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レイオフとリストラの違いは?日本でもレイオフはできるのか

2020.05.15

海外の企業ではレイオフという施策がよく行われている。類似したものとして、日本でも人員を削減するためにリストラが行われるが、レイオフにはあまり馴染みがない。実際のところ、日本では用いられている制度なのだろうか?この記事ではレイオフとリストラの違いやレイオフの目的、メリット、海外のレイオフ事情などについて紹介する。

「レイオフ」とは?リストラとの違い

レイオフとは、企業が従業員を一時的に解雇する事を意味する。例えば企業の業績が悪化した時、人件費を抑制させるために一時的に従業員を解雇して、再び業績が回復した頃に再雇用するという施策である。レイオフ適用の基準は勤続年数が関係しており、基本的には勤続年数が短い者から解雇、そして勤続年数が長い者から再雇用されるのが一般的だ。ちなみにレイオフはアメリカやカナダなど主に北米企業で実施されているが、日本ではあまり見られない。

日本企業は、業績悪化した際はリストラを行って人件費を抑える。リストラされた場合はレイオフと違って、再雇用される事も無い。1990年代初めに日本はバブル経済が崩壊した事から、多くの企業では従業員を解雇せざるをえない状況となった。リストラは本来、組織などの再構築を意味するが、バブル経済崩壊時にマスメディアによってリストラという言葉が喧伝され、リストラ=解雇というイメージが広く浸透していった。従業員にとってはリストラよりレイオフの方が通達された時の衝撃が少ないイメージがあるかもしれないが、一時解雇ではなく単に解雇を表す場合もある。またアメリカでは業績悪化の対策方法として、部署や工場をまるごと切る事もある。突然通達されて会社を出なければいけないケースも珍しくなく、集団解雇もレイオフと解釈されている。

レイオフの目的

企業はなぜレイオフを行って従業員を一時的に解雇するのか、レイオフを実施するのはどのような目的があるのだろうか?

人件費の削減

レイオフを実施する目的として、まず挙げられるのが人件費の削減である。業績が悪化した際、何よりコストがかかるのが人件費で、人件費が少なくなれば、コストも抑えられて業績の回復も期待出来る。企業側は取り敢えず業績が元に戻るまで従業員の数を減らしたい、ただし完全に解雇するには惜しいという思いもあり、レイオフを手段の一つとして選んでいる。

人材やノウハウ流出の防止

人員削減ならリストラという方法もある。にも関わらずレイオフを選ぶのは、優秀な人材を他に流出させたくないからだ。企業が発展していくには、従業員の能力やスキルは欠かせないもので、入社したその日から人材育成は始まっている。色々な失敗を繰り返しながらも経験を積み重ねていき、やがて培ってきた知識やスキルは会社のために還元される。特に長期間に渡って勤務した従業員ほど、会社にとっては大きな価値がある。手塩にかけて育成し、ようやく一人前となった社員を易々とリストラした場合、一時的に人件費は削減できる。しかしその優秀な人材が、ライバル会社に移ってしまう事もある。

競合他社にとっても、スキルや知識を持った人材はスカウトしてでも会社に引き入れたい。もし会社独自の技術やノウハウがライバル社で活かされるようになると、企業にとっては大きなダメージになる。一時的には苦しいが、いずれ業績が回復する見込みがある企業なら、優秀な人材は残しておきたいのが本音だ。人件費を減らさなければ経営状態が厳しくなるといった場合、企業にとって最善の方法が一時的に解雇し、業績が回復してから戻ってきて貰う事である。貴重な人材やノウハウ流出を防止するためにレイオフは行われるのだ。

レイオフで生まれるメリット

レイオフは雇用する側だけではなく、労働者側にも色々なメリットがある。例えば企業の規模にもよるが、長年勤続してきた社員には年収に相当する額の特別退職金が支払われる事がある。またレイオフが転職を決断する良い機会になるケースもある。職場の人間関係や仕事内容などに対して不満を持っているものの、自分から退職を選択するのは難しいものだ。しかし会社からレイオフを言い渡されたのなら、会社を辞めるのも仕方がない。自主的に退職すると後になって後悔する可能性もあるが、会社からの強制命令であれば、会社を退職する正当な理由が出来て好都合という訳だ。

