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企業の76%がAIを活用するもツールには不満の声 トムソン・ロイターが「2026 Future of Professionals Report」を発表

2026.07.10
奥山晶子
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2026年6月30日、トムソン・ロイターは「2026 Future of Professionals Report」を発表した。同レポートは法務、税務・監査、リスク分野の専門職1,800人を対象とした調査に基づき、AIに対する顧客の期待とサービス提供の実態との間に広がる「実行ギャップ」を明らかにしている。

同日に行われたオンライン記者発表会では、レポート内容を分析するとともに、トムソン・ロイターのAIテクノロジーである「CoCounsel」の機能強化が発表された。本稿では、記者発表会の内容をレポートする。

世界の専門家調査から見るAI活用の現状

発表会ではトムソン・ロイター株式会社(日本法人)代表取締役の三浦健人氏が登壇し、「The Future of Professionals 2026」について報告した。調査では主に、現在におけるAIと企業との関係性についてアンケートしており、以下のような報告が示された。

オンライン記者発表会で発言するトムソン・ロイター株式会社(日本法人)三浦健人代表取締役

①AIは広く使われているが、利用条件が整っていない
世界の専門家の74%が週に数回AIを使用している。しかし、その一方で41%は「専門職向けに設計されたAIツール」へのアクセスがない状態にある。

②AIによる価値向上はクライアントの必須条件になった
企業クライアントの78%が「AIによる品質向上は非常に重要、または不可欠」と回答している。しかし、それに対して「実際に提供できている」と答えたクライアントは、わずか6%にとどまる。さらに、32%はAI対応が遅い企業との関係見直しを予定している。

③組織の遅れを「シャドーAI」が埋めている
組織の対応が遅れるなか、34%の専門職が組織の承認を得ていないAIツールを業務で使用していると認めている。

④AI価値ギャップは離職リスクを高める
組織のAI活用に対する不満を感じる人の24%が、2年以内に離職を検討している。また、信託責任レベルのAIを使用している専門家の32%は、「AIを提供しない職務は断る」と回答している。

企業のAI活用における課題と組織運用管理の重要性

調査結果を受けて、三浦氏は「企業や専門職の方々にとって、AI活用で重要となっているのは、もはやAI導入率ではなく、組織運用管理がAI戦略と一体になっているかという点です」とコメント。さらに、組織とAIの関係性において注目したい点として、以下の3つを掲示した。

①シャドーAIの危険性
従業員が個人で契約したChatGPTやGeminiなど、組織が把握・管理していないAIの使用が発生している。これはコンプライアンス違反や情報漏洩のリスクという深刻な問題を引き起こすが、この原因は組織のAI戦略や組織が提供するAIツールに満足していないことにある。従業員はやむを得ず、シャドーAIに頼っているのが現状だ。

②タレントコスト(人材流出)
組織とAI活用のギャップが大きい場合、優秀な人材が流出するリスクがある。グローバル調査では、対象者の4人に1人が、組織のAIギャップを理由に2年以内の転職を検討しているという結果が出ている。

③クライアントインパクト
(弁護士などの)専門職によるサービスを利用する顧客企業の78%がAI活用によるサービス品質向上を重要だと考えていながら、実際にそのようなサービスを受けられている企業はわずか6%という大きなギャップが存在している。

「CoCounsel」のAI機能を強化

AIに関わる企業課題を受け、トムソン・ロイターは7月1日から、法律専門家のための生成AIリーガルアシスタント「CoCounsel」(※)に新機能を実装。「ONESOURCE Global Trade」と「Westlaw Japan」に新たなAI機能が追加される。

これらのソリューションは「Fiduciary-Grade AI™(フィデューシャリーグレードAI)」に基づいて構築されている。フィデューシャリーグレードとは「信頼性の高い専門家水準」を意味し、弁護士や公認会計士など誤りの許されない専門家に必要な基準を満たしているという定義だ。

トムソン・ロイターは、175年間にわたる企業運営と日本での150年以上の実績を通じて、情報の信頼を原則としてきた企業として、専門職向けのAIにこの基準を定義しているという。


※2:「CoCounsel」……トムソン・ロイター社が蓄積してきた世界規模のデータベースのみを参照して動く、ハルシネーション(事実と異なる回答)が少ない設計を特徴としたAIリーガルアシスタント。法律、税務、監査、会計、貿易管理、リスク管理などの領域で活用されている。

2026年下半年のサービス展開計画

記者発表会では、日本市場向けの具体的なロードマップも公表された。誤りが許されない法務、および激変する国際貿易の2大領域に向けて、新しいソリューションが順次投入されるという。

①WESTLAW JAPAN AI統合サービス(7月リリース予定)
日本で20年以上にわたり法令判例情報を提供してきた「Westlaw Japan」に、AI機能を直接統合した新サービスをリリースする。キーワード検索から対話型リサーチへの完全転換を行う自然言語検索、AIを活用した高度な検索機能、すべての出力に信頼できるコンテンツの引用を付記するアウトプットを提供する。

②グローバルトレードAI強化サービス(11月サービス開始予定)
日本にとって戦略的に重要な領域である貿易分野に、日本の製造業と商社からAI活用による貿易管理ツールの高度化要望が寄せられている。そこでHSコードの自動提案機能や、ロイター通信などのニュースソースを活用した貿易コンプライアンス情報のリサーチ機能を提供する。

三浦氏は「法務、税務、国際貿易の分野で国際的に活動する日本企業をサポートし、日本の国際競争力を高めていきたい」とした。

AIに関わる日本企業の現状と課題

最後に三浦氏は、グローバルな調査結果を踏まえた日本国内の現状と課題について整理した。企業におけるAIの利用率という観点では、世界水準と比べても遜色はない。今は、AIを正しく使いこなす人材育成など、AIを利用した組織のあり方に知恵を絞っている段階だ。また、AIと人間の役割分担基準についても、模索中の企業が多い印象だという。

三浦氏は「こうした状況を意識しながら製品開発と展開を行わなければならないと感じています」と発言。実際のユーザー企業を交えたパネルディスカッションで、こうした組織運用のリアルな課題や失敗談を議論する予定であることを示した。

現場の生の声に耳を傾けながら、専門職向けAIが日本のビジネスの現場にどのように根付いていくのか、同社の今後の展開に注目が集まる。