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標準報酬月額とは?対象となる報酬の種類や決定時期、計算方法を解説!

2023.02.28
オフィスのミカタ編集部

標準報酬月額とは、毎月の給与から控除する健康保険・厚生年金保険料を含む社会保険料の算出基準となるものだ。標準報酬月額は、毎年1度の定時決定や、基準となる賃金に大幅に変動があった場合に行われる随時改定の際などに決定する必要がある。しかし、仕組みが複雑であるため、詳しく知りたい担当者もいるのではないだろうか。本記事では標準報酬月額の概要や、社会保険料の計算方法などを解説するので、参考にしてほしい。

目次

●標準報酬月額とは
●標準報酬月額の決定時期
●標準報酬月額を用いた社会保険料の算出方法
●標準報酬月額に関する注意点
●まとめ

標準報酬月額とは

まずは、標準報酬月額の概要をみていこう。

標準報酬月額は社会保険料等の算出基準となるもの
標準報酬月額とは、従業員が得た給与などの一月分の報酬を、一定の範囲ごとに区分したものだ。一つの区分は「等級」と呼び、健康保険は50等級、厚生年金保健は32等級に分けられている。それぞれの等級に対して標準報酬月額が割り当てられており、その標準報酬月額を基に、毎月の給与から控除する健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の金額を計算できる仕組みとなっている。標準報酬月額は、社会保険料の計算をしやすくするための仕組みと考えるとよいだろう。

標準報酬月額を基に算出する社会保険の種類
社会保険とは、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の5種類を指す。ただし、この5種類のうち「雇用保険」「労災保険」は「労働保険」として括られており、標準報酬月額を用いた保険料算出は行わない。標準報酬月額を基に算出が必要な社会保険料は下記の3つだ。

・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料

また、上記の3種類の社会保険料は、会社と従業員が折半して負担することとなっている。

標準報酬月額の対象となる報酬
標準報酬月額の対象となる報酬は、基本給などの賃金や手当、賞与などだ。名称を問わず、労働の対価として支給する全てのものが含まれると覚えよう。金銭での支給に限らず、通勤定期、食事、社宅など現物支給のものも報酬に含まれることを覚えておきたい。ただし、臨時に支払う慶弔金などの一時金や、年3回以下の賞与は報酬に含まれない。下記で報酬になるもの・ならないものの例をみていこう。

<標準報酬月額に含まれる報酬>
・基本給
・時間外手当
・通勤手当
・扶養手当
・住宅手当
・役職手当
・年4回以上の賞与
・現物支給の食事、定期券、社宅 など

所得税法上では、通勤手当は月15万円まで非課税扱いとなるが、社会保険料算出においては通勤手当も報酬に含まれるため特に注意が必要だ。また、年4回以上支給される賞与についても、標準報酬月額の対象に含まれることを覚えておこう。

<標準報酬月額に含まれない報酬>
・見舞金
・解雇予告手当
・退職手当
・交際費
・慶弔費
・傷病手当金
・労災保険の休業補償給付
・年3回以下の賞与 など

詳しくは、日本年金機構によるガイドブックを参照してほしい。
(参考:日本年金機構『算定基礎届の記入・提出ガイドブック』

標準報酬月額の決定時期

標準報酬月額は、一度決定した後も見直しが必要だ。ここでは、標準報酬月額の決定が必要となる時期について具体的にみていこう。

資格取得時(入社時)
新たに従業員が入社した場合、入社月から社会保険への加入が必要となる(資格取得)。この際の決定時期は、4月入社の従業員であれば4月に、経験者採用などで年の途中に入社した従業員であれば、その入社月に決定する。

資格取得時の標準報酬月額の決定では、入社後の見込み報酬額を算出し、その額に対応する標準報酬月額を決める。残業代など見込みが難しいものに関しては、同じ部門の従業員の残業代などを参考にするのがよいだろう。見込み報酬額が入社後に実際に受け取った報酬額よりも大幅に下回ってしまった場合、資格取得時に遡って、算定し直さなければならない。この場合、遡って保険料を追加徴収する必要があり、徴収金額が大きくなってしまうこともあるため、できるだけ実態に近い報酬を見込んでおくことが望ましい。

定時決定(7月1日)
定時決定は、昇給・手当等の増減を標準報酬月額に反映するために行うものだ。定時決定は、毎年7月1日現在の全ての被保険者が対象となる。

標準報酬月額の決定には、まずその年の4・5・6月の3ヵ月の報酬の平均額を算出する。個々の従業員(被保険者)の平均額を基に、標準報酬月額を決定し、その年の9月1日より新たに決定した標準報酬月額によって保険料を計算する。定時決定を行ったら、会社が加入している健康保険組合や管轄の年金事務所に「被保険者報酬月額算定基礎届」の提出が必要だ。定時改定を行ったら必ず提出しよう。

