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人事総務担当者必見 副業解禁における企業のメリットは?企業がやるべきことや社員への対応

2019.12.10

 政府による働き方改革の流れを受け、容認する企業が増加傾向にある「副業」。企業にとっては、これまでのように副業を「禁止」するのではなく「適切に把握して管理する」という考えにシフトチェンジすることが求められているのではないだろうか。

 人事総務担当者としては、社員に副業を解禁するにあたり、本業への支障が出ないよう事前に準備する必要があるだろう。今回の記事では、副業解禁における企業側のメリットと共に、社員から副業したいと言われたときにやるべきことや対応について見ていく。

目次

●企業が副業を容認する3つのメリット
●副業を解禁するときに企業がやるべきこと3つ
●副業を希望する社員に必要な対応

企業が副業を容認する3つのメリット

 長引く不況による賃金の低下やボーナスカット等による収入減少を背景に、副業を希望する社員が増えている。社員にとっての副業のメリットには収入の増加やキャリア形成などが挙げられる一方、企業にとってはどのようなメリットがあるのだろうか。ここでは、目先の利益だけではなく、大きな視点で捉えた企業側のメリットを見ていこう。

メリット①社員のスキルアップ
 副業を通し、本業とは異なる領域の仕事を経験することで、社員のスキルアップが望めることは企業にとっても大きなメリットとなる。社員の知識や経験値が高まることで、自社における社員の質が高まるとも言えるだろう。また、社員にとって「やりたいことができる環境」であることは、本業に対するモチベーションアップにもつながる。それと共に、従業員の自律性や自主性を促すことも期待できそうだ。

メリット②社外の知識を活かせる
 社員が副業を行うことで、自社にはない社外の新たな知識が獲得できる。そのためには、社員が副業を通じて得た情報や人脈を、本業でも活かせるような環境整備が必要になるだろう。副業している社員が、これまでつながりが薄かった領域とのパイプとなることで、事業機会の拡大も期待できるのではないだろうか。

メリット③優秀な人材の確保
 多様な働き方として副業を認めることは、優秀な人材の確保や定着にもつながるだろう。また「副業できる職場」であることに魅力を感じ、入社を希望する人が現れる可能性もある。人材確保に苦心し、優秀な人材の流出に課題を感じている企業にとっては魅力的なメリットと言えそうだ。

副業を解禁するときに企業がやるべきこと3つ

 副業を解禁する際は、企業と社員、双方の認識を揃えるためにも、ルールを定めておく必要がある。会社の状況を踏まえながら、さまざまな副業のあり方を想定し検討すると良いだろう。ここでは、副業解禁にあたり、企業がやるべきことを見ていこう。

①就業規則の改定
 まず必要となるのは、就業規則で副業の禁止を解くことだ。しかし、単純に副業禁止規定の箇所を削除するのみではなく、副業によって生じると予想される企業へのデメリットやリスクを回避するためのルールを明確にすることが重要と言える。自社において規則として必要な事項は何かを考え、一定のルールのもとに副業を推進することが必要だ。厚生労働省による「モデル就業規則」を参考にするのも良いだろう。

②副業の解禁範囲を設定
 副業を認めるからといって、社員の自由にさせることが良いとは言えない。副業を認める企業側の懸念として、情報漏洩のリスクが一番に考えられるだろう。例えば、副業先として競合他社へ勤務することや、自社と同業の起業をすることに対しては禁止するといったことも考えておくべきと言える。従業員の副業に関する裁量権は企業側にあるため、事前に容認できる範囲を設定しておくことが必要だ。トラブルが起きたとき大きな問題へと発展させないためにも、細かく設定しておくことが重要となるだろう。

③申請方法の決定
 副業を行う社員を適切な管理下に置くためには、副業を事前に申請し、届け出させることが望ましい。該当する社員が副業先で負っている守秘義務には留意しながら申請方法を決定しよう。自己申請または労働条件通知書などを活用するのも良い。申請内容には、副業先の勤務地や業務内容、副業期間などを定め、双方で共有しておきたい。

副業を希望する社員に必要な対応

 副業解禁にあたり、該当する社員へは必要事項についてアナウンスをすることも必要となる。人事総務担当者として伝えるべきことには、どのような内容が挙げられるのだろうか。ここでは、副業を解禁する際に忘れてはいけない社員への対応を見ていく。

対応①労働時間の管理をする
 社員の健康管理も重要な業務だ。労働基準法によると、一般労働者として他の企業に雇用される形態で副業をする場合、「原則1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない」と定められている。副業をすることで、この労働時間を超えてしまうと、知らないところで社員が過重労働をしている可能性も考えられる。本業に支障が出ないよう、副業における就業時間の把握や、法律によって定められている時間外割増賃金に対する問題については、事前に伝えておくことが必要だ。

対応②社会保険について説明する
 副業などを通し、複数の企業と労働契約を結んでいる社員の場合、健康保険や厚生年金保険といった社会保険の取り扱いについても説明をしておく必要がある。社会保険の適用範囲が拡大されたこともあり、副業先でも加入が必要なケースが増えている。2つ以上の企業で社会保険に加入する場合は、社員自身で「健康保険・厚生年金保険所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所へ提出しなければならない場合もあるため、手続きの面でもサポートしよう。

対応③確定申告や年末調整の必要性を認知させる
 副業を行う社員へは、確定申告の必要性を認知させることも重要だ。副業の所得が1年間で20万円を超えた場合は、企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要になる。また、年末調整に関しては、社員が「扶養控除等(異動)申告書」を提出した勤務先が行うことになるが、この書類は一つの勤務先にしか提出できない。そのため、書類を受け取った場合は副業先には提出していないかを確認する必要があるだろう。間違った届出をしないよう社員に促すことで、自身の業務もスムーズに進むのではないだろうか。

まとめ 

 企業における副業解禁は、多様な働き方の一つを促進する取り組みとして、今後、より一般的になるだろう。実際、副業の解禁は企業にとっても優秀な人材の確保や事業拡大を目指せるといったメリットがある。副業によって生じるリスクへの対策や従業員への対応を適切に行い、企業と従業員の双方が納得した形で副業を推進してみてはどうだろうか。