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テレワーク導入時に就業規則の見直しは必要?押さえるべきポイントを徹底解説

2021.01.27

新しい働き方として、テレワークの導入を進める企業が増えている昨今。導入に際しては、業務システム等による環境の構築とともに、ルールの整備も必要だ。そこで本記事では、テレワーク導入において押さえておくべき就業規則の見直しポイントを実際の記載例を交えながら、注意すべき点や変更の手順について詳しく解説する。

テレワークとは

はじめに、テレワークの定義や、どのような形態があるのかを解説しよう。

テレワークの定義
テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語で、「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を指す。

似たようなシーンで使われる言葉として、リモートワークや在宅勤務といった言葉もあるが、違いを整理すると次のようになる。

・テレワーク:ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方
・リモートワーク : 会社から離れた場所で働く勤務形態
・在宅勤務 : 自宅で働くこと

テレワークとリモートワークは大きな違いはないが、テレワークは時間も含めた概念となっている点が特長と言える。

また、在宅勤務は働く場所を自宅に限定しているのに対し、テレワークやリモートワークは、自宅に限定せずオフィス以外の場所全般を指しているという違いがある。

テレワークの雇用形態
テレワークを分類すると、大きくは「雇用型テレワーク」と「自営型テレワーク」に分けられる。この記事で対象とするのは、企業に雇用されている「雇用型テレワーク」である。
さらに雇用型テレワークは、働く場所によって以下の3つに分けることができる。

図1 テレワークの働く場所による分類

テレワークは、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークを含めた多様な働き方を指す言葉となっている。

そこで、テレワークの導入やそのルール整備にあたっては、まず働く場所と対象者を定義しておく必要が出てくるだろう。

例えば、自宅勤務に限るのであれば、「従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社指定の場所に限る)」としておく。

対象者に関しても、下記条件を設けておくか等を検討しよう。
・一部の部署
・育児や介護等によって出勤が困難な者
・勤続年数による要件
・自宅の執務環境やセキュリティ環境が適正であること

テレワークで、就業規則の見直しは必要か

テレワークを導入するにあたって就業規則の変更が必要かと言えば、必ずしもそうではない。

通常勤務とテレワーク勤務で、労働時間制度のほか勤務条件が変わらないのであれば、変更の必要はない。また、1名や2名などごく少数の変更の場合は雇用契約書で明示するという方法もある。

ただし、テレワーク時には通常勤務であれば発生しない通信費等の従業員負担を伴うケースが多く、会社全体としてテレワーク勤務を導入する場合には、

・テレワーク勤務を命じることに関する規定
・テレワーク勤務用の勤務時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
・通信費などの負担に関する規定
     引用元:厚生労働省「テレワーク モデル就業規則
を就業規則で定める必要が出てくると言えよう。

就業規則とは
就業規則とは、従業員の労働条件と守るべきルールを定めた、いわば会社のルールブックである。労働契約書(雇用契約書)が一人ひとりと個別に結んだルールなのに対し、就業規則は会社全体の統一したルールだ。

従業員が常時10名を超えている事業所は、就業規則の作成、労働基準監督署への届出、従業員への周知が労働基準法で定められている。

また、その内容についても、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、ルールを設けているのであれば記載しなければならない「相対的必要記載事項」が決められている。

就業規則の絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)
1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
  並びに交代制の場合には就業時転換に関する事項
2 賃金の決定、計算及び支払の方法
  賃金の締切り及び支払の時期並びに昇級に関する事項
3 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

就業規則の相対的必要記載事項(定めをする場合には記載しなければならない事項)
1 退職手当に関する事項
2 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
3 食費、作業用品などの負担に関する事項
4 安全衛生に関する事項
5 職業訓練に関する事項
6 災害補償、業務外の疾病扶助に関する事項
7 表彰、制裁に関する事項
8 その他全労働者に適用される事項

