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今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.5 テレワークうつの原因と対策

2020.08.20

 「働き方改革」の推進や新型コロナウィルス感染症の感染拡大を受けて、テレワークを導入する企業が急増した。一方で、テレワークに伴うストレスが原因とされる「テレワークうつ」が問題視されている。人事・労務担当者としては、テレワークうつを防ぐためにどのような対策を行ったらよいのか悩むこともあるのではないだろうか。

 今回の記事では、「テレワークうつ」の概要や原因、管理部が行える対策を紹介する。従業員の心のケアを行い業務を円滑に進められるよう、テレワークうつについての知識と対策を把握しておこう。

目次

●テレワークうつとは
●テレワークうつの原因
●管理部が行えるテレワークうつ対策
●テレワークうつを防ぐための社内ルールの見直し
●まとめ

テレワークうつとは

 「テレワークうつ」とは、オフィスへの出社が制限され在宅勤務などを行う中で現れる心身の不調を指す。広く見れば、「コロナうつ」「自粛うつ」と関連するものとも考えられている。

テレワークうつの症状
 「テレワークうつ」のおもな症状は以下の通りだ。これからの症状が見られたり従業員から訴えがあったりする場合は、医療機関への受診を打診するなど早めの対策をすすめよう。

・抑うつ
・不安感
・睡眠障害
・頭痛
・肩こり
・眼精疲労
・腹痛、下痢などの腹部症状
・倦怠感
・意欲の減退

テレワークうつの原因

 テレワークうつはどのような原因によって発症するのだろうか。ここでは、テレワークうつの原因として考えられるものを解説する。

環境・生活リズムの変化
 テレワークにはオフィスへの通勤時間がなくなることで満員電車などに伴なう通勤ストレスの軽減や家族と過ごす時間の増加などのメリットがある反面、従来と働き方が変わることや、仕事とプライベートの時間の切り替えが難しいことなどにストレスを抱える人もいる。

 また、育児や介護などの事情で昼間に作業をすることが難しい従業員は労働時間帯が夜間や深夜になるケースもあり、長時間労働や睡眠不足によってテレワークうつを発症する可能性がある。

コミュニケーションの不足
 テレワークはオフィスへの出社が制限されるため、他者とのコミュニケーションの機会が大幅に減少する傾向にある。業務の遂行に必要なやり取りだけでなく、雑談や挨拶などの頻度が減ると、従業員が孤独感や疎外感を覚えモチベーションが低下するようだ。また、他の従業員の状況が見えにくいため、業務の相談がしにくい、同僚の進捗状況を把握しにくい、確認に時間がかかるなどのストレスが考えられる。

 コミュニケーションが不足したままの状態が続くと、業務が滞る、意思のすれ違いによるミスが発生する、生産性が低下するなどし、さらなるストレスがテレワークうつを引き起こすこともあるだろう。

リモートハラスメント
 「リモートハラスメント」とは、テレワーク中に受けるセクハラやパワハラ行為を指す。テレワークでは「やり取りに不快感を感じても直接言いにくい」、「他者に相談しにくい」、「1対1のミーティングでは他に証言できる人がいない」などの問題点があり、それによってテレワークうつを発症する可能性が高い。リモートハラスメントには具体的に以下のものがある。

・室内の様子を映すことを強要される
・体型や服装など、外見を指摘される
・1対1でのオンライン飲み会に誘われる
・SNSで個別のつながりを求められる
・業務以外の内容について説教をされる
・時間の内訳について必要以上の説明を求められる
・オンライン会議を必要以上に求められる
・オンライン飲み会への出席を強要される

管理部が行えるテレワークうつ対策

 テレワークうつは、企業がさまざまなを対策を講じることで未然に防げる可能性がある。ここでは、上司やマネージャーなどの管理部が行えるテレワークうつ対策を紹介する。

従業員の状況をこまめに確認する
 まずは従業員の様子や状況をこまめに把握し、表情や口調に以前と変わった箇所はないか、テレワークうつの症状が出ていないかを確認することが大切だ。ストレスやネガティブな気持ちを自身の中だけで留めておくと精神的な負担が大きいため、従業員がアウトプットできる機会を作ろう。具体的には、以下のようなことを行うと良いだろう。

