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社員による営業秘密の持ち出し、何が問題?必要な対策を解説

2021.04.08

 近年、問題となっている「社員による営業秘密の持ち出し」。大手通信会社Aの元社員がライバル社に転職した際、情報を不正に持ち出したというニュースを耳にした人も多いだろう。営業秘密が外部に流出してしまうと、「営業上の損失」や「企業の信用失墜」にも繋がりかねない。

 営業秘密の持ち出しを防止するためには、どのような対策が必要なのだろうか。今回は、社員による営業秘密持ち出しの問題点や起こりやすい場面、必要な対策について解説する。

目次

●営業秘密の持ち出しの問題点・4つのリスク
●どんなときにおこる?
●どんな対策が必要?
●まとめ

営業秘密の持ち出しの問題点・4つのリスク

 ニュースでも度々報じられている「社員による営業秘密の持ち出し」。営業秘密を始めとする「情報」は、企業にとって、「ヒト」「モノ」「カネ」に次ぐ、4つ目の経営資源とされている。

 営業秘密の持ち出しにはどのような問題点があり、企業はどのようなリスクを負うのだろうか。営業秘密持ち出しの問題点や企業にとっての4つのリスクについて、見ていこう。

問題点
 社員による営業秘密の持ち出しの問題点は、「社内における問題」と「社外における問題」に分けられる。「社外における問題」については、「4つのリスク」として後ほど紹介する。

 「社内における問題点」としては、「秘密保持契約」との関係が挙げられる。秘密保持契約とは、「情報の持ち出し」や「不正利用」を未然に防ぐために、社員との間で結ぶ契約のことで、入社時に締結されることが多い。秘密保持契約を結んでいる社員が営業秘密を持ち出した場合、民法上の「債務不履行」とみなされる。

 また、「秘密保持義務違反」を懲戒処分の条件の1つとしている企業も少なくない。「秘密保持義務に違反した場合、懲戒処分の対象となる」旨を就業規則に記載していた場合、営業秘密を持ち出した社員は懲戒処分の対象となる。

リスク①:損害賠償
 営業秘密の1つである「顧客情報」が持ち出されると、顧客の「氏名」「電話番号」「住所」といった「個人情報」が流出してしまう。個人情報が悪用され顧客が不利益を被った場合、企業は顧客から「損害賠償責任」を追及される可能性がある。

 被害者1人あたりの損害賠償額は、さほど高額にはならない。しかし、一度に大勢の顧客情報が流出してしまえば、企業が支払いを求められる損害賠償額は莫大な金額になることもある。損害賠償の請求額によっては、企業の規模に関わらず、会社存続の危機に直面することもあるだろう。また、損害賠償請求に発展すれば、企業に対する社会的信用の失墜にも繋がりかねない。

リスク②:技術情報やノウハウの流出
 販売開始前の商品・システムなどの「技術情報」や、社内で蓄積してきた「ノウハウ」も、営業秘密の1つだ。営業秘密の持ち出しにより、自社独自の技術情報やノウハウが、ライバル社に伝わることも少なくない。自社の技術情報やノウハウをライバル社に利用されてしまえば、市場における自社の競争優位性が損なわれ、営業上の損失が発生する可能性がある。

リスク③:顧客の流出
 自社の顧客情報がライバル社に渡って流出しまえば、ライバル社が自社の顧客に対して営業活動をすることもあるだろう。そのため、営業秘密の持ち出し、顧客の流出にもつながりかねない。

リスク④:刑事罰
 営業秘密の1つである「個人情報」は、「個人情報保護法」の保護対象となっている。個人情報保護法とは、企業における個人情報の取り扱いを規制する法律のこと。個人情報を取り扱うすべての事業者が、個人情報保護法の対象だ。

 個人情報保護法で定められた義務に違反した事業者は、国から「指導・助言」「勧告」「命令」などを受ける。国からの命令に従わない場合、「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科される可能性がある。社員が個人情報を盗んだり、他社に提供したりした場合の罰則は、「1年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」だ。この罰則は、情報流出元の企業にも適用される。

営業秘密の流出はどんなときに起こる?

社員による営業秘密の持ち出しは、社員の「退職時」に起きるのが一般的だ。

 元社員が「ライバル社に転職する」「同業の事業を行う会社を新たに立ち上げる」といった際に、営業秘密が持ち出されることが多い。こうしたケースでは、新しい職場で「顧客情報」や「ノウハウ」を不正に活用することを目的に、営業秘密が持ち出されてしまう。また、在職時の「自社への不満」が大きいことを理由に、営業秘密を持ち出す社員もいるようだ。

 営業秘密の持ち出しは、企業に見つからないよう秘密裏に行われる。情報をいっぺんにではなく、少しずつ持ち出すケースも多いようだ。

営業秘密を守るために必要な対策とは?

 先ほど紹介した通り、営業秘密が持ち出されると、企業は大きな影響を受ける。社員による営業秘密の持ち出しを防ぐには、しっかりとした対策を講じることが必要だ。企業が講じるべき対策について、見ていこう。

秘密保持契約の締結
 まず必要なのが、「秘密保持契約」の締結だ。「入社時」に締結するのが一般的だが、情報漏えいリスクを軽減させるためには、「機密情報が多いプロジェクトへの参加時」や「退職時」にも、改めて秘密保持契約を結ぶことが望ましい。秘密保持に関する誓約書を作成し、社員に署名・捺印をしてもらおう。

就業規則への明記
 先ほど紹介した通り、就業規則に「秘密保持義務に違反した場合、懲戒処分の対象となる」旨を記載していた場合、営業秘密を持ち出した社員を懲戒処分できる。懲戒処分は、社員にとって、金銭的・心理的ダメージの大きな処分だ。そのため、就業規則において、懲戒処分の対象となる行為に「営業情報の持ち出し」を明記することにより、営業秘密の持ち出しを心理的に抑止することができる。具体的には、就業規則の「服務規律」の1つとして「営業情報の持ち出し」を禁止しておくと良いだろう。

アクセス制限の実施・アクセス記録の確認
 機密情報への「アクセス制限の実施」や「アクセス情報の確認」も、営業秘密の持ち出しを防ぐために必要な対策の1つだ。まずは機密情報を「役員外秘」「部外秘」「社外秘」などに分類しよう。次に、「業務上、その情報をどうしても知っていないといけないのは誰か」という観点から、「どの情報に誰がアクセスできる」ようにするかを決定する。その上で、アクセス制限の実施やアクセス記録の確認を行おう。

紙ベースの情報の管理
 「顧客の名刺」や「紙として保管している顧客リスト」といった「紙ベースの情報」も、営業秘密に含まれる。そのため、営業秘密の持ち出しを防ぐには紙ベースの情報も管理することが望ましい。「営業秘密に関わる書類は、鍵のかかる棚に保管する」「書類を取り出す際には、管理簿への記載を求める」といった対応を検討すると良いだろう。また、社員の退職時に、名刺やファイルなどすべての情報を確実に回収することも重要だ。

まとめ

「営業上の損失」や「企業の信用失墜」に繋がりかねない、社員による「営業秘密の持ち出し」は、社員の退職時に発生することが多い。「損害賠償」や「技術情報やノウハウの流出」といったリスクを回避するためにも、しっかりした対策を講じることが重要だ。「秘密保持契約の締結」や「アクセス制限の実施・アクセス記録の確認」などの対策を実施し、営業秘密が社外に漏れないようにしよう。

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