テレワークで就業規則の見直しが必要な場合

次に、テレワーク導入に際して就業規則の見直しが必要なケースを見てみよう。

1 勤務時間や休憩時間を変更する場合
始業/終業時間の変更や、フレックスタイム制・事業場外みなし労働時間制といった勤務形態の変更など。勤務時間や休憩時間は、就業規則の絶対的必要記載事項となっているため、テレワークにあたって変更があるなら必ず記載が必要になる。

2 給与や評価制度の変更がある場合
テレワーク勤務であることを理由に基本給を減額することは、「不利益変更」に該当するため原則、従業員の合意なしでは許されない。

ただし、テレワークによって労働時間が短くなり、相応分に減額するケースは考えられる。
また、昇級・賞与等に関わる評価制度を変更する場合も、現在の就業規則の記載から変更する必要が出てくる。

3 通勤手当などの手当の規定を変更する場合
出社日数が減る分、通勤手当を現在の記載内容よりも減額する場合や算出方法を変更する場合は、テレワーク就業規則に記載をしよう。

それ以外の諸手当については、給与と同様、テレワークであることを理由に減額することは不利益変更に当たる。

4 通信費などの労働者負担が発生する場合
費用負担も「相対的必要記載事項」となっているため、ルールがあるなら就業規則に記載をしなければならない。

該当するケースが特に多い項目のため、具体的な記載例を交えて後ほど詳しく説明する。

5 テレワーク時の備品の持ち出しルールを定める場合
思わぬリスクやトラブルを防ぐために、業務に必要な通信機器類や文具等の持ち出しについてはルールを定めておくのが望ましい。対象となるものの範囲や申請・許可方法などについてルール化しておこう。

6 テレワーク時の情報セキュリティに関するルールを定める場合
テレワーク時には私有の通信機器類を利用することも多く、就業時の行動も目が届かないため、情報セキュリティに関するルールも変更・見直しが必要となるケースも多いだろう。

作業環境や、端末の保管方法、アプリケーションのインストールの可否やデータの保管方法等がポイントとなる。テレワークにおけるセキュリティ対策について詳しく知りたい方は、総務省のテレワークセキュリティガイドラインを参照しよう。
総務省:テレワークセキュリティガイドライン第4版

7 その他、業務報告の方法について等、テレワーク中の服務規程を定める場合
勤怠や業務の報告の他、目が届かないからこそ明文化しておきたい事項があれば、服務規程として記載をしておこう。

また就業規則の変更を行う場合、本則を変更するのか、あるいは別規定としてテレワーク就業規則を作成するのかは会社ごとの判断となる。

一般的には、わかりやすさの面から別規定としてテレワーク就業規則を新たに設けるケースが多く見られる。

図2 就業規則とテレワーク勤務規定の関係

テレワーク就業規則で気を付けるポイント

雇用契約書
就業規則を変更する際には、雇用契約書も見直しが必要だ。
特に「就業場所」、「労働時間・休憩・休日」に関しては、労働条件の絶対的明示事項となっているため、現在の内容を確認しておこう。

就業場所の項目は、「○○オフィス、その他会社が指定する場所」というような記載であれば問題ないが、「○○オフィス」と限定している場合には従業員の同意の上で変更する必要がある。

費用負担に関しても、定めがある場合には労働条件として明示が必要になるため注意しよう。

勤怠管理
テレワーク時であっても、労働基準法が適用されるため使用者には労働時間の把握が求められる。

通常勤務とは異なる環境で就業するテレワークにおいては、勤怠管理の方法について検討・ルール化する必要が出てくる。勤怠管理ツールの問題だけでなく、始業・終業時間や休憩時間を適正に把握・管理できる制度づくりが望まれる。

またテレワークの利用を原則、許可制とするのであれば、利用申請の方法(いつまでに誰の許可がいるのか)についても明示しよう。

通勤手当
現在の通勤手当に関する規定が「出勤日数に応じた支給」となっておらず、定期代相当額の支給や一定額の支給となっている場合には、在宅勤務によって出社日数が減ることを鑑みた規定に見直すのも良いだろう。

