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デジタル庁とは 創設の背景や企業への影響を解説

2021.09.29

2021年9月に発足する「デジタル庁」の役割や創設の背景を知りたいと考える担当者もいるのではないだろうか。デジタル庁が具体的にどのような取り組みを行うのか、企業への影響が気になることもあるだろう。今回は、デジタル社会の実現を目指して新設されるデジタル庁について、企業への影響を踏まえて解説する。

目次

●デジタル庁とは
●デジタル庁が創設される背景
●デジタル庁が具体的に取り組むこと
●デジタル庁が企業に与える影響
●まとめ

デジタル庁とは

デジタル社会の実現を目指し、2021年9月1日に発足する「デジタル庁」。行政のデジタル化を推進する関連6法が2021年5月に可決・成立したことで創設される、新しい省庁だ。デジタル庁は、デジタル社会の形成に向けた「司令塔」と位置づけられており、「日本社会全体のデジタル化を推進すること」を目的としている。

国はデジタル庁を置くことで、人々の生活をより良いものに変革する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を取り入れ、今後5年で官民のインフラを一気に作り上げたいとしている。今後は、これまでの縦割り行政を見直し、社会全体のデジタル化を通じた「行政の効率化」や「住民サービスの向上」を実現するための施策が各所で進められていくだろう。

デジタル庁が創設される背景

デジタル庁は、なぜ新しく創設されることになったのだろうか。ここでは、デジタル庁が創設されることとなった背景の裏にある日本社会の課題について見ていこう。

コロナ禍で露呈した「デジタル化の遅れ」
デジタル庁が新設される背景には、新型コロナウイルス感染症の流行によって「デジタル化の遅れ」が表面化したことが挙げられる。コロナ禍では、在宅勤務を導入した企業も多いだろう。そのなかで、安全な通信環境が整っていないことや、書類への押印といった「オンライン化できない業務への対応」が問題となった企業もあるのではないだろうか。

コロナ禍における、特別定額給付金事業などをはじめとした「給付金」や「助成金」等の手続きにおいても、手続きシステムが一時滞るなど、多くのトラブルが発生し問題となった。このような現状を打破するための政策の一つが「デジタル庁の創設」だ。

民間企業では2025年以降、多額の経済損失が生まれる可能性
上記で述べた「デジタル化の遅れ」は、行政だけでなく、各企業においても危機的な状況につながる恐れがある。経済産業省の調べによると、現在使用しているITシステムの老朽化・肥大化が進むことで、今後、運用や保守に多額の費用がかかると想定されている。

さらに、現状では企業のDXも思うように進んでおらず、このままの状態が続くと2025年以降で毎年最大12兆円の経済損失が生まれる可能性があるとの指摘もある。経産省が「2025年の崖」と称し、警鐘を鳴らすこれらの状況を回避するために、デジタル庁によるDX推進が期待されている。

デジタル庁が具体的に取り組むこと

デジタル庁が具体的に取り組むこと

デジタル庁は、今後どのような取り組みを行っていくのだろうか。ここでは、デジタル庁が取り組むという主な施策について紹介する。

●国、自治体のシステムの統一・標準化
第一に、国や地方自治体において非効率な行政組織や手続きなどを見直し、ITシステムの統一や標準化を進める見通しだ。例えば、各自治体が住民の情報を扱うシステムは、これまで各自治体ごとに個別で導入してきたが、システムの維持管理や改修等の「人的・財政的な負担」が、各自治体とって大きな課題となっていた。

デジタル庁は、各自治体が扱うITシステムを統一・標準化することで、省庁間や自治体間で滞りなく情報を受け渡しできる環境を整備し、各自治体が個別に抱えていた負担を減らしていく方針だ。

●マイナンバーカードの普及促進
デジタル庁は、特定の個人を識別するための「マイナンバーカード」の普及促進も行っていく予定だ。2016年から交付開始となったマイナンバーカードだが、人口に対する交付率は依然として低いままである。

国では、2022年度末までにマイナンバーカードを国民の大多数に交付することを目標としている。さらには、遅くとも2021年度10月までには「健康保険証」としての本格運用を開始、2024年度末には「運転免許証」との一体化などを進めていく方針だ。

●各種給付の迅速化やスマホによる行政手続きのオンライン化
コロナ禍で顕在化した各種給付手続きの課題を解決するための方策もある。給付金等の支給については、デジタル化した手続や事務処理を行うことで、早期給付の実現を目指す。
 
また、先に述べた「マイナンバー」と「預貯金口座」の紐づけ可否について検討することも重要な課題としている。国民が一人一口座をマイナンバーとともに登録し、各種公金の給付等に活用できれば、申請手続の簡素化や給付の迅速化などが期待できるだろう。一方で、口座を持たない人に対する対応など、多くの課題も残っており、今後議論が進められていく見通しだ。

●民間や準公共部門のデジタル化を支援
デジタル庁は、民間や準公共部門のデジタル化の支援も行っていく方針だ。民間に対しては、業種を超えて情報システムの相互連携を進められるよう整備や普及に努める。さらには、規制の見直しや合理化などを行ってデジタル化を促進してく方針だ。 

「準公共団体」のデジタル化支援についても見ていこう。国民の生活に密接な関係のある「医療」「教育」「防災」等の情報システムに関しては、整備方針を関係府省とともに策定・推進する見通しだ。加えて、情報システムの整備を統括・監理するほか、緊急的な整備が必要なシステム等については、デジタル庁と各府省が共同で整備を行うなど、効率化を目指した対策が進められていくようだ。

デジタル庁が企業に与える影響

国が主体となってデジタル化を進めれば、その影響は大企業だけでなく、中小企業にも波及すると考えられる。中小企業でIT化が進めば、生産性が向上するほか、これまでにない新しい商品やサービスが生まれるなど、収益力アップも期待できるだろう。

また、さまざまな行政サービスがデジタル化することで、統計情報の正確化、迅速化が期待できる。これらの恩恵を受けられる企業では、現状よりもさらに付加価値の高いサービス・商品を提供出来るようになるのではないだろうか。

さらには、デジタル化により時間や距離の制約がなくなることで、働き方にも大きな変化が表れるだろう。場所を選ばず仕事を行えるなど、多様な業務スタイルが可能となっていくはずだ。

まとめ

社会全体のデジタル化を目指して発足される「デジタル庁」。デジタル庁は「行政の効率化」や「住民サービスの向上」を目的とし、行政だけでなく民間企業においてもデジタル化支援などの方策を実施していく方針だ。今後、抜本的な改革が進んでいく中で、企業によっては直接的・間接的な影響が及ぶことも想定される。デジタル庁の方針や取り組みを把握して、自社が受ける影響について考えてみてはどうだろうか。

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