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春闘交渉が本格化!中小企業の価格転嫁・取引適正化を目指し内閣側が関係省庁に指示

2024.02.08
オフィスのミカタ編集部

春闘交渉の本格化に先立ち、2024年1月19日に森屋宏内閣官房副長官の下で「中小企業の活力向上に関するワーキンググループ」が開催された。中小企業庁及び各産業界を所管する関係省庁が価格転嫁・取引適正化対策について議論を行う場となった。

春闘に向けたこれまでの国の取り組み

春闘とは、毎年各企業の労働組合が春に行う、労働条件の改善を目的とした労働運動だ。賃上げの要求が中心となる春闘では、2月頃に労働組合が企業側に要求を出し、3月頃に企業からの回答が提出される。

「中小企業の活力向上に関するワーキンググループ」(以下本会)は、取引条件の改善や生産性向上、人手不足、最低賃金引上げへの対応など、中小企業・小規模事業者が抱える課題の実態を把握し、対応策を検討する関係省庁連絡会議だ。

本会ではこれまで、産業ごとの業慣行を踏まえた取引適正化を進めるため、価格転嫁の推進などを検討してきた。2021年1月の初開催以降、今回で第6回目となる。

価格転嫁・取引適正化対策に関する今後の取組方針

森屋副長官からは、各省庁幹部に対し以下3点の対策を進めるよう指示があった。

・価格交渉・転嫁対策
・業界ごとの自主行動計画の改定・徹底
・約束手形・型取引

いずれも、目前に迫った春闘において、特に中小企業で昨年を上回る賃上げを実現するための対策だ。以下、順に内容を紹介したい。

価格交渉・転嫁対策

2023年9月の「価格交渉月間」を踏まえ、校章・添加の状況が芳しくない約20社のトップに対し、事業所間大臣名で指導や助言を行うことが方針として打ち出された。

価格交渉月間フォローアップ調査の結果においては、価格交渉は3月時点より概ね倍増しているが、課題として「コスト上昇したが、下請の方から『価格交渉は不要』と判断し、交渉しなかった」割合が17.3%存在している。またこの中には、「交渉資料を準備できない」、「価格改定の時期が数年に1度」等の理由で、機動的な価格交渉が出来ていない者もいる現状が明らかになった※1。

また、労務費の適切な転嫁に向けた交渉のあり方や、原材料費やエネルギーコストの適切なコスト増加分の全額転嫁を目指す取組について、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」を改正することとなった。

森屋内閣副長官は「多くの取引先を抱える大企業の取引方針が改善されることは、価格転嫁や賃上げの波を、サプライチェーン全体に行き届かせるためにも非常に効果的」と発言。指導・助言対象企業の事業所管省庁で、実際に取引方針が改善されるよう対応することを指示した。

出典元1:価格交渉促進⽉間(2023年9⽉)フォローアップ調査の結果について(確報版)令和6年1月12日 中小企業庁

業界ごとの自主行動計画の改定・徹底

「自主行動計画」とは事業者間およびサプライチェーン全体での取引適正化を図るため、各事業団体が策定しているものだ。この自主行動計画に、労務費の適切な転嫁に向けた交渉のあり方やコスト増加分の全額転嫁について検討し、内容として盛り込むよう働きかけることが決定された。

また、サプライチェーン全体の共存共栄を目的とする「パートナーシップ構築宣言」の浸透を自主行動計画に盛り込むよう働きかけることも重視された。

これに対し森屋副長官は「個社の取引方針の改善に加え、業界特有の取引上の課題を、業界全体で克服することも重要」とし、各事業所管省庁が先頭に立って自主行動計画の遵守・徹底がなされるよう促した。

約束手形・型取引

約束手形については、2026年の約束手形の利用廃止を見据え、手形の廃止に向けた取引慣行の見直しなど働きかけの強化に取り組むことになった。まずは「現金化までの期間が60日を超える手形等を指導対象とする検討」について、2024年を目途に結論を得るよう取り組む。

「型」の取引については、下請法などの厳正な執行を行い、適正化を徹底していく方針が明らかになった。

森屋官房副長官は「物価上昇を上回る賃上げの実現が、所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行する大きなチャンスをつかみとるための本丸である」と発言。春闘で昨年を上回る賃上げを、特に中小企業において実現することが重要とした上で、関係省庁で施策を着実に進めていくよう強調し、本会の締めとした。

参照:春闘交渉の本格化に向け、中小企業の価格転嫁・取引適正化について森屋内閣官房副長官が関係省庁に指示を行いました(経済産業省)