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Chatworkが2022年12月期第2四半期決算を公表 全社売上高1,101百万円で、中期経営計画目標を上回る成長率を達成

2022.08.25
オフィスのミカタ編集部

Chatwork株式会社は、2022年8月12日、最新となる「2022年12月期第2四半期決算」について公表した。2011年にリリースされた「Chatwork」は今年で12年目を迎え、現在日本国内のアクティブユーザー数が1位で、国内最大規模のビジネスチャットとなっている。ここでは同決算の概要について、ポイントを絞ってお伝えする。

決算概況

決算概況

第2四半期の全社売上高は、1,101百万円(前年同期比49.9%増)、Chatworkセグメントでは、1,034百万円(前年同期比53.7%増)で、中期経営計画の目標である40%を大幅に超えて伸長した。営業利益は、前四半期の1億3,700万円の赤字から、今期は1億1,000万円の赤字へと縮小している。

前四半期では、価格改定に伴う一時金やウェブカンファレンスの売上等の、いわゆるフローの売上が影響して、その前四半期と比較して減収となった。しかし当四半期はフローの売上影響がないため、増収トレンドは変わらず伸長していることが明確となった。

2021年度の売上は、Chatworkセグメントにおいて、2021-2024年、年平均成長率(CAGR)が47.9%と、高い成長率を達成した。登録ID数は、無料も有料も含めた登録ID数で、解約したユーザーを除外したものが534万ID(前年同期比18.0%増)で、このうち有料課金ID数は、59.1万ID(前年同期比21.5%増)、導入社数は36.5万社となっている。

年間経常収益(ARR)は、第2四半期末時点で40.7億円。売上維持率(NRR)は、解約率が非常に低くなっていることから、0.4%。1ユーザーあたり売上金額を表す指標、ARPUは516.2円(前年同期比10.8%増)で、1日あたりで利用されるユーザー数(DAU)は、現在102.9万人(前年同期比10.2%増)となっている。

コミュニケーションの活性化で「シゴトがはずむ」を実現する

コミュニケーションの活性化で「シゴトがはずむ」を実現する

同社では、サービスを通じて実現したい社会について「シゴトがはずむ」というブランドメッセージで表現しており、「コミュニケーションが活性化すると会話がはずむように、ビジネスの現場を活性化させていくことで、仕事をもっとワクワク、心がはずむものに変え」、「ユーザーの働き方を誰よりも深く理解し、いつでも、どんな場所でも、やりたいことに集中できる働き方の提供を通して、ビジネスを活性化させる存在」を目指す、という。

ビジネスチャットが本格的に普及するフェーズ

ビジネスチャットの国内普及率は24.6%となっており、同社としては成長余地のあるマーケットという認識だ。働き方改革やDX、コロナ禍でのテレワークとのハイブリットワークなど、新しい働き方が急速に普及するなかで、「ビジネスチャットは、いまがまさに本格的に普及していくフェーズ」、と代表取締役CEOの山本氏は語る。

社外との接続のしやすさで「紹介が紹介を呼ぶ」

社外との接続のしやすさで「紹介が紹介を呼ぶ」

同サービスの最大の特徴は、社外との接続のしやすさだという。競合サービスでは、外部ユーザーとの接続に、複雑な設定を要するなかで、同サービスではユーザー名を検索するだけで、社内外をシームレスに接続できる。ユーザー数が伸びている背景には、こうした接続のしやすさにより「紹介が紹介を呼ぶ複利構造」ができているためだと、山本氏は話す。

プラットフォームとして広角的なサービス提供を目指す

プラットフォームとして広角的なサービス提供を目指す

Chatworkは、業種職種を問わないプロダクトで、1ユーザー1日あたりの利用時間が大きい。そこで、同サービスを起点として、周辺領域のSaaSやサービスも展開。2017年の開始から、毎年売上を伸ばしており、2021年度の売上は172百万円(前年比39.9%増)となっている。同サービスの強みは、チャットというタッチポイントとして有している点にある。そのため、特に中小企業の利用者のDXや経営に対する課題に対し、効率的なコミュニケーション手段によって、広角的なアプローチやサービスの提供を目指す。中長期ビジョンでは、「中小企業No,1からビジネス版スーパーアプリへ」という構想を掲げており、2024年までに全社売上高100億円、シェア40%を確立し、中小企業No.1ビジネスチャットの実現を目標とする。その上で、2025年以降は、あらゆるビジネスの起点となる、ビジネス版スーパーアプリとして、さらなるプラットフォーム化を目指す。

