【2024年版】経費精算の領収書。正しい記載項目や不要な場合、領収書の代用になるものは?
経費精算を行う際、支払いの証明となるのが領収書だ。膨大な量の領収書や従業員による経費申請ミスなどで、処理に悩む経理担当もいるだろう。そこで経費精算の領収書について、正しい記載項目や必要・不要な場合、領収書の代用になるものについて解説する。
目次
●経費精算には領収書が必ず必要?
●経費精算書で使う正しい領収書の要素
●経費精算に必要な領収書の保存義務
●経費精算業務の効率化や法改正対応には、電子化がオススメ
●まとめ
経費精算には領収書が必ず必要?
領収書は、支払いの証拠として経費精算で必要になる書類だ。ここでは経費精算とは何か、領収書が必要な理由、領収書の代用となるものを説明する。
そもそも経費精算とは
経費精算とは、従業員が業務のために立替えて支払った経費について、精算して払い戻すことをいう。例えば、人材育成のために参加した研修の費用、書類郵送のために購入した切手などの通信費、出張のために支払った交通費などが経費にあたる。
なぜ領収書が必要なのか
経費精算の際は、原則として領収書(またはレシート)が必要である。領収書には、日付・金額・購入した商品の明細・発行者が記載されており、支払いがあったことを客観的に証明する書類となるからだ。従業員に領収書の提出を義務付けることで、実際の支払いよりも多い金額を請求をする不正を未然に防ぐことができる。
領収書・領収証・レシートの違い。領収書の代用になるものは?
「領収書」とよく似ているものに、「領収証」「レシート」がある。「領収書」と「領収証」については、民法と国税庁で解釈が若干異なっているが、実務上は「領収証」も支払いの事実を証明する書類として使用できる。
レシートも、領収書と同様に支払いを証明する書類であり、領収書の代用として利用できる。ただし次の項目が記載されていることが条件だ。
・日付
・金額
・購入した商品やサービスの明細
・発行者
ただし、近年のレジの多くは感熱紙のため、長期間経過すると文字が薄くなり読めなくなる場合がある。また、レジが古くレシートに金額と日付しか書かれていないケースも想定される。このような理由を踏まえると、手書きの領収書を発行してもらうのが無難だ。レシートしかない場合は、印字面を内側に折って保存するなど、保管中に文字が消えないための工夫が必要になる。
経費精算書で使う正しい領収書の要素
経費精算で使う領収書は、消費税法第30条9項1号により、記載すべき事項が定められている。具体的にどのような要素が必要なのかをみていこう。
領収書に必要な要素
領収書に必要な要素は次の通りである。領収書を受け取る際は、これらが記載されているか確認してほしい。
<日付>
発行された「日付」が必要だ。この日付は、金銭のやりとりが実際に行われた年月日である。和暦・西暦のどちらでも問題ないが、省略した表記(例:令和=R、2023年=23年)は不可となっている。
<宛名>
支払者の企業名が入る。宛名は略称ではなく正式名称で、「まえ株」なのか「あと株」なのかという点にも注意してほしい。領収書は重要書類であるため、「(株)」のような略称は原則として利用せず、正式名称を記載してもらおう。なお、消費税法において、小売業や飲食店では領収書の宛名は略称可とされているため、「上様」と記載することも認められてはいる。
<金額>
実際に支払った「税込み金額」が記載される。視認性のよさと改ざん防止の観点から、金額は3桁ごとに区切られているか、数字の頭は「金」もしくは「¥」が入っているか、末尾には「-」「也」が入るのが一般的だ。
<但し書き>
購入した商品やサービスの内容が記載される。ここは改ざん防止の目的で、商品やサービス名の後ろに「として」という文言が入る。「お品代として」という表記は曖昧なため、税務調査の際に経費と認めてもらえないケースがある。「飲食代として」「事務用品代として」など、誰でもわかるような名称で簡潔に記載されているか確認してほしい。
<発行者の住所・氏名>
領収書を発行した企業名(店舗名)・住所・連絡先が、取引の関係を明らかにするために記載される。慣例で、企業名にかぶせて印鑑が押されていることがあるが、印鑑がなくても領収書としては有効だ。
<収入印紙>
支払い金額が5万円以上の場合は、領収書に収入印紙の貼付が必要だ。収入印紙には割印(消印)が必要で、先述の発行者の証明としての押印とは異なるため、混同しないよう注意してほしい。5万円以上の領収書を受け取る際は、収入印紙が貼られているか、割印が押されているか確認しよう。万が一収入印紙の貼り忘れがある場合も、領収書を受け取った側には問題はなく、領収書としての有効性は保たれる。クレジットカードでの支払いは信用取引のため、「領収書」と記載されていても印紙税法の領収書にあたらないため、収入印紙は不要だ。
(関連記事:『いまさら聞けない領収書の基礎知識!役割から発行の際のポイントまで紹介』)
必要な要素がない領収書は無効?
