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おさえておきたい!バックオフィスの基礎知識Vol.3 社会保険料の査定とは?バックオフィスが行う業務を解説

2021.11.10

社会保険に加入している被保険者の実際の報酬と、社会保険料を計算する際の基準額とに大きな差が生じないよう、企業が毎年行うべき「社会保険料の査定」。従業員ごとに金額を算出する必要があるため、事前に内容を理解し、備えておくことが重要だ。

今回は社会保険料の査定内容や査定期間、管理部が行う業務を紹介する。査定のタイミングやフローを押さえ、スムーズに対応できるようにしよう。

目次

●社会保険料の査定とは
●社会保険料の査定期間はいつ?
●定時決定で管理部が行う業務
●まとめ

社会保険料の査定とは

社会保険料の査定とは、社会保険料を算出する際の基準となる「標準報酬月額」から、被保険者ごとの社会保険料を計算することだ。まずは、算定の基準となる、標準報酬月額の求め方や、社会保険料の算出方法を見ていこう。

<標準報酬月額の求め方>
「標準報酬月額」は、「報酬月額(一定期間の報酬の平均額)」を用いて求める。報酬月額は、一定の金額幅で厚生年金保険が32段階、健康保険が50段階の等級に区分されており、その区分に応じた標準報酬月額を一覧にしたものが「標準報酬月額等級表(保険料額表)」だ。一般的に、企業はこの表を用いて各従業員の標準報酬月額を決定する。

参考: 全国健康保険協会「令和3年度保険料額表(令和3年3月分から)」

<標準報酬月額を算定するための「報酬」とは>
標準報酬月額を算定する際の「報酬」には、従業員が労働の対価として受け取る金銭または現物で支給されるものを全て含む。報酬に含むものと含まないものの、具体的な内容は以下の通りだ。

年3回以下で支給される賞与については、別途「標準賞与額」を計算し、社会保険料を算出する必要がある。

参考: 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

<各保険料の算出方法>
社会保険の保険料は、「標準報酬月額×各保険料率」の計算式で算出するか、前述の「標準報酬月額等級表(保険料額表)」を用いて求めることができる。

健康保険料率と介護保険料率は、企業が属する健康保険が「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の場合には都道府県ごと、「健康保険組合」の場合はその組合ごとに決定される。年によって保険料率が改定される場合があるため、最新の情報を用いて計算することに注意しよう。また、厚生年金保険料率は国内一律で、2017年9月を最後に引き上げが終了し、現在は18.3%で固定されている。

なお、社会保険料は企業と従業員が折半する必要があるため、双方の実際の負担額は「標準報酬月額×各保険料率×0.5」または「標準報酬月額等級表(保険料額表)」に記載されている「折半額」となる。

参考:厚生労働省「厚生年金保険料率の引上げが終了します」

社会保険料の査定期間はいつ?

標準報酬月額の決定や改定のタイミングには、「定時決定」「資格取得時」「随時改定」「育児休業等の終了時」の4つのパターンがあり、企業はそれぞれのタイミングに応じて必要書類を提出しなければならない。ここでは、それぞれの査定期間や適用期間を押さえよう。

参考:全国健康保険協会「標準報酬月額の決め方」
参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

定時決定
「定時決定」とは、昇給などで変動した報酬に対応した標準報酬月額とするために、毎年1回、標準報酬月額の見直しをすること。一般的に「社会保険料の査定」とはこの定時決定を指す。

対象となるのは7月1日現在で雇用する全ての被保険者で、査定期間は4月から6月に支払った報酬だ。この間に支払った報酬の平均額を「標準報酬月額等級区分」にあてはめて、標準報酬月額を決定し、その年の9月から翌年8月まで適用する。

参考:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」

資格取得時
資格取得時の決定は、被保険者となる従業員を雇用したタイミングで査定を実施する。ただし、雇用した時点では当該従業員に報酬を支払った実績がないため、標準報酬月額は就業規則や労働契約等の内容に基づき、被保険者の報酬月額を仮で算定して届け出る必要がある。具体的な決定方法は、以下の通りだ。

