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経理部の退職時の引き継ぎの流れ マニュアル作成のポイント

2020.11.24

 経理の業務は他業務や取引先とのやり取りに大きく影響するため、退職者が出る場合、限られた時間の中で確実に引き継ぎを行う必要がある。複雑かつ多岐に渡る経理部の引き継ぎは、どのような方法や流れで行うとスムーズに完了できるのだろうか。

 今回は、経理部の退職者がある際に引き継ぐべき事項や引き継ぎの流れ、マニュアルを作成する際のポイントを紹介する。要点を抑え、効率よく引き継ぎが行えるようにしてほしい。

目次

●経理部の退職時に引き継ぐ事項
●引き継ぎの流れ
●マニュアル作成のポイント
●まとめ

退職時に引き継ぐ事項

 経理部の業務は多岐に渡るため、まずは引き継ぐべき事項を把握することが大切だ。日単位・月単位・年単位で行う経理の業務を洗い出し、リスト化するとよいだろう。まずは経理部が担当する、主な業務を確認しよう。

日次業務
 経理部で日々行われる業務には、以下のものがある。

・現金の出納管理
・伝票の起票・整理
・領収書の入力・整理
・売掛金・買掛金の入力
・立替経費の精算
・仮払金の管理

その他、独自に行っている業務がある場合はその項目も書き出そう。

月次業務
 経理部の月次業務は以下の通りだ。それぞれの業務を行うタイミングや手段は、企業や取引先によって異なる。

・給与計算
・支払業務
・請求業務(請求書の作成など)
・帳簿の管理
・月次決算
・試算表の作成

日々の業務にくわえて行うため、納期や期限に合わせた実施のタイミングも重要になるだろう。

年次業務
 経理部が年間を通して行う業務には主に以下のものがある。税金や保険料の納付には期限があるため、きちんとスケジュール管理を行うことが大切だ。

・決算作業
・各税金の申告・納付(法人税・法人地方税・法人事業税・固定資産税・源泉所得税など)
・賞与の計算・支払
・各保険料の納付
・半期事業計画などの集計
・各保険料率の改定
・年末調整
・予算の立案
・棚卸し

引き継ぎの流れ

 引き継ぎの期間は退職者と後任者の都合によって長短があるため、退職者はあらかじめ業務の内容を整理し、スムーズな引き継ぎを行うための準備をしておくとよいだろう。ここでは、経理業務の引き継ぎの流れを紹介する。

引き継ぎのスケジュールを決める
 まずは全体像を把握した上で引き継ぎにかかる時間を想定し、引き継ぎのスケジュールを決めよう。直接指導できる時間が長いほど後任者に業務を経験してもらったり質問に対応したりすることができるため、余裕を持った引き継ぎ計画を立てるとよいだろう。

 対面で引き継ぎができる日数や時間が限られている場合は、事前に引き継ぎに必要なマニュアルを渡しておき、引き継ぎ日に不明点を補足するなど柔軟に対応することも大切だ。

引き継ぎに必要なマニュアルの作成・見直し
 短期間で経理部全ての業務を引き継ぐことは困難なため、退職者は引き継ぎに漏れがないようマニュアルを作成しておくことが重要だ。経理業務は定型化できる業務が多いため、こなすべき作業や処理のタイミングを示した精度の高いマニュアルを作成することで速やかな引き継ぎが行える。

 既に作成されたマニュアルがある場合は「業務の実態に即しているか」「更新・導入したシステムに対応しているか」など刷新する箇所がないかをチェックし、必要に応じてブラッシュアップを図るようにしよう。また、後任者が混乱することなく資料やデータを探せるよう、フォルダやファイル、データベースの情報を整理しておくことも大切だ。

実際の引き継ぎ・OJT
 対面での引き継ぎは、作成したマニュアルを基に、作業の見本を示しながら説明するとよい。その際、自身の経験や前任者からの引き継ぎ事項、手順変更の経緯、感じている課題点など、細かなノウハウやナレッジを共有できると後任者の役に立つだろう。

 口頭での説明だけでなく可能な限りOJTを実施できると、後任者に身につけてほしいノウハウをしっかりと吸収してもらえるだけでなく、イレギュラーなケースへの対応方法なども指導することが可能だ。

関係者への挨拶
 退職後の社内外の混乱や不要なトラブルを避けるためにも、退職者は退職前に関係者へ挨拶をしておくことが大切だ。その際、関係者に後任者を紹介しておくと、後任者がその後スムーズなコミュニケーションを取りやすくなるだろう。

マニュアル作成のポイント

 必要な事項を網羅したわかりやすいマニュアルを作成できると、引き継ぎが最小限で済み、引き継ぎ後のトラブルを防止することもできる。ここでは、経理の引き継ぎマニュアル作成のポイントを紹介する。

引き継ぎの目的やゴールを明確にする
 経理業務の引き継ぎの最大の目的は、後任者が業務を理解し前任者と同様に業務が行えるようになることで、「担当者の退職後も企業がスムーズに活動できること」にある。

 目的を理解していれば前任者のやり方や手順に固執する必要はなく、より効率のよい方法に切り換えることで業務の改善や効率化が行える可能性もある。退職者は単に作業の手順を教えるだけでなく業務の本質を伝え、人材や企業が成長するようなマニュアル作成を心がけよう。

業務の全体像がわかるリストを作成するスト
 引き継ぎのマニュアルは、日次・月次・年次ごとにスケジュールや項目を整理しておくことで後任者が全体像を把握でき、計画性を持って業務に取り掛かることができるだろう。それぞれの業務について以下のような項目を設定し、表や箇条書きなどを用いて要点を簡潔にまとめるとよい。

・目的・目標
・手順・フロー
・実行方法・使用するツール
・時間・期間・締切
・程度・回数・数量
・予算・費用
・連携部署・担当者
・注意事項 
・トラブル・イレギュラー時の対応

関係者の情報・資料の保管場所などは一覧に
 経理の業務は社内外の人と関わる機会や書類の取り扱いが多いため、以下の項目についての一覧をマニュアル内に示しておくと後任者がスムーズに業務を行うことができるだろう。

・関係部署・関係者・連絡先
・社内用語・専門用語
・備品の保管場所
・過去の資料やデータの保管場所
・参考となるサイト

上司によるチェック、関係者への配布
 引き継ぎのマニュアルは、上司などの責任者と情報を共有しながら進めたりチェックを仰いだりすることで、漏れを防ぐだけでなく業務改善を施すことが可能だ。また、完成したマニュアルを関係者に共有しておけば、よりスムーズな業務連携につながるだろう。

まとめ

 経理の業務では年間に渡ってさまざまな作業が存在し、細かなルールや手順などは企業によって異なるため、業務全体を網羅するマニュアルの作成と効率的な引き継ぎが重要だ。社内外における不要なトラブルや業務の遅延を防ぐためにも、引き継ぎの流れやマニュアルを見直し、企業がよりスムーズに活動できる方法を模索してみてはいかがだろうか。

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