保険料が0.3%と労働者も事業者も金銭的な負担は少なく、失業保険や給付金を受給できるなどのメリットがある制度です。その上で、労働形態が変化する場合などは加入すべきかどうかも変わるため、常に確認しながら適切に運用しましょう。