労務管理システムとは?サービス内容や選定方法を紹介
バックオフィス業務の要となる「労務管理」。近年の働き方の多様化で対応範囲がより広く複雑になり、「労務管理を効率化したい」「一元化できるシステムの導入を検討したい」と考える担当者もいるのではないだろうか。
今回は、労務管理の目的や主な業務、労務管理を一元化するシステムを紹介する。従業員にとって働きやすい職場環境を整えるための参考としてほしい。
目次
●労務管理とは?
●労務管理の主な業務
●労務管理の一元化システムとは?
●まとめ
労務管理とは?
「労務管理」とは、企業の経営資源の1つである「ヒト」に関する仕事を取り扱い、労働時間の管理や社会保険の手続きなどを行うことだ。まずは、労務管理の目的や労務の概要の他、似た業務を担当する「人事」との違いをおさえよう。
● 労務管理の目的
労務管理の目的は、人材を最大限に活用して企業活動を円滑に進め、企業全体の生産性や利益を向上させること。従業員が高いパフォーマンスを発揮するためには「一人ひとりが安心して働くことのできる環境をつくる」ことが重要だ。その環境づくりを担う労務管理は、企業の規模に関わらず全ての企業に必要不可欠だと言えるだろう。
テレワークやリモートワークなど、個々の従業員の働き方が多様化し、「終身雇用」が崩壊し転職も珍しくない時代となった現在、労務管理の重要性が改めて注目されている。
● 「労務」の概要と、「人事」との違い
労務では「従業員全体」を対象として、入社・退職の手続きや勤怠・給与の管理などを行う。一方、人事では「個々の従業員」を対象として、採用活動や人材育成、評価制度の構築など従業員と直接関わる業務を担当する。本来、労務と人事では異なる役割を持つが、中小企業では労務と人事を兼任したり「管理部門」としてバックオフィス業務全体を担うケースが多い。
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労務管理の主な業務
労務の仕事は多岐に渡るうえ、法令で義務付けられている内容も多い。ここでは、労務管理の主な業務を見ていこう。
【 入社・退職の手続き 】
従業員の入社時・更新時・退職時の手続きは、労務管理の一部だ。
具体的な内容は以下の通り。
●雇用契約書の交付
●労働条件通知書の交付
●給与振込口座の登録
●通勤経路の確認
●法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の作成
●社会保険の手続き
●退職証明書の交付
「労働条件通知書」は法律により交付が義務付けられており、労働契約期間や賃金など、必ず記載しなければならない項目が定められている。また、「法定三帳簿」には3年間の保存義務があることにも注意が必要だ。
この他、企業によっては社員証の交付、名刺の発注、制服の準備などが発生する場合もある。
【 勤怠管理 】
労務管理の基本となるのが「勤怠管理」だ。勤怠管理の内容は人事評価や給与と関わる点も多いため、正確に把握することが重要となる。
管理の対象となる項目は以下の通り。
●始業時間・終業時間
●休憩時間
●時間外労働時間
●休日出勤
●遅刻・早退
●欠勤
●年次有給休暇
2019年4月の法改正によって、年次有給休暇を年10日以上付与している従業員に対しては年5日以上の有給を取得をさせることが義務化されている。従業員の年次有給休暇の取得状況を適切に管理することも重要な業務だ。
【 給与計算 】
勤怠管理と並び、毎月行うのが従業員の給与計算だ。勤怠管理表や人事評価を基に、従業員ごとにその月の賃金を計算する。居住地や家族構成などによって通勤手当や家族手当などの手当額が異なり、所得税や住民税の控除額も変わるため、正確な作業が必要だ。
【 福利厚生 】
生産性の向上や離職率の低下のための「福利厚生」も、労務管理で欠かすことのできない仕事だ。福利厚生は法律で義務付けられている「法定福利」と、企業が任意で供与する「法定外福利」の2つに分けられる。それぞれの具体的な内容は次の通り。
<法定福利厚生>
●健康保険
●厚生年金保険
●介護保険
●労災保険
●雇用保険
●子ども・子育て拠出金
<法定外福利厚生>
●住宅にまつわること(社宅・社員寮、住宅手当・家賃補助など)
●健康・医療にまつわること(健康診断、人間ドック、カウンセラーの設置など)
●育児・介護にまつわること(法定以上の育児・介護休業、託児所・保育所の設置など)
●休暇にまつわること(法定以上の有給休暇、リフレッシュ休暇など)
●慶弔・災害にまつわること(結婚祝い金、災害見舞金、遺族年金など)
●職場環境にまつわること(テレワークの導入、食堂・カフェの設置など)
●財産形成にまつわること(持株制度、財政貯蓄制度など)
