必要なのは現場視点。 導入したITシステム、社員の4人に1人が「現場で求めているものとは違う」と回答。
株式会社ドリーム・アーツ(本社:東京都渋谷区)は従業員規模が1,000人を超える企業の経営層と現場社員に対して、「大企業における働き方改革の意識調査」を実施した。
2019年4月の働き方改革関連法施行から半年、大企業において本質的には進んでいない働き方改革の実態と課題が見えてた。
■法案施行から半年、大企業役員のおよそ9割(87.0%)が働き方改革に取り組んでいると回答
従業員規模が1,000人を超える大企業の役員に対し、何らかの形で働き方改革に取り組んでいるか聞いたところ、全体のおよそ9割に及ぶ87.0%が「取り組んでいる」と回答した。
2019年4月1日に働き方改革関連法が施行されてから半年が経過した現在、すでにほとんどの大企業で働き方改革に対する具体的な取り組みが進んでいることがわかった。
■現場社員の約7割が働き方改革によって業務の生産性は向上していない。働き方改革の成果はまだ先に!?
大多数の大企業役員が働き方改革への取り組みを行っていると回答した一方、現場社員の約7割(68.8%)は業務の生産性向上を「実感していない」と回答する結果となった。
大企業において、働き方改革の取り組み自体は浸透しているものの、施策を行っていると考えている経営層に対して、現場はその成果に満足していないという現状が伺える。
さらに、生産性向上のために今後解決すべき課題について現場社員に聞いたところ「無駄な業務の削減(70.4%)」や「他社員や他部署とのノウハウ・情報共有(37.4%)」といった、大企業ならではの伝統や縦割り的な組織に関連する課題が浮き彫りになる結果だった。
■必要なのは現場視点。システムや機能が現場で求めているものとは違うと感じた経験がある
働き方改革の一環として生産性向上を目的としたITシステムを導入している(もしくは導入していたことがある)と回答した現場社員の半数近く(40.9%)が「満足していない」と回答する結果となった。
さらに、その理由を聞くと、1位の「機能が使いづらいと感じた」に次いで、4人にひとり以上(27.5%)が「求めている機能と違った」、「実際の現場業務と合わなかった」と回答。この結果から、サービスを導入する立場の経営層らと業務を行う立場である現場社員の間で、求めるサービス・機能の認識に一定の隔たりが存在することが見受けられる。
■役員は決裁後のITシステムの状況を把握していない!?
自社で生産性向上を目的とした全社員が活用する規模の新しいITシステムを導入している(もしくは導入していたことがある)と回答した大企業役員に対して、そのITシステムの検討から導入までにかかった時間を聞くと、全体の22.2%は「わからない」と回答。そのなかでも、従業員規模が10,000人を超える大企業の役員においては「わからない」という回答が全体の3割以上(36.4%)にのぼった。
さらに導入期間について、理想(想定)よりも時間がかかったと感じた経験があるか聞いたところ、全体では「わからない」の回答が35.2%だったのに対し、10,000人以上の大企業役員は半数を超える(54.5%)など、大規模な企業であるほど役員が、自社のITシステムの導入・活用についてほとんど把握できておらず、経営とIT投資に少なからず分離が起きている実態が伺える。
■業務を滞らせる“意思決定在庫”
日常の業務内で、“意思決定が決裁者の前で滞ってしまっている状態”、いわゆる“意思決定在庫”が溜まってしまっていると感じた経験について、現場社員の半数以上(55.6%)が、ワークフローの申請・承認作業において“意思決定在庫”による業務の停滞を感じたことがあると回答した。
またそのなかで、意思決定に時間がかかってしまう要因について聞くと、全体の半数近くが「意思決定に関わる人間が多い(48.2%)」、「決裁者の承認が遅い(44.9%)」と回答した。さらに、全体の約4人にひとり(22.8%)は、未だにワークフローを“紙”で行っているためと回答するなど、大企業では独自の業務や、意思決定に介在する人の多さといった理由から、ITシステムを活用した業務改革が現場で進んでいないという課題が伺える。
■大企業に勤める人の実に半数以上がベンチャー、スタートアップのスピード感を羨ましいと感じている
従業員1,000人を超える大企業の役員・現場社員に対して、ベンチャーやスタートアップ企業のスピード感について聞くと、全体の実に半数以上にものぼる51.5%がベンチャー、スタートアップのスピード感を羨ましいと感じていると回答した。
大企業であることによるさまざまな制約から働き方改革が真の意味で浸透しきっていないなか、ベンチャー、スタートアップのスピード感を羨ましいと感じている大企業の社員が多いことがわかった。
■法案施行から半年、進まない大企業の本質的な働き方改革
今回の意識調査の結果から、大企業の働き方改革における実態や課題が浮かび上がってきた。
今年の4月1日より働き方改革関連法が施行され約半年、世間では「働き方改革」という言葉が一般化しつつある。本調査では、従業員規模が1,000人を超える大企業の役員のうちおよそ9割(87.0%)がなにかしら働き方改革を目的とした施策に取り組んでいると回答した。しかし、実際に業務を行っている現場社員の約7割(68.8%)が働き方改革による生産性の向上を感じていないと回答するなど、その実態は施策が現場において成果として実を結んでいない場合が多いのが現状だ。
また大企業では、半数以上(62.1%)が働き方改革の一環として生産性向上を目的としたITシステムを導入した経験を持っており、そのなかでも全社で活用する規模のITシステムにおいては、およそ半数(53.7%)がSIerなどに依頼して年単位の期間と莫大なコストを費やし、開発・導入している。
一方で、大企業の現場社員の4人にひとり以上(27.5%)は、導入されているITシステムが現場で求めている機能とは違ったと感じた経験があるとも回答しており、サービスを導入する立場の経営層らと業務を行う立場である現場社員の間で、求めるサービス・機能の認識に一定の隔たりが存在することが明らかになった。
全社で活用するITシステムの導入においても、10,000人超えの大企業では役員の3割以上がその導入にかかった時間が“わからない”など、大規模な企業であるほど役員が決裁後、導入・活用についてほとんど把握できておらず、経営とIT投資に少なからず分離が起きているようだ。
■まとめ
現場の生産性向上にあたっては、経営層らが導入を決定し「使わされる」ITシステムではなく、最も業務を理解している、現場視点が重要となってくる。
現場による、現場のためのITシステムの開発・導入が求められている。