算出した標準報酬月額の適用期間は、資格取得月からその年の8月まで(6月1日から12月31日までに資格取得した人は、翌年の8月まで)だ。

参考:日本年金機構「資格取得時の決定」

随時改定
昇格や降格などによって被保険者の固定的賃金に大幅な変更があった場合は、「随時改定」を行うことで定時決定を待たずに標準報酬月額を改定しなければならない。随時改定は、被保険者が以下の3つの条件を全て満たす場合に行う。

(1)昇給または降給等により、固定的賃金に変動があった
(2)変動月から3カ月間に支給された報酬で求められる標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じた
(3)3カ月とも支払基礎日数(給与計算の対象となる日)が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

随時改定によって決定した標準報酬月額は、6月までに改定された場合は当年の8月まで、7月以降に改定された場合は翌年の8月まで適用する。

参考:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」

育児休業等の終了時
育児休業等の終了日に満3歳未満の子どもを養育している被保険者は、随時改定の条件に該当せずとも、以下の条件を満たしていれば標準報酬月額の改定を実施する。

(1)育児休業終了日の翌日が含まれる月以後3カ月分の報酬(支払基礎日数が17日未満の月は除く)によって算出した標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること
(2)育児休業終了日の翌日が含まれる月以後3カ月のうち、支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である月が少なくとも1カ月以上あること
※パートタイマー等で、短時間就労者の支払基礎日数が3カ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上17日未満の月の報酬月額の平均によって算定する

これによって決定した標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が含まれる月以後4カ月目から改定することが可能。適用期間は1月から6月に改定された場合は当年の8月まで、7月から12月に改定された場合は翌年の8月までだ。

参考:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」

提出書類と提出期限
それぞれの手続きで必要な書類と、提出期限は以下の通りだ。速やかに書類を整えたら、所轄の年金事務所または事務センターへ提出しよう。

 

定時決定で管理部が行う業務

定時改定では、毎年7月の指定された期日までに「算定基礎届」の提出を行う必要がある。ここでは、算定基礎届を提出するまでの管理部のフローを紹介する。

【ステップ1】提出対象者を把握する
算定基礎届の提出対象者は、7月1日現在に雇用している、全ての被保険者および70歳以上の従業員だ。なお、以下のいずれかに該当する従業員は提出が不要とされている。

・6月1日以降に資格取得した人
・6月30日以前に退職した人
・7月改定の月額変更届を提出する人(随時改定をする人)
・8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った人

【ステップ2】届出用紙を確認する
算定基礎届は、6月上旬から6月下旬までの期間に企業宛てに送付される。算定基礎届には5月中旬までに届けられた被保険者の氏名や生年月日、従前の標準報酬月額が印字されているので、修正箇所や追記すべき従業員がいないかを確認しよう。

【ステップ3】算定基礎届に記入する
算定基礎届には、賃金台帳などをもとに「支払月」や「支払基礎日数」「報酬額」「報酬月額」などを記入する。なお、記載する報酬月額は、支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)のものを対象として計算することに注意が必要だ。例として、5月の支払基礎日数が17日未満であった場合は、4月と6月の2カ月間の平均額で算定される。詳しい記入方法は、日本年金機構が公開しているガイドブックを参考にしよう。

参考:日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和3年度」

【ステップ4】算定基礎届を提出する
算定基礎届は、「電子申請」「電子媒体(CDまたはDVD)」「郵送」「窓口持参」のいずれかの方法で提出することが可能だ。日本年金機構では、手続きの簡素化と迅速化のために電子申請による提出を推奨している。

算定基礎届の提出を無事に終えたら、9月からは新たな標準報酬月額を用いて社会保険料を計算しよう。

まとめ

社会保険料の査定を行い「標準報酬月額」を求めるためには、報酬に含むべき内容や業務フローを押さえたり、個々の事情による給与額変動の有無を把握したりしておくことが重要だ。社会保険料は従業員の給与に直結するものであるため、抜けや漏れがないようしっかりと確認しつつ作業を進めよう。

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