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地方企業と都市部人材の新たな共創「ふるさと副業」

2020.02.18

 株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区)は、2020年に注目されるであろう新しい働き方を「ふるさと副業」と称し、その働き方が訪れる背景と具体的な事例についてレポートした。

 本業だけでは得られない挑戦機会を望む働き手と、事業創造のヒントや知見の不足に悩む地方企業との新たなマッチングである「ふるさと副業」について紹介する。

■「ふるさと副業」とは?

■「ふるさと副業」とは?

 「地元やふるさとの活性に貢献したい!」
「自身の貢献をダイレクトに感じたい!」
「将来的なキャリア自立の備えをしたい!」
「培った経験やスキルで腕試しをしたい!」

 都心や大企業の本業だけでは得られない、長期スパンでの挑戦機会や志を共にする仲間を望む働き手が、働き方改革、副業解禁、テレワーク普及の後押しによって、地方の中小事業社の事業変革という仕事を、月数日もしくは週1回のペースで関わり合う。このような新しい働き方「ふるさと副業」が今始まろうとしているようだ。

■「働き方改革」に伴い、余剰時間を自己啓発と副業に使う意向

■「働き方改革」に伴い、余剰時間を自己啓発と副業に使う意向

 まず、働く個人の志向の変化について、2015年頃から政府の主導により段階的に推し進められてきた「働き方改革」の影響により、働き手の労働時間は年々減少する傾向にあり、総務省の労働力調査では、2013年から2018年の間に年間労働時間が約60時間減少している。

 そして、国土交通省の調べによる余暇の使い方の現状と動向からは、自己啓発や副業を今後充実させたい余暇として選択している傾向があることが分かる。

 働き方改革に伴い生まれた余剰時間の使い方の選択肢に、自己啓発や副業が入ってくるような変化が見て取れる。

■年収や規模よりも、貢献感・成長・やりがいを志向

■年収や規模よりも、貢献感・成長・やりがいを志向

 また、リクルートキャリアが行った調査から、入社選びの決め手となる上位3項目は、「経験やスキルが活かせる」「やりがいのある仕事に携われる」「新しいキャリアを身につけられる、成長が期待できる」であり、「年収があがる」「会社・団体の規模が大きく、知名度がある」の項目よりも上位にランクインした。

 働く個人が、年収や規模よりも、仕事を通じて得られる貢献感、成長感、やりがいを求めるというインサイトが見て取れる。

■地方企業と中小企業の人材ニーズの現状

■地方企業と中小企業の人材ニーズの現状

 リクルートワークス研究所が実施した中途採用実態調査の結果によると「採用時に人を集めにくかった」と回答した企業の割合は関東が32.7%であったのに対して、他エリアでは軒並み40%を超えており、依然として地方の企業での人材不足は解消されていないことがわかる。

■事業展開の方針は「成長・拡大」の企業で中核人材の不足が顕著

■事業展開の方針は「成長・拡大」の企業で中核人材の不足が顕著

 中小企業白書によると「事業展開の方針別にみた中核人材の過不足状況」において、特に事業展開の方針が「成長・拡大」の企業で中核人材の不足が顕著であることもわかる。

■柔軟な働き方の施策として、テレワーク、兼業・副業容認が加速

■柔軟な働き方の施策として、テレワーク、兼業・副業容認が加速

 働く個人には「貢献感・成長・やりがいを重視する」「働き方改革の影響で生まれた余剰時間が副業や自己啓発に向かう」という志向性を見て取ることができた。そして、企業には「地方企業では人材が逼迫」「中小企業では特に中核人材の枯渇」という課題感を見て取ることができた。ここからは、この両者が「ふるさと副業」というかたちでマッチングをする兆しについてレポートする。

 1つめは、テレワークと兼業・副業の容認。リクルートキャリアが人事担当者向けに行った「中途採用の成功を目的として新たに導入したい取組み」について調査を行ったところ、計16項目のうち「テレワークなど働き方の柔軟性向上」「兼業・副業容認など人事制度改革」が上位2項目にランクインした。

■地方での「月1~3回」程度の副業に、約半数の求職者が興味がありと回答

■地方での「月1~3回」程度の副業に、約半数の求職者が興味がありと回答

 次に、求職者の「地方での副業に対する意識変化」。

 日本人材機構が1,650人に行った「地方企業での副業意向調査」によると、約51%の人が1ヶ月に1~3日であれば地方の副業に「興味がある」「やや興味がある」と回答していることがわかった。

