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【2021年4月適用】令和3年度税制改正大綱の変更ポイント!

2021.03.29

 2020年12月21日、「令和3年度税制改正大綱」が閣議決定された。ポストコロナを見据え、経済構造の転換・好循環の実現を図るための改正が行われる予定だ。今後の改正により、どのような変化が起こるのか知りたいという企業の担当者も少なくないだろう。

 今回は、財務省が公表した『 令和3年度税制改正(案)のポイント』に基づき、「令和3年度税制改正大綱」における変更ポイントを解説する。内容をしっかり理解して、2021年4月以降の税制改正に備えよう。

目次

●納税環境整備
●デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設
●カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
●人材確保等促進税制
●中小企業における所得拡大促進税制の見直し
●まとめ

納税環境整備

 「令和3年度税制改正大綱」の中でも、多くの企業に関わってくるのが「納税環境整備」だ。具体的には、「税務関係書類における押印義務の見直し」や「電子帳簿等保存制度の見直し」などが該当する。納税環境整備の概要について、見ていこう。

税務関係書類における押印義務の見直し
 2020年、政府は行政手続における押印義務の見直しの方針を発表した。それを踏まえ、税務署長等に提出する「納税関係書類」についても、押印義務が見直されることになった。実印や印鑑証明書を必要とする手続などを除いては、押印義務が廃止される予定で、地方公共団体の長に提出する「地方税関係書類」についても同様だ。

 2021年4月1日以降に提出する税務関係書類について、押印義務の廃止が適用される。また改正の趣旨を踏まえ、施行日以前においても、押印を要しない税務関係書類については、押印がなくても改めて求めない方針となっている。

電子帳簿等保存制度の見直し
 経済社会のデジタル化を踏まえ、2022年1月1日から、帳簿書類を電子的に保存する際の手続が抜本的に簡素化される。電子帳簿等保存制度の見直しは、「経理の電子化による生産性の向上」や「テレワークの推進」「クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上」を目的としている。スキャナ保存制度については、ペーパーレス化を一層促進する観点から、手続き・要件を大幅に緩和。併せて、電子データの改ざん抑止のための措置が予定されている。具体的な変更内容を、表にまとめた。

 この他、「スマートフォンを使用した決済サービスによる納付手段の創設」や「個人住民税の特別徴収税額通知の電子化」なども検討されている。

デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設

 「令和3年度税制改正大綱」では、デジタル技術を活用した企業変革を進めるため、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に向けた措置の実施も示された。クラウド化等、「つながる」デジタル環境の構築による企業変革に向けた設備投資を実施した場合、2年間の時限措置として、「税額控除」または「特別償却」が受けられるようになる。適用されるための要件や、課税の特例について見ていこう。

適用されるための要件
 大前提となるのが、「青色申告書を提出する法人」であるということだ。その上で、産業競争力強化法の改正による「事業適応計画(仮称)」の認定を受けた法人が対象となる。対象となる法人が、「デジタル要件(D)」と「企業変革要件(X)」の両方を満たしている場合、措置が適用される。

課税の特例
 「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設」による課税の特例について、表にまとめた。

 「繰延資産」とは、クラウド技術を活用したシステムへの移行に要する初期費用のことを指す。「機械装置」と「器具備品」は、ソフトウェアまたは繰延資産と連携して使用するものに限られる。

 設備投資総額の上限は、300億円。税額控除の控除上限は、後ほど紹介する「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」と合わせて、当期法人税額の20%までとなっている。

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設

 2050年カーボンニュートラルに向けた、投資促進税制も創設される。「脱炭素化効果の高い先進的な投資」を実施すると、3年間の時限措置として、「税額控除」または「特別償却」が適用されるようになる。脱炭素化効果の高い先進的な投資には、「化合物パワー半導体等の生産設備への投資」と「生産プロセスの脱炭素化を進める投資」が該当する。適用されるための要件や、課税の特例について、見ていこう。

適用されるための要件
 先ほど紹介した「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制と同様、「青色申告書を提出する法人」かつ「事業適応計画(仮称)の認定を受けた法人」が対象となる。その上で、以下のいずれかの要件を満たす設備を取得した場合、措置が適用される。

 なお、需要開拓商品とは「燃料電池または化合物パワー半導体のうち、特に優れた性能を有するもの」を指す。

課税の特例
 「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設」による課税の特例について、表にまとめた。

 設備投資総額の上限は、500億円。税額控除の控除上限は、先ほど紹介した「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制」と合わせて、当期法人税額の20%までとなっている。

人材確保等促進税制

 コロナ禍の現状を踏まえ、賃上げおよび投資の促進に係る税制の見直しも行われる。「新たな人材の獲得」や「人材育成の強化」などの観点から、新規雇用者に対する給与を一定割合以上増加させた企業に対して、新規雇用者給与等支給額の一定割合を税額控除できる措置が講じられるようになる。この措置は、2年間の時限措置だ。加えて、事業変革に向けた人材投資(教育訓練費)を増やした企業に対しては、税額控除率が上乗せされる。現行制度と改正案の違いを、表にまとめた。
 変更のポイントを押さえ、活用できる制度があるか確認しよう。

中小企業における所得拡大促進税制の見直し

 中小企業全体として雇用を守りつつ、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えするため、「中小企業における所得拡大促進税制」が見直される。 「適用要件の見直し」や「適用期限の2年延長」が行われる予定。現行制度と改正案の違いを、表にまとめた。

 「要件の見直し」や「税額控除の変更点」などを、正しく理解しよう。

参考:財務省『 令和3年度税制改正(案)のポイント

まとめ

 「令和3年度税制改正大綱」が公表されたことを受け、「納税環境整備」や「投資促進税制の創設」といった措置が実施される予定だ。ポストコロナの時代に企業として成長するためには、税制改正の内容を正しく理解することが必要となる。その上で、「投資」や「新規人材の確保」「給与の増額」など、企業としての対応を検討してみてはどうだろうか。

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