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「SaaS is Dead」論 vs ラクスのAI戦略 2030年までに協働型AIによる業務の「完全自動化」へ

2026.06.23
奥山晶子
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(左から)株式会社ラクス 取締役の本松慎一郎氏、楽楽クラウドバックオフィス事業統括本部支払管理ソリューション本部長の宮川拓也氏

2026年6月15日、経費精算システム「楽楽精算」などを提供する株式会社ラクスが、AI戦略およびサービスへのAI機能実装について説明する記者発表会を開催した。AIによる業務の「完全自動化」を目指す同社は、巷で語られる「SaaS is Dead」論に対して明確な対抗姿勢を示し、ラクスが理想とする業務支援システムの形を明確にした。

「SaaS is not Dead」──ラクスが示す継続価値

発表会ではまず、本松慎一郎取締役が登壇し、業務自動化を加速させるAI戦略を説明した。ラクスはこれまで、AIの台頭により企業の内製化が進み、従来のソフトウェアビジネスが衰退するという「SaaS is Dead」論に対し、「SaaS is not Dead」と反論してきた。

その理由として本松氏は、「AIの手を借りてシステムを内製化したとしても、保守や法改定対応、セキュリティ対応には専任人材が必要で、SaaS利用の方が経済的である」と主張。また、AIの結果確認・承認・修正には人間向けUIが必須であり、特に経費精算については複数の登場人物と細分された業務で構成されており、一つひとつについてAIでできるか精密に検討すべきであるとした。

顧客調査でも8割がAIに合わせた業務フローの再設計は難しく、既存フローを保ちながら自動化を望んでいることから、SaaSの価値は継続すると結論づけた。

人間×ルールベース×AI──ラクスが描く「協働型AI」

続いて本松氏は、ラクスが掲げるAI戦略「協働型AI」について説明した。AIが新たに自動化できる領域を担当し、ルールベースで確定的な処理を自動化。最後に人間がAIの作業結果をチェックし、最終判断を行う。このように「人間」「ルールベース」「AI」の3つが役割分担し業務を完遂させるのが、「協働型AI」だ。

ラクスはこの「協働型AI」を構築し、2030年までに「指示・確認・承認」以外の業務をシステムが担う状態を目指す。これが、同社の定義する「完全自動化」だ。すべてをAIに任せるのではなく、自動化領域を継続的に拡張しながら役割を分担する。

本松氏はさらに、ラクスの企業姿勢を次のように語った。

「我々のキャッチは『よりよく寄り添う』です。お客様の業務フロー全体を理解した上で、大きく壊さず、維持したいところは維持し、効率化したいところを効率化できるようなAI実装をしていくアプローチです。2万社以上のお客様データを持つ我々だからこそ、その個別性に対応し、定着まで支援することで、これまで通りよりよく寄り添っていきたいと考えています」

申請者も承認者もラクになる「楽楽精算」AIエージェント

次に登壇したのは、楽楽クラウドバックオフィス事業統括本部 支払管理ソリューション本部長の宮川拓也氏。「楽楽精算」に搭載されるAIエージェント機能について、詳細な説明とデモが行われた。

6月16日リリースの「伝票作成AIエージェント」では、領収書をアップロードすると、クレジットカード明細や事前申請などデータの紐付け、項目選択、備考欄の記入などをAIエージェントが自動で行い、正しい申請をアシストしてくれる。記入漏れなどによる差し戻しが減るため、申請者だけでなく承認者の負担が軽減される機能だ。

さらに今開発を進めているのが、社内ルールに適合した申請内容かを判定する「申請レビューAI」、領収書が正しく読み取れているかを照合する「証憑・伝票照合AI」、請求書が適格であるかをチェックする「適格請求書チェックAI」だ。これらの機能によって、申請者の承認がさらに楽になる。これらの機能は、順次、リリースを目指し開発中だ。

証憑取得の自動化で「完全自動化」に近づく

「楽楽電子保存」では、証憑を一挙に取得するサービスを開発中だ。メールの添付ファイル、ウェブサイトからのダウンロード、サービスサイトへのログインなど、複数の場所に散在する領収書や請求書を自動で集めるAIエージェントである。このサービスは、8月に「楽楽電子保存」でまずリリースされ、その後「楽楽精算」「楽楽請求」など各サービスに展開される予定だ。

このエージェントにより、領収書・請求書の取得業務が丸々自動化される。その結果、AIが自ら証憑を取得し、伝票作成AIが伝票を自動作成、承認アシストが内容をチェックして人間が最終確認するという流れができる。結果、変えられない業務フローの中でも、最小限の人間作業で業務が完結できるようになるという。

宮川氏は「人の業務を最小限にAIが自動化し、申請者・承認者は確認するだけの世界をしっかりと目指していきたいと思います」と語り、発表会を締めくくった。

バックオフィス部門では、人手不足への対応や生産性向上が継続的な課題となっている。ラクスが掲げる「協働型AI」が実務の現場でどこまで定着するのか。今後は技術そのものだけでなく、利用者が安心して業務を任せられる仕組みづくりも重要になりそうだ。