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【2024年版】所定時間外労働とは? 法定労働時間との違いや時間外労働の条件について詳しく解説

2024.10.16

2024年4月より建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制が適用され、原則として時間外労働は「月45時間/年360時間」までとなった。これを機に、時間外労働について正しく理解したいと考える担当者もいるのではないだろうか。

今回は、「所定時間外労働」の定義や、「法定時間外労働」との違い、時間外労働の上限について解説する。時間外労働の定義や算定方法についての知識を身につけ、適切に運用しよう。

目次

■所定時間外労働とは
 所定労働時間・所定休日とは
 法定労働時間・法定休日とは
 所定時間外労働と法定時間外労働の違い
■時間外労働とは
 時間外労働は法定時間外労働と同義
 時間外労働の定義が例外になる働き方
 時間外労働を行うには「36(サブロク)協定」の締結が必要
■時間外労働の上限
 時間外労働の上限規制の実際
 法改正のポイント
 自動車運転の業務に関する上限規制の例外
■時間外労働の賃金
■まとめ

所定時間外労働とは

所定時間外労働とは、企業が定める「所定労働時間」を超過して行う労働のことだ。所定時間外労働を理解する前提として、まずは「所定時間労働」の概要と、比較されることが多い「法定労働時間」について見ていこう。

■所定労働時間・所定休日とは
「所定労働時間」は、企業が就業規則に定めた就業時間(実労時間)を指す。例として、始業時刻が9:00、休憩時刻が12:00から13:00、終業時刻が17:00の場合、所定労働時間は7時間となる。また、企業が労働者に対して定める休日を「所定休日」と呼ぶ。所定労働時間は、後述する「法定労働時間」を超えて設定することはできない。

■法定労働時間・法定休日とは
労働基準法では、労働時間を原則「1日8時間・1週40時間以内」としており、これを「法定労働時間」という。この法定労働時間を超過した時間を「法定外労働時間」といい、法定外労働時間に行う労働を「法定時間外労働」と呼ぶ。また、同法では原則として、企業は従業員に対して毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとしており、この1週間につき1日の休日を「法定休日」という。

■所定時間外労働と法定時間外労働の違い
所定時間外労働と法定時間外労働の違いについて、所定時間外労働は「企業が定める所定労働時間を超過している」のに対し、法定時間外労働は「労働基準法が定める法定労働時間を超過している」ことだ。所定労働時間を超過していても、法定労働時間が超過していない場合も考えられる。

所定労働時間を超えた時間外労働は、法定労働時間を超えているか否かによって「法定内時間外労働」と「法定外時間外労働」に分けられる。法定内時間外労働が割増賃金(いわゆる残業手当)の対象となるかは各企業の就業規則(賃金規定)ごとに異なるため、企業によっては割増賃金が発生しない場合がある。

時間外労働とは

給与の計算等で用いられる「時間外労働」は、何を元に算出されるのだろうか。ここでは、法律上の時間外労働の扱いや、時間外労働の定義が例外になる働き方、従業員に時間外労働をさせる場合の注意点を説明する。

■時間外労働は法定時間外労働と同義
時間外労働とは、「所定時間外労働」ではない。法律上の扱いでは、「法定時間外労働」を指す。企業が従業員に割増賃金を支払う場合、割増賃金は「法定外労働時間」をもとに計算される。「所定外労働時間」を超えて労働することを「残業」と呼ぶことが一般的であるため、従業員の認識と実際の給与計算の方法とでは異なることに注意しよう。

■時間外労働の定義が例外になる働き方
企業によっては、以下のように1日8時間という法定労働時間の枠に捉われない働き方を採用している場合もある。採用している働き方によって、割増賃金が発生する対象時間が異なることに注意が必要だ。

・変形労働時間制:特定の日または週に、法定労働時間を超え、一定の限度で労働させることができる制度。繁忙期に労働時間を増やすなどの工夫が可能になる

・フレックスタイム制:始業時刻と終業時刻を従業員の裁量に委ね、労働時間を月単位制度で計算する制度

・裁量労働制:労働時間を実労働時間で算定せず、業務遂行の手段や時間配分の決定などを労働者の裁量に委ね、一定時間とみなして運用する制度。研究職やデザイナーなど専門性の高い業務、企画や立案、調査分析の業務などに限られ、対象となる業務やその範囲は労働基準法で定められている

■時間外労働を行うには「36(サブロク)協定」の締結が必要
従業員に法定時間外や法定休日に労働させる場合には、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結と、所轄労働基準監督署長への届出が必要となる。36協定では「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などを定める必要がある。

時間外労働の上限

36協定さえ締結すればどんなに長時間の労働でも可能かといえば、そういうわけではない。36協定で定められる時間外労働には上限規制が規定されている。大企業には2019年4月から、中小企業には2020年4月から、そして2024年4月からは適用が猶予されていた業務についても適用が開始された。時間外労働の上限規制について、法改正のポイントとともにここで解説する。

■時間外労働の上限規制の実際
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。また、臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも、以下を超えることはできない。

・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)
・原則である月45時間を超えることができるのは年間6カ月まで

上記に違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがある。

■法改正のポイント
2024年4月からは、時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた以下の業務にあっても、適用が開始された(一部特例あり)。これにより、時間外労働の上限規制の適用は完了した。

・工作物の建設の事業
・自動車運転の業務
・医業に従事する医師
・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業

上記のうち、オフィス担当者として関わる人が多いであろう「工作物の建設の事業」と「自動車運転の業務」について、特例となる例外は以下の通りだ。

■工作物の建設の事業に関する上限規制の例外
災害時における復旧・復興事業には、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6カ月平均80時間内とする規制は適用されない。

■自動車運転の業務に関する上限規制の例外
特別条項付き36協定を締結する場合、年間の時間外労働の上限が年960時間となる。また、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6カ月平均80時間内とする規制は適用されない。時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月までとする規制も適用されない。

時間外労働の賃金

1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超過して時間外労働をさせる場合、割増賃金の支払いが必要になる。時間外労働に対する割増賃金は、通常の賃金の25%以上で、この基準を満たしていれば企業が任意に決めることができる。

また、時間外労働の他、休日労働と深夜労働にも割増賃金が生じる。休日労働に対する割増賃金は35%以上、深夜(原則として22時~5時)は25%以上。

なお労働基準法の改正によって、2010年4月から大企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を50%以上とする規定が、2023年4月以降から中小企業にも適用されている。ただし、臨時的な特別の事情等によってやむを得ず月60時間を超える時間外労働を行う場合は、法定割増賃金率の引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて有給休暇(代替休暇)を与えることができるとされている。

なお、50%以上の割増賃金率の適用を回避するため、休日振替によって休日労働の割増賃金率である35%以上を適用することは、法の趣旨に照らして望ましくないことに注意しよう。

参考:
建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)(厚生労働省)
法定労働時間と割増賃金について教えてください。(厚生労働省)

まとめ

従業員の健康を守り給与を正確に計算するためには、「所定時間外労働」と「法定時間外労働」との違いや法律上の取り扱いを理解し、適切に運用することが大切だ。法改正のポイントを見直した上で、定められた範囲を超えた時間外労働が行われないよう、業務内容や体制、給与の計算方法を一度見直してみてはいかがだろうか。