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テレワーク導入で「通勤手当」が「在宅勤務手当」に変わると課税対象になるのか

2021.01.27

 テレワークの普及によってオフィスへの出社が不要となったことから、「通勤手当」を「在宅勤務手当」に置き換える企業が増えている。テレワークの場合でも引き続き通勤手当を支給することに問題はないのか、在宅勤務手当は課税の対象となるのかなどについて、気になる担当者もいるのではないだろうか。

 今回は、通勤手当の課税対象範囲や廃止の背景、在宅勤務手当の注意点などについて紹介する。各ポイントを押さえ、自社での運用の参考としてほしい。

目次

●通勤手当とは
●テレワークの導入で通勤手当の廃止が増加
●在宅勤務手当は課税対象になるのか
●まとめ

通勤手当とは

 通勤手当とは、自宅とオフィスの往復にかかる交通費に充てることを目的に、企業が支払う手当のことだ。まずは、通勤手当の詳細を確認しよう。

通勤手当は基本的に非課税
 残業手当などの「法律上、支給しなければならない手当」とは異なり、通勤手当は「企業が任意で決める手当」に分類されるため、通勤手当の有無や範囲、金額などは企業によって異なる。

 本来、従業員に支給する「手当」は給与所得として扱われ所得税の課税対象となるが、例外として「通勤手当のうち、一定金額以下のもの」は非課税とされている。

参考:国税庁「No.2508 給与所得となるもの

通勤手当の非課税限度額
 通勤手当で非課税となる金額は、以下の通り、交通手段や通勤距離によって異なる。

参考:国税庁「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
参考:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当

テレワークの導入で通勤手当の廃止が増加

 働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症防止対策として、テレワークを導入する企業が増加している。それに伴い、通勤手当を廃止している企業も増えているようだ。ここでは、通勤手当廃止の背景や、通勤手当の代替案として導入が進んでいる「在宅勤務手当」について紹介する。

通勤手当廃止の背景
 通勤手当は、電車などの公共交通機関や自家用車を使用してオフィスに通勤することを前提とした手当だ。そのため、テレワークの導入で出社を不要としている場合、「通勤」手当の支給は不適当であると企業が判断していることが、通勤手当廃止の背景のようだ。

 ただし、2020年7月20日発行の税務通信No.3614では、テレワークの長期化における非課税通勤手当の取り扱いについて「このままテレワークが長期化した場合でも、通勤手当は引き続き非課税となるとみられる」との見解が述べられている。従業員の本来の勤務地に変更がないことや、テレワーク期間中に出社する可能性がゼロではないことなどから、通勤手当は「従業員の出社の可能性を踏まえた一定の合理性をもって支給される手当」と捉えられている。なお、これは出社が想定される従業員が対象となり、原則の勤務形態がテレワークである場合を除くことに注意しよう。

在宅勤務手当を導入する企業の増加
 通勤手当を廃止する一方で、テレワーク(在宅勤務)の環境整備費用補助、通信費補助などを目的とした「在宅勤務手当」を導入する企業も目立つようになった。在宅勤務手当の支給方法には、大きく「現金支給」と「現物支給」の2種類があり、企業によって目的や内容、金額などが異なる。在宅勤務手当の支給は、従業員の経済的負担を軽減するだけでなく、モチベーションや生産性の向上にも効果があるようだ。

参照:「今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.9 在宅勤務手当の支給方法や導入事例を紹介

在宅勤務手当は課税対象になるのか

 在宅勤務手当を導入する場合、その金額は課税対象となるのだろうか。ここでは、在宅勤務手当の課税の有無や政府の対応、テレワークに関する助成金・補助金について紹介する。

在宅勤務手当は、基本的に課税対象となる
 前述の通り、通勤手当の一部を除く手当は給与所得とみなされるため、在宅勤務手当は基本的に課税対象だ。以下に、通勤手当と同額の在宅勤務手当を支給した場合の、概算の給与例を挙げる。

例)通勤手当と同額の在宅勤務手当を支給した場合
  テレワーク導入前:月収30万円、所得税率約10%、別途通勤手当2万円(非課税)
  テレワーク導入後:通勤手当を在宅勤務手当2万円(同額・課税)に置き換え
 →導入前に比べ、2万円×10%=月額約2,000円の所得税が発生

 例のように、在宅勤務手当の導入によりテレワーク前と比較して支給される給与の手取り額が減少することもあるため、在宅勤務手当の導入は慎重に行う必要がある。

在宅勤務の通信費が一部非課税に
 2021年1月15日、国税庁は、在宅勤務の日数に応じた通信費の一部を、所得税の課税対象から外すルールを発表した。これによると「在宅勤務手当としてではなく、企業が在宅勤務に通常必要な費用を精算する方法により従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はない」としている。

 在宅勤務時の通信費に関する税制上のルールが明確化されたことで、企業は通信費が支給しやすくなり、従業員の負担を軽減する効果が期待されている。

参考:国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

テレワークに関する助成・補助
 行政や地方団体などでは、テレワークを検討・導入する企業に対し、コンサルティングや経費の一部を助成する取り組みを行っている。テレワークのスムーズな導入や環境整備のために活用するとよいだろう。
 
参照:公益財団法人東京しごと財団「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)
参照:一般社団法人日本テレワーク協会「テレワークに関する助成、補助

まとめ

 新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、企業においては引き続きテレワークの長期化が見込まれる。在宅勤務手当は目的や金額によって従業員の手取り額が減ってしまう場合もあるため、さまざまなケースを想定・計算した上で運用するとよいだろう。テレワークに関する助成・補助を行っている機関や団体もあるため、自社の状況に応じて利用を検討してみてはいかがだろうか。

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