随時改定(賃金に大幅な変動生じた場合)
報酬に大幅な変動が生じた際にも標準報酬月額を決定しなければならない。これを随時改定という。「報酬の大幅な増減」は、連続した3ヵ月間の月平均報酬額が判断基準になる。この平均報酬額を標準報酬等級に照らし合わせ、従前の標準報酬月額と2等級以上の変動があった場合に改定が必要だ。これにより、昇給や降給などで大幅な報酬の増減が生じた場合に標準報酬に反映できる仕組みとなっている。

なお、連続する3ヵ月とは、以下の条件を満たす月である。

・報酬支払基礎日数が17日以上ある月
・短時間労働者(注)で被保険者の場合は11日以上ある月

また、随時改定を行った場合には、「月額変更届」の提出が必要だ。随時改定の条件が揃った時点で、速やかに月額変更届を提出しよう。また、随時改定し決定した標準報酬月額の適用は、随時改定を行った月の翌月となる。定時決定での標準報酬月額の適用時期と異なるため注意しよう。

(注)短時間労働者:1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合。
(参考:日本年金機構『令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大』

育児休業終了時改定(育児休業終了時)
育児休業が終了した場合にも、随時改定を行う。育児休業が終了した際には、標準報酬月額が従前のものより2等級以上の変動が無い場合でも、随時改定を行う必要があるため注意したい。育児休業終了時の改定では、休業が終了した日の翌日が属する月から3ヵ月間の平均報酬額を算出し、標準報酬月額を決定する。また、育児休業終了時に決定した新たな標準報酬月額が適用となるのは、休業終了日の翌日が属する月の4ヵ月後で、それまでは産前産後休業に入る前の標準報酬月額を基に保険料を計算する(産前産後休業中は社会保険料は免除)。

標準報酬月額を用いた社会保険料の算出方法

ここでは、標準報酬月額を用いた、社会保険料の算出方法を紹介する。

健康保険料・介護保険料の算出方法
健康保険料および介護保険料は下記のように、標準報酬月額に健康保険料率・介護保険料率をかけて計算する。

健康保険料・介護保険料=標準報酬月額×健康保険料率(または介護保険料率)

なお、健康保険料率および介護保険料率は、使用する健康保険によって異なる。また、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、都道府県によっても保険料率が異なる。例えば、2023年3月分(4月納付分)からの協会けんぽ・東京都の保険料率は、10.00%となっている(介護保険への加入が必要な40歳以上の被保険者は、11.82%)。健康保険料・介護保険料は、会社と被保険者が折半して1/2ずつ負担するため、具体的には、以下のように保険料を求める。

<40歳未満の被保険者(介護保険への加入が不要)>
会社・被保険者が負担すべき健康保険料
=標準報酬月額 × 10.00% × 1/2


<40歳以上の被保険者(介護保険への加入が必要)>
会社・被保険者が負担すべき健康保険料(介護保険料を含む)
=標準報酬月額 × 11.82%× 1/2


※保険料率はいずれも協会けんぽ・東京都(2023年)の場合

厚生年金保険料の算出方法
厚生年金保険料は、標準報酬月額に厚生年金保険料率をかけて計算する。厚生年金保険料も、健康保険料・介護保険料と同様に、会社と被保険者が折半して1/2ずつ負担する。健康保険・介護保険とは異なり、厚生年金保険料の保険料率は、全国一律に適用されることとなっている。また、厚生年金保険料率は年金制度改正により、2004年から段階的に引き上げられてきたが、2017年9月を最後に引き上げが終了し、現在は18.3%で固定されている。厚生年金保険料の算出方法は下記の通りだ。

会社・被保険者が負担すべき厚生年金保険料=標準報酬月額 × 18.3% × 1/2

標準報酬月額に関する注意点

最後に、標準報酬月額の決定に際し、知っておきたい注意点を解説する。

保険料額表は更新される
健康保険・介護保険の保険料額表は、概ね毎年3月に更新される。厚生年金保険料率は2017年9月以降固定されているが、健康保険料率については固定されていない。そのため、標準報酬月額や社会保険料の計算を行う際には、必ず最新の保険料額表を参照する必要があるため注意しよう。
(参考:全国健康保険協会『令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)』

傷病手当・出産手当金・年金支給額の基準となる
決定した標準報酬月額は、従業員の傷病手当金や出産手当金の算出の基準となる。傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やケガのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給されるものだ。また、出産手当金は、出産のために会社を休んだ被保険者が、会社から十分な報酬を受けられないときに支給されるもので、どちらも従業員の生活保障のための大切な手当だ。この傷病手当および出産手当金の支給額は、手当支給開始日以前の12ヵ月の標準報酬月額の平均額に基づき算出される。万一、決定した標準報酬月額に誤りがあると、こうした手当にも影響が出てしまうため、標準報酬月額の決定は慎重に行う必要がある。

まとめ

標準報酬月額とは、従業員の健康保険や厚生年金保険料を算出する際の基準となる数値だ。また、将来の年金支給額や、万一の時の傷病手当金・出産手当金など、従業員の生活に直結する社会保障の算出基準ともなる。そのため、対象となる報酬などをしっかりと確認した上で、正しく標準報酬月額を決定することが必要だ。保険料率の見直しなどで保険料額表も更新されるため、最新の情報を基に決定できるよう準備をしておこう。