会社を辞めたかった人も、レイオフが不本意だった人も、次の仕事が決まるまでに勉強やスキルアップを行っていけば、好待遇での転職も夢ではない。働いてきた事で培った経験やスキルは他の企業からも魅力があり、景気の良い時期であれば引く手あまたの状態になるかもしれない。また競合他社にとっても、レイオフは優秀な人材を狙えるというメリットがある。レイオフの対象となった優秀な人材には積極的に声をかけ、給料や福利厚生面、仕事環境などお互いが納得できるよう条件をすり合わせていく。仕事内容や待遇面で納得させれば、欲しかった人材を会社に引き入れる事ができ、人材不足の問題の解消にも繋がる。

海外のレイオフ事情

レイオフは日本企業で行うケースは少ないが、アメリカなど海外では珍しくない。過去にはIT業界で頻繁に行われてきたが、近年は自動車業界などの製造業でよく見られるようになっている。アメリカのレイオフは会社の事のみを考えて実施されており、実にシビアだ。従業員には突然仕事が無くなった旨を伝えられ、すぐに私物をまとめて出ていくように通達される。頻繁にある事なので、従業員も特に驚かない。人事側は淡々と会社の備品や個人IDカードを回収するなどして、退職の準備を進めていく。

ちなみに日本のリストラ、レイオフは業績悪化に伴い実施されるが、海外では事業見直しの一貫として行われる事がある。例えばMicrosoft社は、顧客やパートナーにより良いサービスを提供するために組織再編を決定し、それに伴ってレイオフを実施した。対象となったのは数千人に及び、大半はアメリカ以外で働く従業員であった。

日本の「解雇」

日本ではレイオフは浸透していないが、その理由は日本の解雇事情が関係している。具体的にはどのような理由があるのだろうか?

解雇の種類

レイオフ、リストラともに企業が従業員を解雇する形態であるが、そもそも解雇は普通解雇と懲役解雇、整理解雇の3種類に分かれる。まず普通解雇は就業規則に基づき、労働者の債務不履行を理由に行われる。また懲役解雇は従業員が違反行為を起こした際に適用されるもので、制裁罰としての解雇になる。会社から追い出される形になるため、普通解雇とは全く違う。そして整理解雇とは、会社が経営不振などを理由に人員を削減する際に実施される。レイオフは整理解雇に当てはまるが、日本では整理解雇を実行するのは難しい。そういった背景からレイオフは日本ではあまり馴染みがないのだ。

整理解雇は条件が厳しい

日本の企業が整理解雇を行いにくいのは、4つの要件を満たす必要があるからだ。まず会社の存続のために人員整理が必要な事、希望退職者の募集や役員報酬のカットなど会社側が解雇回避の努力をしている事、解雇の対象者の選択が会社への貢献度が低いなど合理的である事、そして解雇対象者や労働組合に十分な説明を行って納得してもらえている事である。これらは「整理解雇の四要件」と言われ、全てを満たさなければ認められない。業績がかなり悪化しない限り、整理解雇は実施出来ないのが実情である。

日本におけるレイオフに近い概念は「一時帰休」

日本の企業は整理解雇に対する法的な規制が強い事や、労働者保護という観点からレイオフは実施されにくい。ただ人件費を抑えなければ厳しいといった時に使える制度として、一時帰休というものがある。一時帰休は従業員を雇用したまた休業させるもので、会社との雇用関係は途切れない。つまり他の企業へ従業員が流出する事も抑えられるといったメリットがある。ただ注意点として、一時帰休を実施する場合は従業員に休業手当を支給しなければいけない。休業手当は平均賃金の60%以上の額が必要で、一定の賃金を保障した上で従業員を休ませるというのが一時帰休の特徴だ。

人事担当者はレイオフの定義と目的を理解しておこう

解雇に対して強い規制がある日本では馴染みの無かったレイオフだが、近年は解雇規制の緩和が検討されている事から、今後はレイオフが浸透してくる可能性もある。人員削減の手段として行ってきたリストラとは全く別物であり、トラブルに発展させないためにも、人事担当者はレイオフの定義と目的をしっかり理解しておく事が大切だ。

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