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業績に基づいて支給される決算賞与。業績連動型で支給する会計上のメリットと支給時の注意点を解説

2022.09.22
オフィスのミカタ編集部

賞与の中でも業績に基づいて支給される決算賞与は、支給時期が限定されているほか、賞与支給による損金の計上時期が通常の賞与とは異なるなど、注意すべき点が多い。ここでは決算賞与の特徴や会計上のメリット、注意点などを網羅的に解説する。

決算賞与と通常の賞与の違い

決算賞与と通常の賞与には、支給時期や支払い額の決定方法に違いがある。両者の違いについて見ていく。

事業年度末のみ支給できる決算賞与
決算賞与は支給できる時期が決まっており、「その年度の決算の翌日から1カ月以内」とされている。例えば12月に決算がある会社の場合、1月末日までに決算賞与を支給しなければいけないという訳だ。決算日までの間に書類か口頭で通知する必要があるが、税務調査に備えて書類やメールなど形に残る方法で通知するケースが多い。なお、会社の業績によって支給額が決まることから業績連動型の賞与ともいわれる。

定められた時期に定額的な計算式で支給される通常賞与
通常の賞与は、毎月の給与の数カ月分という形で支給額が決まる「基本給連動型賞与」が一般的だ。多くの企業では毎年「何カ月分」かが決まっているため、社員は支給額が予想しやすいのが特徴だ。

決算賞与を支給する上でのメリット

決算賞与を支給する上で、従業員と企業にとってのメリットを紹介する。

企業全体としての業績向上に対する社員のモチベーションの向上
決算賞与を支給することは、従業員のモチベーションの向上に繋がる。通常賞与は定期の支給が多いため、もらって当然のような空気があるが、決算賞与は余剰利益がある場合の支給となることから特別感がある。それにより、「会社の業績向上に貢献した」「今期も決算賞与が出るように頑張ろう」という、会社へのロイヤリティーやモチベーションが高まる。それによりさらに企業の成長速度が高まり、従業員、企業双方にとってもメリットとなるだろう。

決算賞与支給額の損金算入による会計における節税
支給した決算賞与は損金算入できるため、節税対策として活用されることが多い。最終利益が黒字の場合、法人税を納入する必要があるが、想定よりも利益が出た場合、法人税額も上がってしまう。それならば自社の従業員に還元して、法人税を節税しようというのが狙いだ。

決算賞与の損金加入をするためのクリアすべき3つの要件

決算賞与を損金とする場合、一定条件をクリアしなければ認められない。そのクリアすべき要件を1つずつ解説していく。

支給対象となる従業員に対して個々に書面やメールで通知
決算日までに支給対象となるすべての社員に対して、支給日・支給額を通知していることが必要だ。通知の方法に具体的な規定はないが、通知したことが後日確認できるよう、書面やメールにて行うのが望ましいだろう。

決算翌日から1カ月以内の支給
決算翌日から1カ月以内に、通知した金額をすべての社員に支給することが求められる。急な資金繰りの悪化などで1カ月以内に支給できなかった場合、損金算入が認められないため注意したい。

当期に損金経理を行う
支給を通知した日の属する事業年度で損金処理をすることが求められるため、支給後の年度での損金経理はできない。決算前の忙しい時期に経理処理が増えるため、経理担当者や財務担当者による処理の抜けがないようフォローが必要だ。

決算賞与を支給する際の注意点

決算賞与には通常の賞与とは違った注意すべき点がある。しっかりと確認してミスなく支給できるようにしてほしい。

キャッシュフローが悪化しないための資金繰りの健全化
決算賞与は法人税の節税にはなるものの、キャッシュフローの悪化というデメリットが発生する。法人税で節税した金額よりも賞与として支払う金額の方が多くなるケースもあるため、キャッシュフロー計算書を元に資金計画表を作成し、支給の有無や支給額を決定してほしい。

