働き方改革から1年、現場の声は?「働き方改革開始1年後の実態」について調査を実施
株式会社ワークポート(本社:東京都品川区/代表:田村高広、以下「ワークポート」)は、全国の転職希望者224人を対象に、【働き方改革開始1年後の実態】についてアンケート調査を行った。
2019年4月の開始から1年。働き方改革の実態は
2019年4月から開始された働き方改革は。2020年4月からはその一環として大企業で同一労働同一賃金が規定されたり、中小企業でも時間外労働の上限が規制されたりと、さらに改革の内容が密度を増している。
厚生労働省は働き方改革が目指すものとして、「多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにする」としているが、実際に働き手は自身の働き方に変化があったのか、全国の転職希望者(20代~40代の男女)を対象に働き方改革開始1年後の実態について調査を行った。
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46.4%が働き方改革で「制度やルールに変更があった」
働き方改革開始後、勤務先の制度やルールに変更があったか聞いたところ、「あった」と答えた人が46.4%、「わからない」と回答した人が25.0%、「なかった」と回答した人が28.6%となった。
以前ワークポートが働き方改革開始1ヵ月後と半年後に行った実態調査の結果と比較すると、働き方改革開始後に勤務先の制度やルールに変更があったと回答した人は1ヵ月後では31.1%、半年後では40.5%、そして1年後には46.4%と推移している。徐々に働き方改革は浸透してきているようだ。
次に、「あった」と回答した人に具体的な制度やルールの変更点を聞いたところ、「テレワークの導入」や「有給休暇の消化」、「残業時間の制限」と回答した人が目立ち、「雇用形態」や「評価制度」が変わったとの意見も多く見られた。
働き方改革1ヵ月後と半年後の調査では具体的な制度やルールの変更点として「有給休暇の消化」や「残業時間の制限」を挙げる人がほとんどだったが、今回の調査では人事評価や雇用形態の見直しなどが挙がり、より働きやすい環境を整えようとする企業ごとの動きが見えた。
働き方が改善した人も悪化した人も増加傾向ではあるが、「変わらない」人が半数以上
対象者に、働き方改革開始後自分の働き方は変わったか質問したところ、「改善された」と回答した人は15.6%、「変わらない」と回答した人が62.9%、「悪化した」と回答した人が21.4%となった。
ワークポートが行った働き方改革開始1ヵ月後と半年後の調査では「改善された」と回答した人が1ヵ月後調査では7.5%、半年後では10.2%、1年後では15.6%となり、1年で10%ほど改善した人の割合は上がっている。
一方で、「悪化した」と回答した人も働き方改革開始1ヵ月後調査では12.9%だったのが、半年後では16.7%、1年後には21.4%となっており、増加傾向にあるようだ。
「改善された」と回答した人に具体的にどのように改善されたのか聞いたところ、自分の時間を作ったり家族の予定を優先できるようになったりとプライベートの時間を確保できるようになったという意見が多く見られた。
「悪化した」とする人からは企業側が無理に働き方改革を進めたことで、強制的な残業時間削減や有給休暇の取得を迫られているとの回答も見られた。
一部では制度だけが一人歩きをして表面的な働き方改革が行われているようすが見られており、いまだ解消されていない企業もあるようだ。
「改善された」と回答した人の中にも改善された点がある一方で、それによる弊害もあると感じる声も散見されている。
「満足していない」人が半数
調査の対象者に現在の働き方改革への満足度を聞いたところ、「とても満足している」(2.2%)と「満足している」(8.5%)とする人を合わせると10.7%となった。
一方で、「満足していない」(18.3%)と「全く満足していない」(34.4%)とする人を合わせると52.7%と、半数が「満足していない」という結果になった。
「期待していない」人も半数。働き手に合わせた改革がカギ
対象者に今後の働き方改革への期待度を聞いたところ「とても期待している」(10.3%)、「期待している」(12.9%)とする人は合わせて23.2%、「期待していない」(18.8%)、「全く期待していない」(33.9%)とする人は合わせて52.7%となった。
働き方改革が開始されてから労働環境を向上させようとする企業の動きなども見られたが、今回の調査では満足している人がわずか10%程度という結果になった。
対象者に今後働き方に関して会社にどのような変化を求めるか聞いたところ、「個々人の意思を尊重した働き方を推奨してほしい」「生活基準に合わせた勤務時間と勤務場所を認めてほしい」といった、働き手一人ひとりにあった柔軟な働き方を許容してほしいとする意見が多く見られた。
また、「休日は増えたが収入が減ったので改善してほしい」「人員配置や仕事の質、量に着目したうえで改革を進めてほしい」といった、働き手目線の働き方改革に取り組んでほしいとする意見も多数挙げられた。
さらには、「会社として働き方を改善する仕組みをつくってほしい」「副業解禁をしたり、管理職登用時の年齢制限を撤廃したりしてほしい」といった、会社内の制度や仕組みを改善したり整えたりしてほしいとする声も散見され、働き方改革に対応しきれていない企業もまだまだ多いことがわかった。
新制度の認知度は43.8%。
対象者に、2020年4月から中小企業に「時間外労働の上限規制」、大企業に「同一労働同一賃金制」が施行されることを知っていたか聞いたところ、「よく知っていた」と回答した人は43.8%、「聞いたことはあるがよく知らなかった」と回答した人が37.1%、「まったく知らなかった」と回答した人が19.2%となった。
約20%は制度そのものを知らなかったという結果になり、新制度の認知度はあまり高いとは言えないようだ。
企業から正しい周知が行われることも重要だが、社員自身も自分を守る制度の情報を自ら取りに行くことも大切かもしれない。
新型コロナウイルス対策として、働き方改革が進む可能性も
今回の調査と、以前ワークポートが行った働き方改革開始1ヵ月後、半年後の調査を比較すると働き方改革の浸透度はだんだん高くなっていることがわかる。
しかし、その一方でまだまだ働き方が改善されていないようすも多数見られた。
働き手に合わせた改革は課題も多いが、優秀な人材が定着するためにも企業側は働きやすい職場環境を整備する必要があるだろう。
働き手側も自分に適した働き方や生産性を向上させる働き方を模索するとともに、働き方改革など労働問題に関する知識を深めていくことが重要になってくる。
今回の調査では、新型コロナウイルスの影響で一時的にテレワークが導入されるなど働き方が変化している場合もあり、今後テレワークを実施する企業は増加すると予想される。今後の働き方を大きく変化させるきっかけになるだろう。
現状では「満足できない」今後の改革に「期待できない」場合であっても、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための措置として実施できるのであれば、長期的に見て終息後の働き方改革へとつながるカギになることが期待される。
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