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人事業務のDXを推進するワークフローとは。DXの目的別に代表的なITサービスと検討ポイントも解説

2022.06.20
オフィスのミカタ編集部

急速に広まるDXの波は、大企業だけでなく中小企業へ、そして営業部門だけでなく管理部門へと浸透してきている。特に人事領域は、採用環境が厳しくなる中で戦略人事を推進するなど、変革が求められているため、DX化を急ぐ企業も多いだろう。そんな期待の一方で、DXをどのように進めたら良いのか、どんなITツールを導入するのが効果的なのかと頭を悩ませている読者も増えているのではないだろうか。

そこでこの記事では、人事業務のDXに向けたワークフローを解説するとともに、目的別におすすめITサービスや導入時の比較のポイントについて紹介する。

人事業務のDX推進を積極的に行う企業が増えている理由

多くの企業が人事領域で積極的にDXに取り組んでいるという事実は、経営にも影響を及ぼす人事課題が山積していることの裏返しでもある。ここでは具体的にDX推進の理由をあげていこう。

自社の人事課題というコア業務への戦略的集中が可能になる
まずは、IT導入によって業務効率化を図りコア業務に集中したいという狙いがある。労働人口の減少とともに、採用にかかる手間とコストは放っておけば増す一方。DX化によってオペレーション作業を削減することができれば、従業員と向き合ったり新たな人事施策に取り組んだりとコア業務に注力できるようになる。

戦略人事に活用できるデータセットを構築できる
DXの推進は戦略人事にもつながる。IT導入によってデータを蓄積すれば、自社の課題を明確にできるだろう。例えば、採用率や離職率、残業時間、従業員満足度といったデータを全社単位でなく、店舗や部門、役職単位で集計・分析できれば、これまで見えなかった課題も見えてくる。

タレントマネジメントなど人材配置の最適化が進む
人材不足が加速する中で、今いる従業員がスキルや経験を最大限に発揮できる環境を目指してタレントマネジメントに取り組む企業も多いだろう。そこでもDX化がカギとなる。上述のようなデータを活用すれば、人的リソースの配分・配置を最適化できる。

人材配置の最適化により従業員エンゲージメント向上などが見込める
人材配置の最適化ができれば、DXの効果は従業員エンゲージメントの向上などにも波及するだろう。エンゲージメントの向上や離職率の低下は、企業全体の生産性向上にもつながっていく。

人事領域におけるDXは戦略的人事における一つの施策

DXは、IT化やデジタル化と混同されがちだが、DXはデジタル化によって変革(トランスフォーメーション)することが目的だ。IT導入自体が目的ではない。
人事領域においては、戦略的人事の実現に向けた施策の一つだと言えるだろう。DXはあくまで手段としてその先を見据えて取り組むことで、真のDX化と戦略人事を実現できるのだ。

人事業務のDX推進のワークフロー

ここからは、実際に人事業務のDX化を進めていくフローについて解説する。DX化を急ぐあまりに一足飛びで進めてしまうと、本質的な課題解決につながらない場合もあるため、1ステップずつ丁寧に進めてほしい。

人事業務における自社の課題を抽出する
まずは、的確なゴールを設定するために、人事業務における課題を抽出することから始めよう。課題の大小や深刻度合いはさまざまだろうが、ブレインストーミングのように可否の判断はせずに列挙していくと良い。

自社の人事課題に優先順位をつけボトルネックを特定する
課題を抽出できたら、整理をしながら本質的な課題に迫っていこう。複雑に絡み合う課題のボトルネックになっている所はどこかを探し出すことが重要だ。

自社の人事課題に合致するITサービスを検討・導入する
取り組むべき課題を見極めたら、その目的に合致するITサービスを見つけよう。HRテックの多くは、採用、育成、配置、評価、労務などカテゴリーごとに特化している。カテゴリーで絞った上で、後述する検討時のポイントをもとに自社にマッチするものを導入しよう。