支給対象となる従業員に対して個々に書面やメールでの通知義務
前述したように、支給対象となる従業員に書面やメールでの通知をしなければ決算賞与を損金にすることができない。通知方法の指定はないものの、税務署等から確認を求められた際に証拠として提出できるよう、書面かメールでの通知をおすすめしたい。

決算賞与にかかる所得税や社会保険料の正しい計算
決算賞与にも、通常の給与のように税金や社会保険料がかかる。ここでは計算方法を紹介する。

「社会保険料の算出方法」
標準賞与額×保険料率

毎月の給与には標準報酬月額という厚生年金や健康保険料の金額を算出する際に利用する表があるが、賞与の場合は標準賞与額を利用する。標準賞与額は税引き前の賞与総額を1000円未満で切り捨てた額を指す。

保険料率は事業ごとに決められているため、該当する保険料率を乗じて計算する。ただ、標準賞与額には上限があり、健康保険では年間累計(4月1日から翌3月31日)573万円、厚生年金は1カ月あたり150万となっているため注意したい。

「雇用保険料の算出方法」
賞与総額×保険料率

労働保険のうち、雇用保険料は賞与総額に所定の保険料率を乗じて計算する。また、労働保険のうち労災保険は全額事業主負担となり、計算式は雇用保険料と同じである。

「所得税の算出方法」
社会保険料を差し引いた賞与額×賞与の金額に乗ずべき率

賞与の金額に乗ずべき率は、扶養家族の人数や賞与額によって異なるため、財務省が告示する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で確認してほしい。

企業負担の社会保険料は翌年度の会計で損金に算入

決算賞与にも社会保険や所得税がかかることは前述した通りだが、それにより企業負担の社会保険も生じる。決算賞与により生じる企業負担分の保険料は、翌年度の会計で損金に参入することを忘れないようにしたい。決算賞与の支給については前年度の損金となるため、この2つを混同しないように注意しよう。

効率よく正しく賞与計算をするためのおすすめ給与計算・管理サービス

複雑な計算が必要な決算賞与をはじめ、通常の賞与や給与計算も自動でできる給与計算・管理サービスを紹介する。

ジョブカン給与計算
「給与計算の業務コストを圧倒的に削減」することを目指すジョブカン給与計算は、自動で正確な給与・賞与計算ができるシステム。税率や保険料率は常に最新バージョンに自動でアップデートしてくれるため、設定変更の必要もない。もちろん社会保険料、雇用保険料、所得税の計算も自動で行ってくれる。
https://payroll.jobcan.ne.jp/

マネーフォワード クラウド給与
給与・賞与にかかる保険料や所得税などの自動計算はもちろんのこと、増税や料率変更なども無料でアップデートするマネーフォワード クラウド給与。ペーパーレスやリモートワークにも対応しており、いつでもどこでも給与明細や源泉徴収票が受け取れるのも魅力。マネーフォワードの他シリーズと連携することで、バックオフィス業務の更なる効率化を推進することも可能だ。
https://biz.moneyforward.com/payroll/

給与奉行クラウド
給与計算ソフトとして抜群の知名度を誇る給与奉行のクラウド版。他システムと同じく、控除項目の自動計算はもちろん可能で、企業独自の計算ルールなども再現できる。社外の専門家と一緒に使えるライセンスが標準提供されており、給与データを共有することができるのが大きな特徴だ。
https://www.obc.co.jp/list/hr_kyuyo

まとめ

決算賞与は企業にとっても従業員にとってもプラスとなる面がある一方、キャッシュフローの悪化や給与業務担当者の業務が増大するというマイナス点もある。キャッシュフローに関しては税金面と手元資金のバランスを見ながら支給の可否を決めるようにしたい。

また、支給が決定した場合、決算賞与は通年業務外のため、給与担当者の業務を圧迫しかねない。給与・賞与の自動計算システムを導入することで通常業務の負担が軽減できるほか、決算賞与をミスなく支給できるだろう。ぜひ導入を検討してほしい。