Chatworkスーパーアプリファンドの投資戦略

Chatworkスーパーアプリファンドの投資戦略

こうしたプラットフォーム戦略強化のため、2021年度からコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の投資戦略である「Chatworkスーパーアプリファンド」を開始した。顧客属性の重なる企業への投資によって、従来の業務提携より深く資本提携を実現するためのファンドだ。すでに4社への投資を実行しており、資金提供に限らず、同サービスから送客を行い、送客フィーにより投資回収を目指す。

1社目のChatworkストレージテクノロジーズ社は、2021年7月に出資後、事業を譲り受け、新会社を設立し、連結子会社化した。事業内容はクラウドストレージで、社内のファイルサーバーをクラウド化する。

2社目のベタープレイス社は、2021年12月に出資した企業。福祉・医療業界向けに、退職金制度や確定給付年金、また企業型の確定拠出年金の導入設計支援とそのサポートを行っている。

3社目のネットオン社も、2021年末に出資した企業。採用支援SaaS「採用係長」を提供し、資本業務提携を行っている。

利用意向の向上を意識した新しいTV CMを再開

利用意向の向上を意識した新しいTV CMを再開

2021年に初めてTVCMを展開し、高い認知度を獲得した。その後、一旦はマーケティングに注力していたが、2022年7月から地方を中心に、新しいTVCMを展開している。今回のTVCMでは、Chatworkの登録やアクティブ化、有料化といった、利用意向を高める目的で作成した。

新しい働き方に適した全社コミュニケーションのあり方を確立

新しい働き方に適した全社コミュニケーションのあり方を確立

同社では、2022年3月に東京オフィスを「WeWork日比谷FORT TOWER」に移転し、オフィスや自宅、全国のWeWorkを使った新しい働き方「ハイブリットワークスタイル」を実践している。

またこれに加え、全社コミュニケーションのあり方もアップデート。オンラインの全社総会「Cha会」を半期に1回実施する他、毎月1回1時間枠で全社で実施する「Cha室」など、社内コミュニケーションを充実させている。さらに、社内ラジオ「Chadio」も展開する。

こうした取り組みは、新しいハイブリットワークのなかでの重要なアセット、ケイパビリティであると位置づけ、競争力の源泉としたい、と山本氏は話す。

中期経営計画の3つの戦略

中期経営計画の3つの戦略

中期経営計画では、主力のChatworkセグメントにおいて、2021〜2024年の4年間で、CAGR40%以上の売上成長率の実現を目標としている。また2024年には全社売上100億円、中小企業向けビジネスチャット市場での40%のシェア獲得により、中小企業向けビジネスチャット市場でのNo,1を目指す。

中長期経営計画のゴールに向けては、Chatworkセグメントの売上は、中期経営計画の1年目で前年比47.9%増と、目標の40%増を大きく上回る形で達成している。こうしたなかで、中期経営計画を達成するため、3つの戦略に取り組んでいる。

1つ目の「Product-Led Growth戦略」では、プロダクトの力でレバレッジをかけて成長の実現を目指す。同戦略を推進にあたって、専門チームを組成、プロダクト改善施策を実行するための基盤の整備が進められている。ここでの成果として、iPhoneやAndroidのアプリストアのレビューが星3程度だったものが、星4以上と大きく向上した。

2つ目の「Horizontal × Vertical戦略」では、業界を問わないSaaSでありながら、業界ごとの課題を解決していくバーティカルSaaSのようなコミュニケーションプロセスを用いて、より深く浸透を目指している。そこで、サインアップ時に業種や会社規模などのヒアリングを実施するほか、顧客データベースをお持ちの企業と提携し突合するなど、顧客情報の理解に努める。

3つ目の「DXソリューション戦略」では、さまざまなSaaSプロダクト、ファイナンスサービス、BPOサービスなどをクロスセルとして展開していく。

ビジネスチャットからプラットフォーム事業へ

ビジネスチャットからプラットフォーム事業へ

今後の見通しとして、取締役CFOの井上氏は、ビジネスチャットは引き続き堅調なため、その上に構築するかたちでプラットフォーム事業に注力する、とした上で、数字は非常に順調に積み上がってきているため、シェア拡大戦略に関しては問題ない、という見解を示した。

新型コロナウイルスによる感染拡大の影響も長期化するなか、ビジネスチャットへの需要は、今後も伸長することが予想される。2022年4月に実施されたビジネスチャットの利用実態調査 によると、会社員の4割がチャットツールを利用している一方、5割ほどはいずれのツールも認知していないことが明らかになっており、こうした認知していない層への利用拡大が、今後の課題といえる。ビジネスチャット以外へのサービス拡大など、今後も同社の動きに引き続き注目したい。