●自己啓発にまつわること(資格取得支援、外部セミナー参加補助など)
●レクリエーションにまつわること(社員旅行、ランチや飲み会の費用補助、保養所利用の費用補助など)など
【 社会保険の手続き 】
社会保険は福利厚生の一部に含まれるため、健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険の加入・喪失手続きも労務が行う。手続きを行う際に従業員から収集する「マイナンバー」を適切に管理することも重要な仕事となる。
なお、社会保険の手続きが必要となるタイミングは次の通り。
●入社時(資格取得の届け出、加入手続きなど)
●退職時(資格喪失手続き、保険証の回収、離職票の交付など)
●休職時(休職に伴う保険料手続き、給付金や手当金の請求手続きなど)
●異動時(住所変更手続きなど)
【 規則・規程の整備 】
企業内の各種規則・規程の作成・管理も労務管理の1つだ。常時使用する従業員が10名以上の企業では「就業規則」を労働基準法に基づいて作成し、届け出なけれなならない。
従業員が安心して働けるよう、規則や規程に基づいた運営をしていく他、整備した内容を従業員に周知していくことが重要だ。
【 労働安全衛生 】
労務管理では「職場の安全衛生」「従業員の健康管理」も重要だ。2015年12月からストレスチェックの実施が義務化されたことに加え、2019年には労働安全衛生法が改正されるなど、快適な職場環境の実現が求められている。
労働安全衛生の具体的な内容は次の通り。
●健康診断
●ストレスチェック
●インフルエンザ予防接種
●産業医面談
●安全衛生委員会
●ハラスメント対策
●労災対応 など
労務管理の一元化システムとは?
労務管理の一元化システムとは、さまざまな業務を効率化させるべく労務管理に関するさまざまな種類のデータや情報を1つの場所にまとめ、管理・運用するためのシステムのこと。ここでは、労務管理を一元化するメリットやシステムでできる仕事の例、労務管理システムを選ぶ際のポイントを紹介する。
● 労務管理を一元化するメリット
労務管理を一元化することで、以下のメリットが期待できる。
●書類の作成・発行時間の短縮化
●勤怠管理・給与計算の効率化
●業務の省人化・属人化解消
●書類のペーパーレス化
●ヒューマンエラーや不正の防止
まず、情報を一元化することで書類の作成や収集、管理が行いやすくなり、作業時間を短縮させることが可能だ。従業員自らシステムに情報を入力できるシステムを利用すれば、転記作業や受け渡し、差戻しなどの手間も省ける。
また、これまで紙ベースで管理していたさまざまな書類をデータとしてまとめることで、ペーパーレス化につながるというメリットもある。クラウド上で情報を管理すれば、テレワークで労務管理を行うことも可能だ。
● 労務管理システムでできること
労務管理システムを利用して行える労務の例は、以下の通り。
<入社・退職、在職中の手続き>
・雇用契約書の作成・締結
・秘密保持誓約書の作成・締結
・個人情報の管理(扶養家族の追加・住所変更など) など
<年末調整>
・扶養控除等申告書の作成・提出
・保険料控除申告書の作成・提出
・給与支払報告書の作成・提出
・源泉徴収票の作成・発行・提出 など
<社会保険手続き>
・マイナンバーの収集・管理
・社会保険・雇用保険関係の書類作成・提出
・扶養控除申告書などの作成・提出
・各種届け出の電子申請 など
<勤怠管理・給与計算>
・勤怠時間の自動計算
・給与の自動計算
・個人情報に応じた税率の割り出し など
社会保険については、2020年4月より特定法人における一部手続きで電子申請が義務化されている。政府が提供しているe-GovにAPI対応しているシステムを利用すれば、時間を問わずシステム上から簡単に電子申請を行うことが可能だ。
● 労務管理システムを選ぶ際のポイント
労務管理システムを選ぶ際に気を付けるべきポイントは次の通りだ。
●費用や契約期間、トライアル期間の有無
●どのような業務・帳簿・法律に対応しているか
●他のシステムと連携できるか
●従業員が直接入力できるか
●操作や入力作業がわかりやすいか
●サポート体制が充実しているか
システムによっては機能が限られているものや特定の機能に特化したものもあるため、効率化させたい業務をあらかじめ洗い出してから比較検討するとよいだろう。
まとめ
労務管理の業務は、多岐に渡るだけでなく個々の従業員の状況によって複雑になる。管理システムを利用して情報を一元管理・運用することで、業務の効率化や属人化解消などにつながる。電子申請に対応しているシステムを活用すれば、ペーパーレス化が促進され、労務管理部門のテレワーク実現というメリットも期待できる。システムを選ぶ際に注意すべきポイントをおさえながら、導入を検討してみてはいかがだろうか。