テレワーク勤務規定(給与)
第○条 在宅勤務社の給与については、就業規則第○条の定めるところによる。
2 前項の規定にかかわらず、在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が週4日以上の場合の通勤手当については、毎月定額の通勤手当は支給せず、実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給するものとする。“
     引用元:厚生労働省「テレワーク モデル就業規則

機器の貸し出し・費用負担
労働者の費用負担に関しては、明示が必要な項目となるため、漏れなく記載をしよう。特に注意が必要なのが、通信回線利用料や、電話料金、文具や備品などである。

テレワーク勤務規定(費用の負担)
第○条 会社が貸与する情報通信機器を利用する際の通信費は会社負担とする。
2 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務社の負担とする。
3 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は会社負担とする。
4 その他の費用については在宅勤務社の負担とする。

テレワーク勤務規定(在宅勤務手当)
第○条の2 在宅勤務社が負担する自宅の水道光熱費及び通信費用(ただし、資料送付に関する郵便代は除く。)のうち業務負担分として月額○○○○○円を支給する。“
     引用元:厚生労働省「テレワーク モデル就業規則

テレワークに必要な通信回線利用料については、私用での利用か公用での利用かを区別することは実質不可能なため、従業員の負担とするか、手当として支払うケースが多い。

同様に電話の通話料についても、個人負担とするか、請求明細から業務用通話分のみを会社が負担するかを決めておく必要があるだろう。

業務の開始・終了の報告
テレワークで課題となるのが、勤怠管理・在席管理・業務管理の難しさや報告・連絡などのコミュニケーションの不足である。
この問題をクリアするためにも、テレワーク中の始業・終業時刻の記録方法や業務報告方法についてルールを定めて、就業規則として周知するのが望ましいだろう。

テレワーク勤務規定(業務の開始及び終了の報告)
第○条 在宅勤務者は就業規則第○条の規定にかかわらず、勤務の開始及び終了について次のいずれかの方法により報告しなければならない。
(1)電話
(2)電子メール
(3)勤怠管理ツール

第○条の2 モバイル勤務者が自宅から直行あるいは事業場外から直帰する場合は就業規則第○条の規定にかかわらず、勤務の開始及び終了について次のいずれかの方法により報告しなければならない。
(1)電話
(2)電子メール
(3)勤怠管理ツール“
     引用元:厚生労働省「テレワーク モデル就業規則

就業規則の見直し手順

最後に、就業規則を変更する際の手順をまとめておこう。上述の通り、就業規則には従業員への周知や労働基準監督署への届出が必要となるため、注意が必要だ。

変更案を作成
まずは、厚生労働省の「テレワーク モデル就業規則」等を参考に、各企業の実態に即した就業規則の変更案を作成する。新旧対照表があるとわかりやすいだろう。
また不明な点があれば、所轄の労働基準監督署へ問い合わせてみるのも良い。

従業員への説明と要望を要約
労働基準法で定められている通りに、労働者の過半数で構成する労働組合、または労働者の過半数を代表する者の意見聴取を行い、代表者の意見書を取りまとめる。

全従業員への周知
労働条件の変更がある場合には、労働者との個別合意が必要となる。就業場所や勤務時間、費用負担などの変更に伴って、条件の明示と合意を行おう。

労働基準監督署への届出
所轄の労働基準監督署に、就業規則(変更届)と前述の代表者の意見書を提出する。提出後の就業規則は、従業員がいつでも閲覧できる場所に保管しよう。

まとめ

テレワークの導入にあたっては、対象者や働く場所の定義づけにはじまり、勤怠管理方法や費用負担に関することまで、細かく就業規則の見直し・変更を図ることが必要になる。

テレワークはうまく取り入れることで生産性の向上やESの向上にもつながるもの。単に就業規則として文書化するのではなく、まずはテレワークを実施する従業員の働きやすさや労務管理のしやすさを踏まえた制度設計が肝要だ。

企業側・従業員側の双方にとってより良い働き方を模索した上で法令に則った就業規則の見直しを行い、スムーズなテレワーク導入を目指そう。

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