オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.11 リーガルチェックとは?弁護士への外部委託やAIサービスを使うメリット・デメリット

2020.10.23

 取引先や従業員とのトラブル対策として、専門家が契約書内容の確認を行う「リーガルチェック」が注目されている。担当者の中には、依頼先や導入方法について知りたいという人もいるのではないだろうか。

 今回はリーガルチェックの概要や重要性、弁護士への外部委託やAIツールを利用する際のメリットとデメリットについて解説する。AI契約書チェックサービスの紹介も行うので、導入を検討する際の参考にしてほしい。

目次

●リーガルチェックとは
●弁護士に依頼するメリット・デメリット
●AI契約書チェックサービスを利用するメリット・デメリット
●AI契約書チェックサービスの紹介
●まとめ

リーガルチェックとは

 「リーガルチェック」とは、契約書の内容に問題がないかなどを専門家にチェックしてもらうことを指し、「契約書のレビュー」と呼ぶこともある。ここでは、リーガルチェックの概要と重要性について確認しよう。

リーガルチェックの概要
 リーガルチェックは、さまざまな契約書の内容について、専門家に法的な問題や不備、曖昧な表現や不利益な条件などがないかをチェックしてもらうことだ。取引先から提示された契約書だけでなく、自社で作成した契約書のチェックを行うこともある。契約書の種類は多岐に渡るが、代表的なものを以下に紹介する。

・取引基本契約書
・業務委託契約書
・労働者派遣基本契約書
・工事請負契約書
・売買契約書
・雇用契約書
・秘密保持契約書

 リーガルチェックは弁護士に依頼することが一般的だが、司法書士や行政書士などに依頼する、社内に法務担当者を置く、リーガルチェックを自動で行うAIツールを利用するなどの方法もある。

リーガルチェックの重要性
 リーガルチェックを行う目的は以下の通りだ。

・合意事実・合意内容を明確にする
・自社にとって不利益な条件を確認・指摘し、対等な契約を締結する
・曖昧な表現や不明瞭な表現を避ける
・ノーチェックによる問題リスクを回避する
・トラブルを未然に防ぐ

法令や判例に十分な知識がないまま契約を締結すると、場合によっては自社が不利益を被る可能性がある。また、作成した契約書に不備がある場合、トラブルに繋がったり制裁を受けることも考えられる。専門家によるリーガルチェックを行うことで、さまざまなトラブルを回避し、企業と取引先間、企業と従業員間の円滑な関係性を築けると言えるだろう。

弁護士に依頼するメリット・デメリット

 リーガルチェックは継続的・スポット的に弁護士に依頼することが一般的だ。ここでは、リーガルチェックを弁護士に依頼するメリットとデメリットをそれぞれ紹介する。

メリット
 リーガルチェックを弁護士に依頼するメリットは、以下の通りだ。

・法令や判例に精通している
・トラブルリスクを想定できる
・契約書の有効性・権威性が高まる
・契約後のフォローを依頼できる
・英語の契約書にも対応してくれる

日頃からトラブルについての相談や裁判を担当している弁護士は、法令や判例を網羅しているだけでなく、リスクの想定や対策に強い。そのため、契約書に有効性と権威性を持たせることができると言える。契約書の作成段階から取引内容を把握していれば、万が一トラブルに発展した場合も問題把握や対応をスムーズに行えるだろう。

また、継続的なリスク管理のためには法令の改正や経済の変動にあわせて既存の契約書の見直しも必要となる。業務の実態などを理解し、フォローを依頼できる弁護士がいることは心強いと言える。

デメリット
 弁護士にリーガルチェックを依頼する場合、以下のデメリットが考えられている。

・依頼費用がかかる
・契約の締結までに時間がかかる

リーガルチェックを行う費用は、事務所や依頼する件数、契約書の種類などにより異なる。リーガルチェックは継続的に発生するニーズであるため、継続して依頼する場合の費用は月額3万~20万円が相場のようだ。スポット的に利用する場合は事業内容や資本金の確認などの事前ヒアリングに時間を要するため、1件につき5万~10万円と継続契約に比べ割高になる。