領収書に必要な要素は、あくまでも消費税法上のことであり、この項目がなくても領収書としての効力は保たれる。宛名が「上様」や宛名なし、但し書きが「お品代」となっている領収書でも、業務上の支出だと証明できる補足資料があれば、経費として精算可能だ。
例えば、研修の参加費用であれば参加申込書、オフィス用品の購入であれば購入決裁書などが、補足資料に該当する。ただ、「上様」や宛名なしの領収書は、法律上は問題なくても、社内ルールで禁止している企業もある。自社ではどうするか、ルールを決めて周知徹底することが重要だ。
領収書の宛名や但し書きなど、内容を訂正できるのは領収書の発行者(店舗)のみだ。受け取った従業員が自ら書き換えることは、税務調査の際に不正行為とみなされる。従って領収書の修正が必要な場合は、商品を購入した店舗で領収書の再発行を依頼することになる。このとき、領収書の二重発行を避ける目的で修正前の領収書は回収されるので、必ず店舗に持参しよう。
領収書が発行されない場合の対応
領収書が発行されない場合でも、経費精算が可能なケースがある。具体的には、以下のような場合が挙げられる。
・会社の代表として出席した結婚式のご祝儀やお葬式の香典
・近距離の電車やバスなどの交通機関
・クレジットカードの利用
領収書が発行されない性質の支払いは、社内で「出金伝票」や「交通費精算書」」を作成して対応する。クレジットカードで支払いを行った場合は、カードの利用控(クレジット売上票)が領収書の代わりとなるので、必ず受け取ろう。
(関連記事:『法人カードで経費精算を行うメリットと、覚えておきたいポイント』)
経費精算に必要な領収書の保存義務。保存期間や条件は?
領収書は、法人税法や消費税法によって保存が義務付けられている。ここでは保存の期間と、保存する際の注意点を説明する。
領収書の保存期間
法人の領収書は、法人税法で「帳簿書類」に分類されており、他の帳簿書類と同様に7年間の保存が義務付けられている。この7年間とは、領収書を受け取った日から7年間ではなく、領収書を受け取った事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間なので、担当者は誤って廃棄しないよう注意してほしい。決算が赤字となり「欠損金の繰越控除」を受ける場合は、欠損金の繰越控除の期間が10年であることから、領収書も10年間の保存が必要だ。
(参考:国税庁『帳簿書類等の保存期間』)
コピーした領収書は認められない
領収書は原本を保存するのが原則で、コピーは認められない。コピーの利用を許可してしまうと、領収書の改ざんや二重請求などの不正につながりやすいためだ。コピーした領収書は受理しないと社内で徹底しておくと、トラブル発生を予防できる。例外として、感熱紙のレシートは文字が薄くなって読めなくなる場合があるため、受け取った経理担当者がレシートのコピーをとり、原本とセットで管理するとよいだろう。
経費精算業務の効率化や法改正対応には、電子化がオススメ
電子帳簿保存法の改正(2022年1月1日施行)により、国税関係帳簿書類を電子データ化する要件が緩和された。経費精算に関わる事項についてどのようなものがあるのか、見ていこう。
領収書の電子データでの保存が可能に
紙での保存が義務づけられていた国税関連帳簿書類について、要件が緩和されて以前よりも電子データ化しやすくなった。領収書も取引を証明する書類であることから、スキャナ保存の要件を満たせば、電子データでの保存が可能だ。
電子データとして保存する要件が緩和
税務署長への事前承認の廃止、タイムスタンプ要件の緩和、適正事務処理要件の廃止など、電子データ化して保存する要件が緩和された。領収書・レシートに関しては、改正前は、領収書のスキャン読み取り後でも、原本と電子データが一致しているかの確認のために、領収書原本の保存義務があった。現在は、領収書の電子データは7年間保存しなければならないが、領収書原本(紙の領収書)は保存義務がなくなり、スキャンした後に処分することができる。
経費精算の領収書を電子化するメリット
領収書の電子化は、企業にとってはメリットが大きい。主なメリットは次のとおりだ。
保管スペースの削減
紙の領収書は、保存するためのスペースが必要だった。領収書を電子化することによって、領収書のファイリング作業はなくなり、ファイルを置くキャビネットも必要もなくなる。電子化によって、膨大な量の領収書を長期間、コンパクトに管理できるようになる。
管理・検索が容易になる
領収書を電子データで管理できるようになるため、特定の領収書について確認が必要な場合でも、発行日や発行者などで検索することができるようになる。劣化して内容が読めなくなる心配はなく、バックアップを取っておくことで誤廃棄や紛失のリスクもなくなる。
コストの削減
紙の領収書では、保存するためのファイルやキャビネットなどの費用と、ファイリングする手間もかかっていた。領収書の電子化によって、保存のためのコストを削減できる。電子化した領収書はメール添付で送信できるため、紙の領収書のような郵送代もかからない。経費精算を行う担当者は、領収書の管理に費やしていた時間をコア業務に充てられるようになり、生産性向上も期待できる。
(関連記事:『電子帳簿保存法とは?改正で保存できる書類と手続き方法をわかりやすく解説』)
まとめ
経費精算業務を円滑に進めるには、基本的に領収書が必要である。どのような領収書が認められるかについては、ルールをしっかり定めて、社内で周知徹底することが重要だ。電子帳簿保存法に基づき、一定の要件を満たせば領収書の電子データ化が可能になる。担当者は電子化に必要な要件を確認して、電子データ化した領収書を保存できる体制を整備してはいかがだろうか。