・オンラインで朝礼を実施する
・個別面談を設定する
・テレワークについてのアンケートを実施する
・ストレスチェックを行う

 従業員の状況を把握したら、必要に応じてカウンセリングなどを行うことも重要だ。

コミュニケーションの機会を設ける
 従業員同士が気軽に話せる機会を設けることで、コミュニケーション不足が解消するだけでなく、業務が円滑化し生産性を上げることができるだろう。テレワーク中にコミュニケーションをとるアイデアには、以下のものがある。

・Web会議での朝礼
・定期的にチーム内ミーティングを行う
・オンライン飲み会やコーヒーブレイクなどの雑談時間を作る
・雑談用のチャットグループの作成
・オンラインサンキューカードの活用

会議の様子を記録する
 Web会議の様子を記録に残しクラウド上や社内のデータベースに保存しておくと、

・議事録が作成しやすくなる
・会議の内容をいつでも確認することができる
・リモートハラスメントの抑制につながる

などのメリットがある。

ただし、秘密裏に録音をすると従業員が不快感を感じたり別のトラブルに発展したりする可能性があるため、事前に参加者に記録の旨と目的を説明し(「議事録を作成するため」「不適切な指導や発言を防ぐため」など)、記録したデータの取り扱い方法をルール化・共有しておくと良いだろう。

テレワークうつを防ぐための社内ルールの見直し

 テレワーク下における従業員のストレスを減らし、業務を円滑に進めるためには、以下のように社内ルールの見直しを行うことも大切だ。

従業員の実態に応じた就業時間の見直し
 テレワーク中は従業員の就労実態を踏まえ、フレックス制の導入や休憩を複数回に分けることを可能にするなど、労働時間の見直しを行うと良いだろう。また、生活リズムが整うように、できる限り通常の出勤時間に合わせて起床するよう呼びかけよう。

 労働時間はきちんと記録・把握できるようにし、長時間労働や深夜労働をしている従業員には注意喚起を促す、業務分担を見直すなどの対策を施そう。

管理ツールの見直し
 ICT(情報通信技術)を利用して行うテレワークでは、

・勤怠管理ツール(労働時間の管理)
・業務管理ツール(プロジェクトやタスクの管理、スケジュールや業務遂行状況の把握)
・プレゼンス管理ツール(在席管理)

などの管理ツールをうまく利用することでスケジュールやタスクが可視化され、スムーズに業務を行うことができる。チーム全体の進捗状況が確認できると、作業効率が低下している従業員に対する早めのフォローを行うことも可能だ。

 プレゼンス管理ツールには、在宅勤務者がどのような画面を見ていたかをランダムにキャプチャーするものや離席ボタンと着席ボタンを有するものなどがある。従業員側が過度に管理されるという抵抗感を感じることも想定されるが、一方で過度な監視体制を防げるというメリットもある。これらの管理ツールを導入する場合は、企業と従業員が合意の上で利用できるよう導入の目的を明確にし、あらかじめ周知しておくと良いだろう。

参考:今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.3 テレワークの課題点をICTで解決

サポート体制の見直し
 テレワーク下では、企業が従業員をサポートできる体制を整えておくと従業員の心理的負担が軽減されるだろう。パソコンやツールに問題が発生した際、すぐに対応できるように社内のパソコンを貸し出す、不測の事態に備えて必ず複数で業務を担当するなど、方法はさまざまだ。また、体調面を考慮して、福利厚生で食事をサポートしたり、勤務中に軽い運動や適度な休憩の時間を取り入れたりすることも効果的だろう。企業の中には、意識的に目の前のことだけに向き合う「マインドフルネス」を行うためのプログラムを、企業が率先して導入している例もある。

まとめ

 新型コロナウィルス感染症の収束の目途が立たない中、「テレワークうつ」の増加が懸念されている。予防をするためには、症状や原因を把握するとともに、必要に応じた対策や心のケアをする必要がありそうだ。従業員の心と体を守りスムーズに業務が行えるよう、テレワーク体制下での働き方の見直しや、一人ひとりの様子に応じた適切な対策を検討してみてはいかがだろうか。

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