■地方の副業求人数は、ここ2年間で約13倍に伸長

■地方の副業求人数は、ここ2年間で約13倍に伸長

 企業においても、リクルートの副業マッチングサービス『BizGrowth』の累計掲載案件数は、2018年から2019年にかけて約13倍に伸長していることがわかった。

 地方の副業求人を働き手と結ぶサービスとして、『BizGrowth』以外にも『ふるさと兼業』『SkillShift』『YOSOMON!』『ふるさと副業会議(サンカク)』などが登場し始めている。

 企業の副業件数の伸びに呼応してか、リクルートキャリアの社会人インターンシップサービス『サンカク』の中で募集した「地方での副業イベント」の累計参加希望者数は、2018年9月時点での参加希望者数と比較して5.24倍に増加している。

■週末の地方での兼業・副業による「関係人口」の創出を政府が後押し

 2020年からスタートする第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略を見据えた、第21回まち・ひと・しごと創生会議の中で、安倍総理が以下のように述べており、政府からの後押しも見て取れる。

・第2期では、関係人口の創出・拡大を強力に推し進めていく。
・都市に住む皆さんの地方での副業・兼業を促す新たな制度をスタートする。

■事例1・「枡」を活用した新規事業の創出

■事例1・「枡」を活用した新規事業の創出

建材業界への新規参入に向けたブランディングプロジェクト

個人の想い
 都内でブランドコンサルティングに携わる中澤千咲氏は、将来的に出身地への恩返しに繋がる経験を探しいた。

企業の想い
 岐阜県大垣市にある有限会社大橋量器は、伝統産業である「枡」を活用した新規事業の創出において、新たなブランディング強化ができる知恵やノウハウ探していた。

共創のカタチ
 「ふるさと兼業(G-net)」を通じて出会った両者は、月に数回のWebミーティングを通じて、建設業界への新規参入に向けたブランディングプロジェクトを力強く推進した。

■事例2・伝統工芸品「博多織」の未来と世界への伝達

■事例2・伝統工芸品「博多織」の未来と世界への伝達

銀座店のオペレーション改善と在庫の管理体制強化プロジェクト

個人の想い
 都内で独立系スタートアップの事業開発に携わる大石教博氏は、地元福岡への恩返しに繋がる経験を探していた。

企業の想い
 福岡県福那珂川市にある株式会社岡野は、伝統産業である「博多織」ルーツとする、創業1897年のきもの制作所。その岡野は「博多織」の魅力を世界へ伝達するための知恵やノウハウ探していた。

共創のカタチ
 「ふるさと副業会議(サンカク)」を通じて出会った大石氏を含む3名の参画者は、月に数回のWebミーティングを通じて、都内店舗のオペレーション改善と在庫の管理体制強化プロジェクトを力強く推進した。

■事例3・外国人旅行者向け宿泊プラン作り

■事例3・外国人旅行者向け宿泊プラン作り

海外からのインバウンド顧客の宿泊体験を高めるための宿泊プラン制作プロジェクト

個人の想い
 米国のIT企業でプロジェクトマネージャーをしている中村美穂氏は、欧米でのグローバルなメンバーとのビジネス経験を活かした、海外に住みながら母国の恩返しにつながる経験を探していた。

企業の想い
 石川県能登半島の和倉温泉でホテル業を営むホテル海望は、拡大する外国人旅行者を魅了する宿泊プラン作りのための知恵やリアルな声を探していた。

共創のカタチ
 「ふるさと兼業(NPO法人G-net/株式会社禊川)」を通じて出会った両者は、Web会議やメールを通したミーティング、中村氏が帰国時の3日間の滞在で感じた強みや改善点をレポートするというカタチで共創した。

■まとめ

 地方の中小事業社の事業変革という仕事を、月数日もしくは週1回のペースで関わり合うことができる、新しい働き方でもある「ふるさと副業」。

 副業への興味を持つ働き手は自身の腕試しの機会に、また地元での人材獲得が困難などの課題がある地方企業などは、技術やマーケティングなどのスキルを取り込めるチャンスにも繋がっていきそうだ。

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