また、契約書の完成までには「原案の提出・契約内容のヒアリング」「問題点・修正点のリストアップ」「修正対応・完成」というステップが必要となるため、契約書の作成や契約の締結に時間がかかることも課題となっている。

企業によっては、M&Aや業務提携などで大きな資金が動くケース、海外企業との契約時にのみ利用しているところもあるようだ。

AI契約書チェックサービスを利用するメリット・デメリット

 AI契約書チェックサービスとは、AIツールを用いて契約書をチェックし、フィードバックを行うサービスのことだ。対応する契約書の種類はサービスによって異なるが、利用頻度の多い契約書を中心に、最近では幅広い種類の契約書をチェックできるようになっている。データベース化などの機能を備え、英文契約書に対応しているサービスもある。ここでは、AI契約書チェックサービスを利用するメリットとデメリットを見ていこう。

メリット
 AIによる契約書のチェックサービスには、以下のメリットがある。

・形式的な問題点の指摘が可能
・導入コストが安い
・フィードバックが早い
・情報を蓄積できる

AI契約書チェックサービスは、契約書をアップロードするだけで即時~数時間でフィードバックを得られることが最大のメリットだ。時間とコストを削減することで、業務効率が向上するだろう。

また、契約書のデータベース化やひな形・条文のストック、レビュー履歴を踏まえた比較やレコメンドなどの機能があり、業務属人化の解消や知見の社内蓄積などに繋がることが期待されている。

デメリット
 AIチェックサービスでは、以下のデメリットが想定されることに注意しよう。

・対応する契約書の種類が限定される場合がある
・適用すべき法令が網羅されていない可能性がある
・契約に問題が発生したときの責任の所在が不明確

チェックを必要とする契約書が非対応であったり、法令が網羅されていなかったりする可能性があるため、特殊な契約や前例の少ない契約のチェックには不向きだと言えるだろう。また、自社のビジネスの目的や実態、取引先との関係性を踏まえた柔軟な対応も難しい可能性がある。

AI契約書チェックサービスを導入する際は、適用すべき法令が網羅されているか、判例や他の契約書との整合性を検討する機能があるかなどを踏まえて検討をすると良いだろう。

AI契約書チェックサービスの紹介

 AI契約書チェックサービスを導入する際は、自社のニーズにあったものを選択することで、トラブルを回避し、効率化や生産性を向上させることができるだろう。ここでは、3社のAI契約書チェックサービスを紹介する。

AI-CON
 「AI-CON」は、秘密保持契約書や業務委託契約書など16種類の契約書のチェックを行えるサービスだ。リスク判定を段階的に表示する他、契約条文の修正例を提案する機能を備えている。トラブル多発事項が指摘されるため、受け入れ時のリスクを把握することが可能だ。秘密保持契約書のみを対象とした「即時チェックプラン」はその場で、他の契約書にも対応した「詳細チェックプラン」では1営業日以内に結果が表示される。

LegalForce
 「LegalForce」は、契約書のレビューや参考となる条文例の検索を即時に行うAIチェックサービスだ。搭載されている200点以上の契約書のひな形や書式集は随時最新のものに更新され、ファイルのダウンロードや条文単位での引用も可能だ。他にもWordアドイン、自動レビュー英文対応、社内ライブラリなどさまざまな機能を備えている。

LawFlow
 「LawFlow」は、弁護士開発・元裁判官監修の法務AIだ。自社の契約書データをひな形に設定することで、定形の契約条項から契約者・企業に特有の条項までを瞬時にチェックすることができる。契約書作成支援ツールでは、選択肢の中から例文を表示させることで簡単に契約書を作成することが可能だ。モバイル対応しているため、外出先でもスマートフォンなどで撮影した写真を用いて対応できる。

まとめ

 契約書の内容に関する問題の有無を専門家が確認するリーガルチェックは、法的なトラブルや損害を防ぎ自社の信頼を失わないためにも重要だ。依頼先やサービスによってさまざまな特徴や機能があるため、自社の状況やニーズを踏まえた上で、最適な手段を検討してみてはいかがだろうか。

<PR>