ITサービスを通じて人事のデータセットを構築し人事施策に落とす
繰り返しになるがIT導入はあくまで手段であって、導入すれば解決するものではない。得られたデータをもとに課題の原因を深堀したり、仮説の検証をしたりしながら、人事施策に落とし込もう。施策を実施したら、またツールを使って結果を検証し、目的達成まで改善を繰り返すことが必要だ。

人事業務のDX推進に必要なITサービスの検討の主なポイント

人事業務のDXを行うにあたり、どのような観点でITサービスを選べば良いのか、4つの視点を紹介しよう。

サービスの解決できる課題が導入目的を満たしているかどうか
1つ目は、自社の導入目的に合っているかどうかだ。例えばタレントマネジメントツールにしても、大企業向けの適正な配置を主眼に置いたものもあれば、新卒内定者フォローツールに近いもの、人材育成にフォーカスしたものなどさまざま。サービスの特徴などを調べながら絞り込んでいこう。

導入・運用コストと解決できる課題の投資対効果が高いかどうか
2つ目は、コスト面で投資対効果が見込めるかどうかだ。便利なサービスや機能を追い求めていたら際限がなく、コストに見合わなくなってしまう。反対に価格だけで比較したのでは効果まで低くなってしまうこともある。目的を見据えた上で、どこまで必要かどうか、導入範囲をどこまでにするかを検討する必要がある。

各種基幹システムとの連携などユーザビリティーが高いかどうか
3つ目は、システム連携を含めた使い勝手の良さだ。例えば従業員データや組織データ1つをとっても、1から入力するとなったら導入時だけでなく運用時の手間も大きい。誰がどう使うのか・管理するのか、運用時のフローを想定しながら確認しよう。

個人情報を扱うに値するセキュリティ体制を持っているかどうか
4つ目は、必要なセキュリティが備わっているかどうかだ。人事関連データには、住所や電話番号、給与、マイナンバーなども含まれることがあるだろう。そのため、外部からの不正アクセスだけでなく、アクセス権限などの内部統制機能も重要になる。比較検討時にしっかりチェックしておこう。

人事業務のDX目的に応じた代表的なサービス

最後に、人事業務のDX目的に応じた代表的なサービスを4つのカテゴリーに分けて紹介する。

採用管理 採用一括かんりくん・ジョブカン採用管理
採用管理システムは、採用業務のデータを一元管理し、業務効率化を図れるツールだ。新卒も中途も一つで管理ができる「採用一括かんりくん」や、バックオフィス業務をカバーするジョブカンシリーズの「ジョブカン採用管理」をはじめ、多数のツールが販売されている。新卒/中途/アルバイトのうち、どこに強いツールかで特色が現れる。

人材配置 HRBrain・HRMOS
人材配置に強い、いわゆるタレントマネジメントツールに属する代表的なツールには、育成・配置・評価まで幅広くカバーする「HRBrain」やビズリーチが提供する「HRMOSタレントマネジメント」などがあげられる。評価の透明性を向上させたい企業や、従業員エンゲージメントを高めたい企業にもおすすめだ。

労務管理 SmartHR・人事労務freee
煩雑な労務手続きをサポートしてくれる労務管理システム。入社手続きをペーパーレス化でき、Web給与明細や年末調整などにも対応する「SmartHR」や、勤怠管理や給与計算までできる「人事労務freee」など、対応領域はツールによって大きく異なる。

給与計算 ジョブカン給与計算・マネーフォワード クラウド給与
月次で人事担当者の大きな負担となっている給与計算をサポートしてくれる給与計算システム。リモートワークの推進により、勤怠管理から給与計算までをクラウド化したい企業も多いだろう。代表格となる「ジョブカン給与計算」と「マネーフォワード クラウド給与」は、ともにシリーズ内の勤怠管理システムと連携できる点が強みだ。

まとめ

人事業務のDX推進は、戦略的人事の実現に向けて大きな転換期となる。効果を最大化するには、自社の本質的な人事課題を見極めて、適したITツールを導入することと、導入後も継続的に検証・改善を繰り返していくことが必要だ。この記事を参考にしながら、スムーズなDX推進を目指してほしい。